裏方をやったからこそわかったこと
はい。空想委員会の活動休止のラスト・ワンマン・ツアーの時はもう会社員だったので。平日働いて、土日はツアーに行って。で、1年ちょっと働いたんですけど、2020年の4月11日にソロで生誕祭のライブをやるので──コロナで1年延びましたけど──そこに向けて集中しようと思って、会社をやめて。
あとは、会社にいた時、このまま裏方をやっているより、俺が表に出た方がおもしろくなるだろうな、みたいに思っちゃったので。
なりました。裏方で、表の人を支える気持ちが、やっとわかりました。休止前の頃、スタッフによく言われてたんですよ。「やりたいことを言ってほしい、それを実現するのが裏方なんだから」って。で、僕が裏方になった時、表の人に、もっと自由に暴れてほしかったんです。もっといろいろやってもいいのに、って思って、「あ、前は俺、こう思われてたんだな」っていうことに気づけました。
前の俺は、なんで、まじめに、平均80点を狙うようなことをしていたんだろう、支える側としてはつまんなかっただろうな、と、すごく感じましたね。それは反省しました、ほんとに。
空想委員会、3人ともそうなんですけど、目の前のことをやるのに必死で、もっと先のことを考えられない。なので、当時の事務所の社長が、「次はこういう活動、どう?」って提案してくれるのに乗っかってる感じが、強かったのかもしれないですね。
もっと自分たちから積極的に、次の動きとか、さらに先の動きを考えていかないと。それは裏方をやってみて初めて気づけた。前に出る人がもっと暴れないと、チームとしてつまんないし、そこにいる人たちも盛り上がんない、次に行けないんだな、ということがわかりました。
だから、今はほんとに……ちゃんとやるべきことはやるんですけど、その上で、もっとふざけなきゃな、っていうのはすごく思っていますね。「次、この人、何やるんだろう?」とか。
ほんとにそうですよ。あの姿勢を見せられると、後輩としては、もっとやんなきゃ全然追いつけないな、っていう。それこそアジカン先輩とかもそうだし。たぶんチーム力が高いんだと思うんですけど、それをひっぱっているのはメンバーだと思うので。そこをもっとやんなきゃ、スタッフさんもそのうち「つまんないわ」って離れて行っちゃうだろうな、ヤバいヤバい、と思って、今やってますね。
お遍路は絶対おもしろい
そうです。「7月中に作曲してね」って言われる前に、僕はもうお遍路に行くって決めちゃってたんで……あの、僕、『水曜どうでしょう』のファンで。
それだけです、ほんとに。大学生の時に岩手のテレビで深夜にやっているのを観て、「この人たちめっちゃおもろい」と思っていて。それで、お遍路は、一生のうちに行かなきゃダメだな、みたいなのがずっとあって。で、会社をやめたので、「あ、これ、行くなら今だな」って、軽く行っちゃったんですけど。
まわりのみんなからは「大変だったでしょ?」とか「どんな願い事があったの?」とか言われましたけど、特に何もなく。で、クルマで10日ぐらいかけて回って、終わったら高松でワンマンをやって、そこからソロのツアーがスタートする、という。今年もやります、お遍路とライブ。お遍路、興味ないですか? 行かないですか?
いやあ、絶対おもしろいですんけどね。
僕が思ったのは、空海が作ったあのシステムがすごい、っていう。テーマパークと同じなんですよね。四国全体を使ったアトラクションを空海は作ったんだな、というのを感じて、「あ、これ、パクりたい」って考えてました、回りながらずっと。自分のツアーに、このやり方を活かせないかなあ、とか。っていう意味でも行ってよかったです、お遍路。
帰って来て1週間ぐらいで10曲書いて、曲を出して、「これとこれとこれ」って決まって、そこからふたりはアレンジに入るんですけど、「三浦くん、もっと書ける?」って言われて、追加で書いて持って行って。曲はどんどん書けましたね、今回。
一個一個ストレスを排除した
そうですねえ……あの、自分の作るメロディと歌詞は、誰でも書けるってずっと思ってたんですけど。あんまり自分の曲を、特別だとか特殊だとか思ったことないので。いい曲だなと思うことはあっても、絶対三浦じゃなきゃダメだ、っていう感じではないだろうな、他に代わりは効くだろうな、と思っていて。
でも、休んでいる間に、意外と……周りから言ってもらえることが増えて、「三浦節みたいなのがあるね」とか。じゃあ、自由に作ったらそうなるんだな、と思えたから、好きに作りましたね。
あと、大きかったのが、今まであたりまえと思ってやっていたことの一個一個が、けっこうストレスだったんだな、って感じるようになって。
たとえば曲を作るのも、売れなきゃなんないからヒットしそうな曲を狙って作る、とか。その曲を伝えるためのデモを作るのとか、そういうのも、周りもみんなやってるから、あたりまえだと思って、あんまり好きじゃないけどやってたんですけど。
世の中がコロナ禍になってから、なんで嫌いなのかな、っていうことを、考えるようになって、ストレスに感じてたんだな、って気づいて。それを一個一個分解して、自分は何が嫌いなのかっていうのを考えて、排除するようにはなりました。「これは嫌いだからやらない」とか「これはメンバーにまかせちゃう」とか、そういうのを一個一個できるようになりました。ストレスを抱えないでできるようにしなきゃな、っていうのを、この時期はすごく考えましたね。
そうですね。自分も楽しいけど、周りの方も楽しくて、それがどんどん広まっていけるような仕組みにしないと、続かないだろうし、がんばれないだろうなって思ったので。そこは意識するようにはしてますね。