あの頃、何もわからなかったけど、想像を楽しんでいた。そういうのを思い出しながら書いてました(Uqui)
──では、先に大樹さん参加のあと2曲について聞かせてください。まず、「楽園には砂嵐の矢印で」ですが……。
MAH僕のルーツはもともとパンクとヘヴィーロックですけど、ヘヴィーロックを思い切りやりたいなっていうのがあって。ゲストミュージシャンのみんなも、てへ?って照れちゃうかなと思ったんですけど、プリプロを聴かせたら、「めっちゃカッコいいですね!」って盛り上がってくれて。意外に受けたと思って。
──QUEENがちらつきますよね。
MAHすごーい。エンジニアのUNAさんは、QUEENがヘリから登場するライブをロンドンで生で見てる方なんですよ。その時に、ロックも何もわからなかったUNAさんが一発で喰らった、と。その時のことを思い出したってUNAさんが言ってましたね。その感じの音像に勝手にしちゃいましたって。
──Uquiさんもヘヴィーロックを受けて?
Uquiいや、歌詞は全然受けてないです(笑)。上京したての時、私は原宿でバイトしてんですけど、服屋さんや食べ物屋さんに、フライヤーがやたらいっぱいあって。そのデザインがすごい可愛かったりして。何のイベントなのかもわからないし、なんだかよくわからないけど、可愛いから貰っちゃうっていう。コースターとか、ステッカーとか、カッコいいのがいっぱいあったんですよね。それを持ち帰って、自分のアパートの壁にベタベタ貼って、そのコーナーを作るのが楽しくて。全然聞いたことのない言葉、それがバンド名かどうかもわからないけれど、何か聴こえてくる感じっていうのがすごく楽しくて。
今は検索したらすぐに出てきちゃうし、その言葉が、音楽なのか、アパレルなのかも一発でわかるし。バンド名だったら、音楽もすぐ聞けるし、どんなことを歌ってるかもすぐにわかるじゃないですか。それが、当たり前になってきて。イメージするっていうことが必要なくなってるんですよね。でも、当時の自分の部屋の壁を思い出すと、何にもわかんなかったなって思って。何にもわからなかったのがすごく楽しいなと思って。そういうのを思い出しながら書いてましたね。フライヤーを見て、想像するっていう。
今は検索したらすぐに出てきちゃうし、その言葉が、音楽なのか、アパレルなのかも一発でわかるし。バンド名だったら、音楽もすぐ聞けるし、どんなことを歌ってるかもすぐにわかるじゃないですか。それが、当たり前になってきて。イメージするっていうことが必要なくなってるんですよね。でも、当時の自分の部屋の壁を思い出すと、何にもわかんなかったなって思って。何にもわからなかったのがすごく楽しいなと思って。そういうのを思い出しながら書いてましたね。フライヤーを見て、想像するっていう。
MAHその話を聞いて、自分も栃木の田舎から東京にパンクロックのライブを見にいった時に、配ってるフライヤーを持って帰ってて。ネットも何もなかった頃はそれだけが頼りだったし、同じように俺も壁の一角にコーナーを作って、ハイスタさんとか、パンクロックのフライヤーを貼ってた。それが大事なんじゃないかなと思いました。ネットですぐに調べちゃうんじゃなくて、フライヤーを見て、どんな音楽を鳴らすバンドなんだろうって想像する。これはバンドなんだろうか、ブランドなんだろうか。それすらもわからないっていう。
Uquiレストランの名前かもしれないし、イベント名かもしれないし。あの頃、やたらミックスされてたからね。とにかくデザインが可愛かったりして。想像を楽しんでいた。でも、すぐに答えがわかるわけじゃないから、自分の中で物語を作っていく感じっていうのが楽しくって。
MAHで、東京に出てきた時に、ふと、あのフライヤー、この店だ!ってなったりするんですよね。バンドもそう。CDショップに行って、このバンドかと思って買ってみたりとか。そういうことですね、まさに。
──せめて一発検索する前に、少しの時間でもいいから想像を楽しみたいですね。
その人の声って、心の中でリアルに再生できますよね。とっても特別な曲です(MAH)
──そして、「聞こえる」なんですが、これこそ、涙なしでは聞けない名曲になってます。
UquiMAHさん、何回も泣いてます。
