初の弾き語りワンマンツアー『ひとえまぶたに降る光』を完走したシンガソングライター・灯橙あか。10月10日(水)にリリースした1年ぶりの新曲「今夜、死にたいと思った。だから、歌いたいと願った。」も披露され、多くの観客を魅了した。さらに2024年1月13日(土)には、渋谷・duo MUSIC EXCHANGEにてバンドスタイルでのワンマンライブ『あのバス停で春を待つ』も開催決定。そこで、DI:GA ONLINEでは活動を本格化させた彼女の解像度を高めるべく、インタビューを実施。弾き語りワンマンツアーやduo公演について、そして灯橙自身についてたっぷり語ってもらった。
——まずは弾き語りワンマンツアーの完走、おめでとうございます。振り返ってみていかがでしたか?
灯橙あか灯橙あか(以下、灯橙):初めてのことだらけのツアーでした。弾き語りで2時間ライブをやるのも初めてでしたし、終演後に物販に立たせていただくのも初めてで。ツアーが決まった直後は「大丈夫かな……」と不安に思っていたのですが、やってみたらお客さんからすごく元気をいただけました。私が皆さんに元気をあげるというより、皆さんから元気をもらえたライブだったと思います。
──演奏中、お客さんの表情も見えていそうでしたね。
灯橙ステージと客席の距離が近かったので、かなり見えていました。演奏しながら、どんな風に聴いてくれているのかなって思ったり。あの方は染み入るように聴いてるな、こっちの方は横に揺れながら聴いてる、あそこの方はめっちゃ飲んでるな、って思いながら演奏していましたね(笑)。
──その中で披露された「今夜、死にたいと思った。だから、歌いたいと願った。」は1年ぶりにリリースした新曲です。MCでは「1年間曲をリリースしないことがメンタルにきた」とお話されていました。
灯橙しんどかったですね。今の事務所に入る前は、フリーランスという形でほぼ1人で活動していました。なので、自分で何でもやらなければいけないし、間を開けちゃいけないと思っていたんですね。MVも月1本出していましたし、その音や映像のプロデュースも全部自分でしてました。その感覚からすると1年間リリースしないということが、すごく開いているように感じてしまって。もちろん、たくさんの方に協力していただいて、規模が大きくなっているからこそ、ステージが上っているからこその期間だったと思うのですが、今までの活動スタイルと違いすぎて焦りもあったり不安も大きかったりで。なかなか慣れませんでした。
──その期間に抱えていた不安はどう消化されたのでしょうか。
灯橙それが、消化できていないんですよね(笑)。去年まではしんどいことがあった時に誰かに相談していたんですけど、それをやっているとこの先本当に1人になった時に耐えられないなって思うようになって。仲の良い友だちだってその人の生活がありますから。だから、今年は1人で頑張ってみる、1人で耐えてみるということをやる年にしたんです。電話もしない、誰にも話さない、ただ己と向き合う、ということを頑張っている真っ最中です。
──それはすごい……! 少しずつ自分一人でもできる解決策が見えてきたりも?
灯橙解決策はまだわからないのですが、単純に悩む時間が短くなってきました。「長く悩んでも行き着くところは結局一緒やから、悩んでも仕方ないよね」と思えるようになったというか。切り替えが早くなってきました。
——なるほど。この曲は「どんな時に消えたいと思うか」を考えて作ったとも仰っていましたが、制作経緯を改めて教えてください。
灯橙小説の主題歌だったので、まずは頂いたその小説を読み込みました。その上でノートに主要登場人物5人の絵を描いて、各人の感情を書き出して共通点を探していきました。それに加えて、その小説を自分が読んでどう感じたか、自分がどんな時に「死にたい」、「消えたい」と思うかを書き出して。それらすべてに共通する部分を抽出していく作業をしていきましたね。
──その「共通する部分」とは何だったのでしょうか。
灯橙ひと言で言い表すのが難しいのですが、「これさえあれば『死にたい』、『消えたい』という思いを乗り越えられるよね」というものが誰しもある、ということでしょうか。「これさえあれば」が人それぞれ違うだけで、みんな持っているよね、という。
──なるほど。それはいわゆる楽曲のテーマの部分かと思うのですが、作詞作曲はどう進めていったのでしょうか。
灯橙アップテンポの楽曲にしたいと思っていたので、アップテンポの曲をいろいろ勉強しながら制作を進めていきました。タイトルも印象的だと言っていただけるのですが、実はこれ、小説の仮タイトルだったんです。小説の方は最終的にタイトルが変更になったのですが、すごくパンチのあるタイトルだったので曲の方で使わせていただくことにしました。
──楽曲制作の前にすでにタイトルがあったのですね。たしかにパンチがあるタイトル名なので、引っ張られてしまうこともありそうです。
灯橙引っ張られそうだったので、すごく気をつけました(笑)。曲を聴く方もこの言葉に引っ張られるかもしれないので、「死にたい」という言葉にフォーカスしすぎないような言葉選びをしたり、全体の雰囲気に気を使ったり。
──具体的にはどんな作業をするのですか?
灯橙まずテンポと楽曲の雰囲気ですね。「死にたい」という言葉に引っ張られてしまうと重めのサウンドでゆったりめのバラードにしたくなってしまうのですが、サラッと聴けるようにアップテンポにしました。コードも明るめのものでまとめています。あとは歌詞。冒頭で1度タイトル名を言っていますが、その後は1回も「死にたい」というワードを出していなくて。段々前向きになっていく歌詞の流れにしています。
──普段の制作と流れが違っていそうですね。
灯橙そうですね、全然違いました。ただ、新しい発見もあって。私の楽曲、特に活動初期の頃の楽曲は、暗い曲は暗いままであまり光が差さないまま終わっていく事が多かったんです。でも今回意図的に光を差す方向に持っていったことで、それも悪くないと思えました。今後は、もうちょっと光が差す曲を作ってみようかな、と(笑)。