FIVE NEW OLDのHIROSHI(Vo.G)とWATARU(G.Key)が配信しているポッドキャスト番組“WASIRADIO”の第17回と18回に、FIVE NEW OLDをはじめさまざまなアーティストのライブ制作を手掛けている、株式会社ライブエグザムの永里道人志と、連載『とにかく観たやつ全部書く』や、インタビューやライブレポなどをDI:GA ONLINEに執筆中の音楽ライター、兵庫慎司が出演しました。
『コロナ禍のコンサート事情』というテーマで話をしたい。アーティストの立場=FIVE NEW OLD、ライブ制作者の立場=永里氏、オーディエンスの立場=兵庫、の3つの視点から掘り下げたい。という、HIROSHI&WATARUの趣旨に賛同して、DI:GA ONLINEが手を組んだ連動企画です。既にポッドキャストはアップされていて、後日、DI:GA ONLINEでインタビュー記事としても公開。
というわけで、そのポッドキャストでの対話を再構成した上で、4月29日(金)札幌 PENNY LANE 24からスタートしたFIVE NEW OLDのツアー『Departure Tour』についてのコメントも追加したテキスト版、前後編に分けてお届けします。ポッドキャスト版よりもかなり圧縮しましたが、その分、文字伝わりやすくなっていると思いますので、ぜひお読みいただければ幸いです。ではまず、前編をどうぞ。(兵庫慎司)
『コロナ禍のコンサート事情』というテーマで話をしたい。アーティストの立場=FIVE NEW OLD、ライブ制作者の立場=永里氏、オーディエンスの立場=兵庫、の3つの視点から掘り下げたい。という、HIROSHI&WATARUの趣旨に賛同して、DI:GA ONLINEが手を組んだ連動企画です。既にポッドキャストはアップされていて、後日、DI:GA ONLINEでインタビュー記事としても公開。
というわけで、そのポッドキャストでの対話を再構成した上で、4月29日(金)札幌 PENNY LANE 24からスタートしたFIVE NEW OLDのツアー『Departure Tour』についてのコメントも追加したテキスト版、前後編に分けてお届けします。ポッドキャスト版よりもかなり圧縮しましたが、その分、文字伝わりやすくなっていると思いますので、ぜひお読みいただければ幸いです。ではまず、前編をどうぞ。(兵庫慎司)
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■WASIRADIO x DI:GA ONLINE 連動企画
#17コロナ禍のライブ事情ってどうなの?って話(前編)w/兵庫慎司さん 永里道人志さん
コロナ禍におけるライフスタイルの変化
HIROSHIまず、2020年にコロナ禍が始まって、ライブができなくなって……僕は兵庫さんの、行かないことに慣れた人もいるんじゃないか、という記事を読んだんですけど。その記事は、ライブじゃなくて映画館の話でしたけど。
兵庫はい、ブログに書いたやつですね。コロナ禍になって、アーティストが無観客配信ライブを始めて、しばらく経って、定員の半数以下なら、お客さんを入れてライブをやってもいい、ってなったじゃないですか。
HIROSHIはい。
兵庫という時に、コロナ禍前は、その会場なら即完していたアーティストが、キャパの半分以下でライブを再開しても、ソールドアウトしない。というケースが、あちこちで起きるようになって。
HIROSHIそうですね。
兵庫これはどうやら、感染が怖いからまだ自粛している、家族や仕事の関係でライブに行くのをがまんしている、というだけじゃないな、ということが、わかってきたんですね。何本もライブに行くうちに。で、どうやらお客さんのライフスタイルが変わってきているところもあるらしい。自分もそうだ、音楽のライブは行っているけど、映画館に行く回数が激減している、と気がついて。要は、ずっと続けてきた、映画館に行くという生活習慣がブチッと途切れた時に、「行かなきゃ行かないで普通に生活できてるわ、俺」という。スポーツもそうですよね。プロ野球も、ようやくフルキャパ入れていいってことになったけど、コロナ禍前の動員には戻ってない。スタンドの埋まり具合を見ると。
HIROSHIああ、そうですよね。
兵庫プロレスもそうなんですよね。ただ、それはみんながエンタメに興味がなくなったから、とは限らなくて。たとえば、月額999円の「新日本プロレスワールド」っていうサイトがあるんですね。
HIROSHIああ、プロレスのサブスクがあるんですか?