MAHわんわん泣いてますよ。優しくて生命力があって、強い歌詞を書いて欲しいなって思ってたんですけど……なんていうんだろ、レコーディングで本当に忙しい時期に、Uquiさんの最愛のばあばが旅立たれて。Uquiさんはそのばあばを思って書いてくれた、と。
Uquiもう何年も前から危ない危ないってずっと言われてて。でも、「また歳を越せたね。ばあば、すごい生命力だね」って言ってて。でも、去年の末に、2020年は迎えられないかもしれないって言われて、ツアーが終わってすぐに行って。それが私をばあばをみた最後だったんですよね。それでも年を越せたんだけど、1月の終わりくらいに旅立ったっていう連絡がきて。でも、レコーディングが詰まっていたし、歌入れの日程は決まってたけど、その時はまだ、この曲の歌詞もかけてなくて。じゃあ、ずっと思い出そうとしている、聞こえる感じがする、遠くをみてしまう気持ちを言葉にしたいなと思って。で、MAHに「書いてもいいかね」って言ったら、「いいよ」っていうので、バーって書いて、すぐに歌った感じ。
──ばあばのことを思った、とてもパーソナルな歌詞ではあると思うんですけど、<歌おう>という呼びかけがあって、みんなで合唱できる曲になってますよね。
Uquiそうですね。MAHの弾き語りの時から、ここはみんなで歌いたいと思っていて。あと、私、ばあばに直接、歌う姿を見せることがあんまりできなかったんですね。アコースティックライブのDVDは見てくれてて。ばあばも歌ってたって聞いたので、今年のハレアコの夜の部ではすごく思い出しちゃって。ばあばに見せたかったな、聴かせたかなっていう気持ちで、おいおい泣いちゃったんですけど。そういうのもあって、言葉にしたいと思って。
結局、会うたびに、「あんたが元気じゃなければ、ばあばつまんないよ」って言われて。私が元気でいるためには、みんなと歌いたいなと思うし、私だけじゃなくて、みんな、歌を歌うっていうことで気持ちが晴れやかになったり、落ち着いたり、走り出したくなったりする。歌うように生きるという気持ちは大事だなと思うので、<生きよう>じゃなく、<歌おう>って書きましたね。
結局、会うたびに、「あんたが元気じゃなければ、ばあばつまんないよ」って言われて。私が元気でいるためには、みんなと歌いたいなと思うし、私だけじゃなくて、みんな、歌を歌うっていうことで気持ちが晴れやかになったり、落ち着いたり、走り出したくなったりする。歌うように生きるという気持ちは大事だなと思うので、<生きよう>じゃなく、<歌おう>って書きましたね。
MAHその人の声って、心の中でリアルに再生できますよね。自分も2年前におばあちゃんを亡くしてるので、ものすごく重なってて。
Uqui離れて暮らしてる家族だったり、恋人とか友達とかでもいい。脳内でなだめてくれるし、元気をくれますよね。触れないけど触れる感じというか。
MAHUquiさんの歌詞は抽象的で、何を言ってるかわからないって言われたりするけど、<四角い丸をつけた>というのも意味がわかればリアルだなと思うんですよ。その日に○や×はつけたくないじゃないですか。でも、印はつけなくちゃいけなくて。チェックマークも違うし。
Uquiここまでばあばが生きたっていう証をメモしたんです。ばあば、またねっていう気持ちですね。
MAHとっても特別な曲ですね、これは。
──ライブで一緒に歌いたいです、早く。そして、レイさん参加の「都会の猫たち」は、夢や憧れのある世界を歌ってますよね。
MAHこれも1stの時からあった曲ですね。とにかくレイが「名曲や!名曲や!」ってラインで長文をくれました。
Uqui私は夢と憧れで生きていて。全然自分の力を出せないというか、ちょっと萎縮してしまったり、自信がなくなってしまった時に、かっこいい人のライブ映像を見たり、曲を聞いたりすると、ものすごくこう、ムガーーー!―っていう気持ちになるんですよね(笑)。それまでふわっとしてた気持ちから、一気に世界がぐるって一変するみたいなところに連れてってくれる。本当にありがたいって気持ちも込めましたね。
──<僕はもう一度 泣き叫び生まれた>とありますが、一回死んで、生き返ってる感じですよね。よみがえりというか、再生というか。
MAHまさにそういう話をしてましたね。もう一度、人生を生まれたところからやり直せるんだよっていう考え方はとても人間的だと思います。想像できるのが人間の素晴らしいところだから。