──ニューアルバムは、“Empathy”という言葉に出逢ってから、楽曲のテーマやアルバムのコンセプトが決まっていった感じですか?
──“Empathy”は、“共感”という意味ですよね?
橋口はい。共感とか共有という意味です。“Sympathy”は同情の共感みたいな感じで、“Empathy”はポジティブな想いを含めた共感とか共有という意味。僕らは日常を歌ってみんなに、私のことを歌ってる!と思ってもらえるような歌をうたいながら、明日も明後日も一緒に日常を過ごしていけるバンドになりたいと思って、ずっとやってきたので。共感してほしい、共感したいというところはバンド活動の一番根本にあったことだなと思うんですね。それで、今回のアルバムとしてふさわしいんじゃないかなと思ってつけたタイトルです。いつも通り、僕が30個ぐらいタイトルを出したら、みんなが選んでくれた中に全員“Empathy”が入ってて。いつも他のことは意見が割れるんですけど、アルバムのタイトルだけはなぜか割れなくて(笑)、すぐに決まりました。
村中みんなで、裏でラインし合ってるんで。冗談です(笑)。
──収録されている楽曲には、ウェディングソングも、別れの歌も、応援ソングもあって。日々の生活の中で思うこと、経験することを歌った曲に共感できる人も多いと思います。「東京ドリーム」は、地方から上京して頑張ってる人には共鳴できる歌だし、「元カノの誕生日」も、わかるなって男子も多いと思うんですけど。
村中「元カノ」に引っかかってくれてよかったぁ(笑)。
──アルバム用に新しく書き下ろした曲も多いですか?
橋口もともと曲があって、歌詞を全部書き換えた曲もありますけど、基本的には最近書いた曲ですね。歌詞は、ほぼ今年書いてます。
──曲ができた時は、歌詞も一緒についているのですか?
橋口仮歌詞がついてたり、本ちゃんの歌詞がついてかり、なにかしら言葉は入れてます。僕はメロディよりも言葉が大事というか、言いたいこと、伝えたいことがあるから歌になるので。小野君がアレンジすると、そのアレンジに触発されて、歌詞を全部書き換えたくなるんです。「どうかしている」が、まさにそうなんですけど。もともとは恋愛の歌だったのに、エッジの効いた歌詞に書き直しました。
小野橋口君とは違って、僕はサウンドと歌詞の内容を、普段からそれほどリンクさせずに聴いてる人なんですね。「どうかしている」は、橋口君から提示された2000年以降の音の情報量が多い歌ものというアイデアからサウンドを作っていきました。そうしたら途中で歌詞が全部変わると聞いて。それもバンドメンバーがアレンジをしているからこその良さなのかなと。
──「元カノの誕生日」は、歌詞もサウンドも耳に残る曲でした。
村中「元カノ」は、もともと歌謡曲っぽい感じだったんですよ、メロディが。おもしろい歌詞だし、歌謡曲っぽいアレンジでやってもおもしろいかなと思ったんですけど、せっかくだからもっとイカレた感じにならないかなと思って(笑)。ファンクロックみたいな感じがかっこいいなと思いながら、マイナーロックからサビで転調して、無駄に明るくなるのがこの歌詞には合ってるかなと思いながらアレンジしました。
──因幡さんがアレンジする時のポイントを教えてください。
因幡アレンジする時は、いつも個人的に裏テーマをつけてて。自分がアレンジを楽しむ意味での縛りかもしれないんですけど、自分のルールみたいなのがあって。今回の「ピント」の裏テーマは、脱ストリングス。ストリングスが必要だと思っても、入れない!と決めてました。この曲は、音数が少ないほどいい曲になるだろうと思ってたので、勇気を持ってストリングスには頼らない、音の隙間があってもビビらない(笑)というのは意識しました。
──「東京ドリーム」では、きらびやかなブラスが入っていたりと、「ピント」とは真逆な印象ですが。
因幡はい、真逆ですね。今までのwacciを最大限出してるんですけど、更なるブラッシュアップをした感じという。きらびやかな曲なので、きらきらするものを徹底的に入れようと思いました。ブラスもストリングスも、鉄琴も木琴も(笑)。
──ジャジーな雰囲気も新鮮でした。
因幡でもジャズになりすぎないように、ちゃんとポップスとして昇華させてあげるというところはこだわりました。それも裏テーマなんですけど。
──いろいろなタイプの曲があるから、横山さんもプレイしていて楽しかったんじゃないですか?
横山三人三様にドラムの捉え方が違うので、楽しかったですね。小野君のアレンジは、音楽ファン目線というかプレイの内容にも踏み込んでて。できないことも入れてくるけど、それを攻略するのが叩いてて楽しいんですよ。(村中)慧慈君は、あまりドラマーが叩くことを考えずにリズムのアレンジしてくるので、それを実際のプレイに落とし込みつつ彼のイメージ通りのものが録れるとやりきった感があって。(因幡)始ちゃんは、音色にすごくこだわる。レコーディングの時間よりも、音色をキメる時間の方が長かった(笑)。
──「ここにいる」は、wacciが歌うことの意味を言葉にした歌かなと感じたのですが?
橋口実は、今まで自分たちが歌をうたうこと、演奏することに対しての想いをテーマにした曲はなかったので、いい機会だから入れたいと思いました。“なくても生きていけるけど あるから生きてこれたって いつまでも振り向けば 僕ら歌ってるから…”という歌詞の最後の2行は、どうしても伝えたかった言葉ですね。歌って、この程度だなと僕は思ってて。なくても生きていけるし、台風とか災害があった時に、最初に必要なものじゃないと思うんです。でも振り返った時に、音楽があったから励まされたり、乗り越えられた部分って、きっと後からわかってくると思うんですよね。僕らの歌は、そういう存在でありたいなと思って書きました。今回は、自分でも歌詞を書ききったなと感じてて。いろんなところに想いを散りばめたので、言葉の部分で悔いはないです。
──改めて、アルバムの聴きどころを聞かせてください。
橋口共感というところを大事にしてきたwacciが結成10年、歌詞も含めて10年前なら絶対に書けない曲たちというか。10年間の活動を通していろんな景色を見て、叶った夢も叶わなかった夢もあるけど、ここまでやってきたからこそたどり着いた1枚という感じがありますね。wacciの10年分の想いと、11年目からの決意をアルバムの曲たちから感じとってもらえたら嬉しいなと思います。あとは、この曲たちを持って、ファイナルの神奈川県民ホールまで、ツアーに来てくれたひとりひとりに、ちゃんと想いを伝えていきたいと思っています。
PRESENT
直筆サイン色紙を3名様に!
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