兵庫はい、過去の試合まで観れる。その会員が世界規模で増えているから、新日本プロレスは、動員減による収益のダメージは、僕らが思うほど受けてないかもしれない。だから、足を運ぶという文化自体が大きく変わっているんじゃないか、だとしたら我々にとって危機的な状況だ、というのは、今でも続いていますね。
HIROSHI確かに、足を運ばなくてもいろんなものが消費できる、そういうふうに時代が変わったところもありますよね。
コロナでライブがなくなって、この仕事を続けるかどうか、一瞬考えた
永里特に地方とか、露骨にありますよね。ツアーで回っていると、「あれ、この地域、けっこうみんな来てくれていたのに」みたいな。
兵庫地方の方が、さらにそうなっているかもしれないですね。
HIROSHIライブ制作の永里さんからとしては、コロナ禍の始まりの頃は、どういうふうに感じていたんですか?
永里2020年にコロナが始まった瞬間は、もう本当に、すべての現場がなくなって。だから、この仕事を続けるかどうか、一瞬考えた。
HIROSHI・WATARUああ……。
永里ライブというもの自体が、不要不急論もあったりして、「本当に必要なのか?」っていうところまで突き詰めて考える瞬間も、なくはなかったんですけど。ただ、配信ライブが始まって、そのおもしろさも、また発見したというか。ただ、無観客だと、目の前のお客さんの反応がないでしょ。やっぱり寂しいですか?
WATARU僕は寂しいですね。人がたくさん集まることのエネルギーを受けて、自分たちもエネルギーをお客さんにぶつけて、一体化する瞬間が、僕はすごく好きなんですね。配信やとそれがないんで、最初はどうしたもんかと思って。
永里やっぱりライブの、あのリアルな空間に勝てるものはないな、というのはね。
HIROSHIやっぱり磁場が生まれますよね。熱量というか。しかもそれって、その日に来たお客さんが生み出すものなので。同じ熱狂は二度とないっていうか、その日にしか生まれないから。難しいところですよね。
永里だから、お客さんにそれを体感してほしいっていう気持ちがありながらも、ただやっぱり、配信で手軽に楽しめるっていうのも、今後なくなっていくことはないかな、っていう気がするので。あと、配信ライブの最初の頃は、ライブを作る側も──システムとして、初めて触るものじゃないですか? だからほんとに緊張しましたね。ネットが落ちないか、とか。
WATARUああ、ありましたよね、そのためにライブハウスのWi-Fiの使用を中止するとか。
永里今はだいぶ進化して、落ちなくなりましたけど。あと、普段は僕の立場だと、アーティストをステージに上げたら、そこで仕事終了、じゃないですけど──。
兵庫もう手出しできないし、しなくていい時間ですよね、本番は。
永里そう。でも配信って、そうじゃないので。カメラの抜けがこれでいいのか、とか、メンバーの後ろに何があった方がいいのか、とか、そういうところまで考えるようになったから。仕事の幅が広がりました。
HIROSHI僕らもそうか。演奏の熱量とかグルーヴ感ってさ、お客さんと作用して生まれていくところ、あるやん。
WATARUそうやね。
HIROSHIそれが配信の中で、自分的にこう感じた、みたいなのはある?
WATARU配信てさ、アーカイブあるやん。演奏をミスったところも、ちゃんと残るわけよね。配信ライブが始まったばかりの頃は、それが気になってしゃあなかったもんね。「これミスったらヤバいな」ってことで、考えてプレイしてしまう、考えてしまっているがゆえにミスが増える、みたいなことが、最初はよくあって。で、そういうことじゃない、という考え方に変わるんですよね。これはライブやから、エネルギーを込めて弾いていることの方が大事や、それでええんちゃう? って思えるようになった。
HIROSHIFIVE NEW OLDの中で、そういう結論になったんですよ。大事なのは、こっちがどれぐらい自家発電で熱を出せるかや、多少ミスったとしてもええやん、っていう。
WATARUうん、むしろそのポイントで湧いてほしい、「うわ、ミスった!」って(笑)。