(取材・文/永堀アツオ)
『来年また絶対にくるね』っていう約束をしていたので、その約束が果たせなくなってしまったのが残念で…
──まず、今年の春ツアーが延期・中止になってしまった心境から聞かせてください。
すごくショックでしたね。リハーサルをしっかり9日間やった直後に、世の中の動きが変わっていって。その2日後にはもうスタッフさんと会って話すのも難しくなっていたので、電話で協議をしながら、早めの段階で、これはもう厳しいねっていう判断をして。本当にもうすぐ本番日を迎えるっていうタイミングで、私自身もバンドメンバーもスタッフさんも、準備万端で熱い気持ちでいて。その熱が冷めてしまうのはもったいないなと思ったし、ショックでもあったし。あと、去年の全国ツアーで、『来年また絶対にくるね』っていう約束をしていたので、その約束が果たせなくなってしまったのが残念で仕方ないなと思ってますね。
──ほぼ完成していたんですね。
そうですね。去年もそうだったんですけど、せっかく各地に行くので、その日にしかやらない曲もそれぞれの公演、全部で用意していて、スタッフさんにもバンドメンバーにも毎回、申し訳ないなと思いながら、全公演別パターンていうメニューを組んでいたんですね。もう時間がだいぶ経っているので、皆さん、ほぼ忘れてしまってると思いますけど(笑)。
──(笑)ライブ活動はできませんでしたが、春にはプライベートレーベルを立ち上げました。
はい!もちろん、大変なこともきっとあると思うんですけど、今の状況に合わせて、自由にすぐに動けるのはインディーズの良さかなと思ったりしますね。あと、個人的にはレーベルロゴを作ってる時にワクワクしましたね。「あ、ほんとに自分のレーベルが立ち上がるんだな」っていう実感が湧いてきました。
──個人事務所と同じ名前である「APRICOT MUSIC RECORDS」という名前で、ロゴには音符が使われてます。
レーベル名は、最初はいろいろカッコつけたものも考えてみたんですよ。「POWER MUSICなんちゃら」とか、「ニコニコット」とか。アプリコット(杏のこと)の新種を調べたりとかもして。いろいろ考えたんですけど、なんか怪しさがあるし(笑)、変にカッコつけるのは良くないなと思ったので、シンプルに「APRICOT MUSIC RECORDS」にしました。ロゴはグループ時代のライブのロゴもト音記号が使われていたり、自分のサインでも使ってたりしてたので、音符をモチーフにするのが私の定番にもなっていたので、これがいいなと思って。
少数派がいつかど真ん中になるかもしれないっていう(笑)、そんな強い思いを込めました
──そして、春と夏に2曲ずつデジタルシングルをリリースしました。
3月にリリースした『サクラトーン』と『虹む涙』は久しぶりのライブだった去年の『サクライブ 2019』にむけて作った曲で、7月と8月にリリースした『Runaway』と『ナツオモイ』も、去年の夏のツアー「Pop Step Zepp Tour 2019」にむけて作った曲だったんですね。まず、『Runaway』は、セットリストを考えてる時に、こんな曲があったらいいなと思って作り始めた曲で。ライブで盛り上がる曲にしたかったので、最初からBPMは180は欲しいなって決めてて。あと、漠然と“都会”というワードをテーマに作り始めて。この曲は、勢いで作ったと思うし、逆に勢いに乗らなかったら最後まで完成できなかったかなと思います。
──まさにライブで熱く盛り上がりましたが、歌詞には強いメッセージが込められてますよね。
そうですね。だから、リリースして、歌詞を読んで、こんなメッセージがあったんだって、驚いてるファンの方もいたみたいです。
──改めて、どんな思いを込めたといえばいいですか。
自分が25年間生きてきて、少しずつ大人になったなって実感する時もある中で感じてきたことですね。なかなか自分の意見が言いづらかったりとか、周りの意見にどうしても合わせてしまって、イエスとしか言えないっていう体験があって。それはきっと、私だけじゃなく、みんなも経験があると思うんですよね。あと、都会というテーマを掲げた時に、今まで緑豊かな田舎で暮らしていた方が、上京してきた時って、ちょっと怖いかなって感じると思うんです。人もすごくいっぱいいるし、朝の満員電車なんて、次の電車を待ったほうがいいんじゃないかって思ったりするだろうし。そういう、自分の経験と、自分以外の人の立場になったりもしながら描いていった曲なんですね。周りに押しつぶされたり、合わせたりしてばかりだと、どこかで自分自身が苦しくなったりする。でも、……最初は『少数派』っていう仮タイトルだったんです。そこにも通じるんですけど、少数派がいつかど真ん中になるかもしれないっていう(笑)、そんな強い思いを込めました。
──ライブではエレキギターを弾きながら歌ってました。
自分が思っていた通り、お客さんがノリノリになってくれたのでよかったです。でも、きっと、今、皆さんまた聴き込んでくれてると思うので、次のライブでは去年以上に熱い『Runaway』が生まれるんじゃないかなって思います。