新ボーカル 石野理子を迎えた赤い公園が、新体制になって初のフルアルバム「THE PARK」を4/15(水)リリース。ボーカリストの脱退というある意味バンドとして最大の危機に直面しながらも、3人は自分達の日常の中で音楽を鳴らし続け、新たな仲間と出会い、こんなにも生命力に満ちた“1stアルバム”を作り上げた。心機一転、だけど決して気負うことなくセルフタイトルを掲げた本作を持って、4人は「SHOKA TOUR 2020 “THE PARK”」を開催予定だ。
「うわー、すごいのできた!わーい!」って感じつつ、地に足はついている感じはしているんですよ。それがすごく嬉しい(津野)
──赤い公園の、最高すぎるアルバムが完成しました。オリジナルアルバムとしては久しぶりになりますが、結構時間をかけて作った感じですか?
津野米咲(Gt.)そうですね。根詰めて長時間かかったというよりも、ポロ、ポロ、ポロと。ずっと集中しきっていたわけではないです。
歌川菜穂(Dr.)去年の5月とか6月くらいからかな?デモとか含めたらもっと前かも。ツアーも挟みながらでしたし。
藤本ひかり(Ba.)本当に、日常の中で作っていたって感じでしたね。
歌川でもこういう作り方は初めてでした。
──ちょうど2年前の5月に、新ボーカリストとして石野理子さんが加入。バンドの状態がこれまでとは違っていたっていうこともあるんでしょうね。
津野はい。ライブをやりつつっていうのも、かなり影響していたと思います。
歌川もう2年かぁ。あっという間だったね。
──石野さん、今どんな気持ちで音楽と向き合っていますか?
石野理子(Vo.) すごく真摯には向き合っているんですけど、日常の中にあるライフワークみたいなものなので、すごく重く捉えているわけでもなく…。日々、楽しく音楽と仕事をしている感じです。
──そういえば石野さんとメンバーは、そもそも遠距離だったんですよね。
石野最初の1年は広島にいたので、そうですね。最初の年はほとんど一緒にいなかったです。
藤本週末を使って東京に来るって感じだったから。会議も遠隔だったしね。
石野こうやってちゃんと顔を合わせて話したり、会議したりはもちろん、楽器だけのレコーディングに参加できるようになったのもこの1年でようやくって感じなんです。
──不便は感じなかったですか。
津野特には。でも寂しかったです。
藤本寂しかったね。
歌川うん。
津野会いたかった。
──なんだか妬けます(笑)。じゃあ石野さん加入から1年後、上京されてからさらにバンドが加速した感じですか。
津野そうですね。
歌川そのタイミングで、たぶん初ツアー(ワンマンツアー『Re: First One Man Tour 2019』)だったんですよ。何もリリースはなかったけど。ずっと車で移動したりして、そこで一気に仲良くなったよね。
津野あの車移動、よかったね。
藤本はしゃぎすぎて怒られてたもんね。
石野楽しすぎてあまり寝なかったんです。ライブ後、みんなすごく疲れてるのに(自分は)ライブ後も元気だからはしゃいでしまって、注意されました(笑)。
津野すごいシンプルに、ちょっと静かにしてって(笑)。
藤本めっちゃ楽しかった。
──(笑)。そうやって積み重ねたり、あたためたりしながら今の状態があるってことなんですね。
津野そうですね。だからこそかわからないけど、ノリとか空気だけで進めるみたいなことはないですね。じらされてるから、しっかり構築されている感じがあります。
──そういう話を聞くと、このアルバムがとてもいい状態の中で生まれたものだというのがよくわかりますね。
津野無理して作った感じじゃないんですよね。ライブやりながら、この4人でバンド活動する中で、ポツリポツリと録音をして。その時その時は慌てていたりもするんですけど、少しずつ録っていって、記録的になんか出来上がったみたいな感じなので、「うわー、すごいのできた!わーい!」って感じつつ、地に足はついている感じはしているんですよ。それがすごく嬉しいです。
私、このアルバム作っている最中に性格が変わったと思っていて(歌川)
──去年8月に配信「凛々爛々」、10月に「消えない – EP」、今年1月にシングル「絶対零度」ときて待望のフルアルバム。ファンの皆さんにとっては、嬉しくて浮かれ上がって、地に足なんてつけていられないと思いますけどね(笑)。
藤本嬉しい。
津野フルアルバムは、自分達が作っていく音楽――少しずつ変わってきているとは思うんですが、(それを届ける形として)昔から向いていると思っていて。アルバムってとても居心地がいいし、いろんな側面を1本の筋で見せることができる。だからずっと作りたかったんです。
歌川でも、最後までどんなアルバムになるのか全然わからなくて。曲調とかも結構バラバラだったし。
──確かに、いろんなタイプのサウンドが次々と聴こえてきますね。
歌川「Mutant」とか「KILT OF MANTRA」とか「ジャンキー」とか、ちょっと民族っぽいものも入ってきて。そういう試みも初めてだったので、自分達のアルバムでありながらどんな風にまとまるんだろうって感じでした。録ったものを並べて、本当に最後の最後、マスタリング終わるまで冷静に「どういうアルバム」って見れなくて。でも終わってみれば不思議と、そうやってバラバラに録っていったのに1本筋がちゃんと通っているものが出来上がっていた。それはちゃんと生活しながら、地に足がついた状態でやれていたってところと、みんなの曲作りとかプレイに関しても無理がなかったからというか。ガチガチに決めず、ありのままでちゃんと作れていたからなのかなって思いました。
──歌川さん、今回はこれまでにも増して叩きがいがあったのでは?
歌川ありました。私、このアルバム作っている最中に性格が変わったと思っていて。
津野性格が?
歌川赤い公園の曲って、男気ならぬ女気みたいなのがすごくあったなって思うんです。それは今もだけど。だけど、そんな曲をやっているのに、自分自身はそこに達してない感じがあったんですよ。だから今回のアルバムでも、そういう曲を理子が歌っていて、なんていうか自分は歌詞とか聞きながら「(自分に言い聞かせるように)そう、そう。そうだよな」みたいな。私自身が、このアルバムにすごく成長させられた気がしているんです。
津野めっちゃいい話。
歌川みんなの日常の感じとか演奏で、自分がめちゃくちゃ変わっていったなって。ほんと、みんなを見ながら変わっていった感じがありました。
──シシド・カフカさん主催の即興セッションイベント「el tempo」での活動も刺激になっていたのでは?
歌川そうですね。ちょうどアルバムを作りながらやらせてもらっていたので、そういうのもあるかもしれない。いろんな人に会って、いろんな活動をしていく中で自信もついてきて。だから、赤い公園に戻ってきた時の安心感とか愛おしさとかが、よりありました。「そう、ここ、ここ!」みたいな。