──ミリヤさんと家入さんが話してる絵も全然想像がつかないんですよね。
みんな思ってると思う。ミリヤさんもびっくりしてました、対談がスムーズだったことに(笑)。
──(笑)。先ほど、リモートで初めてお話をされたばかりだそうですが、もともとはどんなイメージを持ってましたか。
自己プロデュースに長けてる女性。そういうイメージが第一にありました。私、中高と女子校に通っていて、クラスメイトが恋に破れたときに、ミリヤさんの音楽をすがるように聞いている姿も見ていました。だから、自分がご一緒させていただく機会があるなんてサプライズでしかなかったんですけど、実際にお話してみると、インスタやミュージックビデオで見る加藤ミリヤという世界観を作り上げるためには地道な努力があるんだなって。いろんな人に支えてもらっている、ということもおっしゃってて。支えられてるスタッフがいて、何よりファンの人がいて成り立たれているというところがすごくリアルに伝わってきて、かっこいいなと思いました。でも、普通にお母さんだったり、女性だったりするっていうところも知ってすごく力になりました。お母さんでもあり、アーティストでもある。素敵だなって。
──ミリヤさんも女子校育ちですが、他にも似てるところはありましたか。
内省して曲を作る部分ですね。とことん自分と向き合ってる。誰かの心に届けるって、普段見せない弱さや涙をさらけ出す行為だとも思うんですね。ミリヤさんも10代デビューだから、「今、振り返るとちょっと恥ずかしかったりすることもある」って言ってたんですけど、恥ずかしい=ちゃんと誰かに対してがむしゃらにボールを投げられたってことだと思うんですね。そこはミリヤさんもお話されていて、通じるものがあるなと思いました。
──ちなみに家入さんは一度もギャルは通ってない?
通ってないですね(笑)。着てる服やメイクは違うけど、人って、目に見えてる部分だけじゃないんだなって。今日、改めて、心で繋がる動物なんだって思った。ミリヤさん、シンパシーを感じる部分がありましたね。
──オーケストラやクラシックなどには触れてきましたか。
私は自分のことを雑食だと思っていて。去年の12月にも名古屋で『MERRY ROCK PARADE 2023』という音楽フェスに出た翌日に、東京で『天皇杯・皇后杯 全日本バレーボール選手権大会ファイナルラウンド』の国歌独唱をさせていただいて。皇族の方が見守られる中で、「君が代」を歌ったんですね。私の人生って本当に面白いなって思って。ロックバンドと共演しながら、ビルボードクラシックスもできるっていうのは自分の好きな部分でもあるし、私らしいなって思いますね。
──昨年のクリスマスには『題名のない音楽会』がオンエアされてましたが、東京フィルの演奏で「君をのせて」(『天空の城ラピュタ』の主題歌)を歌ってました。
緊張しましたし、ちょっと非日常感がありましたね。オーケストラって、おもしろい矛盾がいっぱいあるんですよね。あれだけ音数があるのに音が軽くてすっと入ってきたりする。そういう音の力で全方向から背中を押してもらえて、風になれるっていうのは、すごく貴重な経験だなと思います。
──見に行ったことはありますか。
玉置浩二さんのビルボードクラシックスに行かせてもらったんですけど……もう圧巻でした。最後、フルオケなのにマイクなしで歌ってらっしゃって、歌の奥深さを感じたし、本当に感動でした。
──今回、楽しみにしてることはなにかありますか。
何一つ予想がつかないこと。本当は普段の日常から常にそうありたいと思っているので、そういう感覚を思い出せって呼び掛けてくれるようなイベントにお誘いいただけて本当に嬉しいですね。
──不安とかはないんですね。
いや、あります。でも、不安が結構好きなんです。不安をかき消すために、より音楽と仲良くなろうとする、というか。クリアしたいとか、もっと不安なく歌いたいと思うから練習するし。そういうのってすごく大事だと思うんですよ。しかも、今回は1日のみの公演。ライブってもう二度と再現ができないものだからこそ、1回にかけるっていうのは、より背筋が伸びるというか、楽しみですね。
──ちなみに選曲は?
してたんですけど、今日、加藤ミリヤさんと対談させていただいて、ちょっと組み替えようかなって思っています。ただ、初めて私のライブを観る方も多いと思うので、「君がくれた夏」「Silly」「ずっと、ふたりで」の3曲はお届けしようと思ってます。あと、女性アーティストの曲を1曲ずつカバーすることになってるんですけど、それも、この後、ちょっと再構築します。
──指揮者の齋藤友香理さんとはまだお会いしてないんですよね。
まだなんです。指揮者の方が女性っていうのもすごい嬉しくて。でも、変な言い方になりますけど、女性だからって取り上げられない世の中になるといいなと思ってて。このイベントも本当に素晴らしいし、この企画を立ち上げてくれたスタッフさんには本当に感謝しているんですけど、こういうイベントがなくなることが、世の中に当たり前に女性が受け入れられているっていう証拠だと思うんですね。
──確かにそうですね。
発足して最高なんですけど、こういうイベントがなくなる世の中を目指したいなって。でも、すごく大事なんですよ。最近、多様性って言われるようになって、やっと女性が社会に出やすくなってきたけど、言葉で言ってることが現実に降りるのって、どうしても時間がかかるし、そこをすっ飛ばすと、本当の意味で社会や時代に根付いていかないから。こういう地道な1本1本のイベントだったり、メディアで取り上げられることが、ちゃんと未来に繋がっていくと思うんですね。こういう行動をビルボードの方たちが起こしてくださっていることに、とても感謝してますし、同時にこういうイベントがなくなりますようにっていう気持ちが私にはあります。
──お客さんにはどんな思いで来てほしいですか。家入さんのファンの中にはもしかしたらクラシックのオーケストラのコンサートに初めて来るという方もいるかもしれません。
クラシックはどうしても敷居が高いって思われがちですけど、J-POPとコラボすることによって、あんまりクラシックを聞いたことがないんだよねっていう人への入口になるといいなと思ってます。あと、ミリヤさんがおっしゃってて素敵だなと思ったことがあって。「私のメロディや歌詞、帰り道にどの部分が残ってたのか。それがどうして残ったんだろうって自分とお話することで、より自分の未来を決定していけるんじゃないか」っておっしゃってたんですね。私と加藤ミリヤさんの歌を聞きに来るけど、自分の心の声を聞きに来る場所になったらいいなって思います。
──ありがとうございます。コンサートを楽しみにしていますが、2024年はどんな1年にしたいですか。
いや、もう、節操ない1年になりますよ!
──あははは。なんでもやるってこと?
私がやれることって、いただいたものを磨いていくことでしかないんですね。あれやりたい、これやりたいってのはあるけど、「本当に叶えたい夢って何ですか?」って言われると、人と出会っていくことで、そこで新しい刺激を受けて生まれる未来が、私の夢のような気がしてて。だから、今、自分が決めるよりも、出会いによって左右されることを楽しみたい。もしかしたら結婚したり子供を授かったりすることで、音楽との向き合い方が変わる日も来るかもしれないし、歌よりもっと夢中になるものに出会うかもしれない。それは誰にもわからないけど、いつそうなってもいいように、本当に毎秒毎分毎時間毎日、頑張っていたいんですね。新しい何かに出会ったときに後悔しないように、いただいたものを誠心誠意やっていきたい。そして、なんだかんだ言っても、傍らには絶対にどんな形でも音楽が私はあると思ってるので、楽しく天真爛漫に頑張っていけたらなって思いますね。