音楽は自由だというところにより近づいているのかもしれないです
タイトルになっているBeautifulにはカラフルという意味もあると思うので、今風なR&Bも入っているんですが、懐かしめのオールドスクール風のものもわかりやすく混在していて。ある意味、いつものアルバムよりも、開き直ってカラフルになっているんじゃないかなと思います。
音楽的にも歌詞の意味でも、これをこう歌ったらかっこよく聴こえるだろうとか、よく捉えてもらえるだろうという意識は誰にでもあると思うんですけど。いっぱい作品を作ってくると、そういう気持ちが抜けてくるんでしょうね。自分が今思っていること、自分のできること、その時々のやりたいことを、あまりバランスをとらずに、ああでもないこうでもないって考えずに音にしていきました。歌詞を書く時も、今までだったらマイルドにまとめようとするところを、もうちょっと赤裸々なまま言っておくとか。でも歌ってみると、それこそが歌だなと思ったりするんです。歌詞の意味でも音楽の意味でも、包み隠しはないですね。以前のほうがどう聴かれるかなって考える度合いがあったんでしょうね。
大きくどのタイミングでっていうのはないですけど、キャリアが積み重なったのもあるでしょうね。さらけ出しているのはジャケットにも繋がりますね(笑)。
4年ぶりですからね。4年も空くと、出会いもあれば亡くなった人もいる。いい奴もいるし、嫌な奴も見てきた。そんな、4年分の年月があるわけです。僕は人を見て反面教師で学ぼうというヘソ曲がりなところがあって、ああいう風になりたい、ああいう風になりたくないなっていうことも4年分あるだろうし。自分のアルバムをあまり聴かないんですけど、ラジオで流れていたり、番組で自分でオンエアした時、そうか、こういう歌詞を書いて歌ってたんだって、照れくさくなったり。そういう、小さなことが新しいことに繋がっていると思いますね。デビュー当時の作品は恥ずかしいけれど、ピュアでいいなとか。そういうところがいい意味で反映されているかもしれないです。
基本的には、アフリカンルーツの音楽が好きなんだなって思いました。R&B、ソウルといったブラックミュージック。今のアメリカのラジオで流れている音楽に敏感に反応してしまうけれども、この辺のジャンルが好きで40年以上経っていて。その40年分、ずっと心や体に影響を与えているものが積み重なって、それがいろんな時代やタイミングでポロポロ出ているんですよ。それを考えると、基本は変わらないなと思いますね。
不器用なんですね。でも、今回の新曲たちは自分で聴いてもフレッシュだと思えるし、曲と歌の相性がどんどん良くなっているなと思います。どの曲も作ったばかりの曲を歌うことになるわけじゃないですか。たとえば、ライブを続けて馴染んでいくこともあるでしょうけど、今回はレコーディングをしながら、曲と歌のパフォーマンスの相性がいいなって思いながら作っていました。やっとですね。こう見せようとか、こう聴かせようという願望でやっているんじゃなくて、純粋に作ったものや生まれてきた音楽を楽しみながらやっている。そういう状態になれているのかもしれないですね。
そうです。曲としても言葉としても、そうだし。そういうところに近いものが歌になっていると思います。
迷いがゼロかというと嘘になりますけど、あれがいいこれがいいかと迷って中途半端なことをするんじゃなくて、これが好きだな、これがいいなっていう判断は、以前よりその場その場で明確になってきています。でも、いくつか作品を出してきたことが大きいですね。あんな曲やこんな曲もあるから、誤解されない自分がいる。急に裸になっても、この裸の人は誰?っていう感じじゃなくて、これもひとつのアイデアだし、遊びのひとつ。遊びながら楽しみながらできている。これで俺の人生決まるというものじゃなく、音楽は自由だというところにより近づいているのかもしれないです。もっとそうなるといいと思いました、囚われないというか。
まさにそうですね。
自分で作って自分で歌って、それを聴く人がいるのは幸せだなと思います
成長できたというより、自分で作って自分で歌って、それを聴く人がいるのは幸せだなと思います。曲を作って歌っていて楽しめるというのは成長なんでしょうけど、レコーディングをしているときは、仕事や義務という感覚はないですから。時間のリミットがあれば仕事っぽくなりますけど、今回はスケジューリングを、わりと余裕をもってやらせてもらったんです。いつもだったら、1曲につきオケ録りとオーバーダブに1.5日。歌い慣れに1.5日。本気の歌に2日。それ以上はかけない。計5日程度ですね。でも今回は、土日を含めての一週間を当てて、早く終われば休み。時間がかかっても一週間あるという感じで、いつもより余裕を持ったスケジュールでレコーディングをしたことも、義務感や仕事的なリミットを外せたかもしれないです。
シングルになっている曲を外して言うと、「JAM fo’freedom」。(Interludeを除く)アルバムの1曲目だけがずっとできずにいたんですよ、自分が嬉しくなるものがなかなかできなくて。3~4曲トライしたんですけど、どれも悪くないなという程度で、何か面白くない。でも、夏前ぐらいに曲作りとしてはリミットだなというタイミングが近づいて、あとはレコーディングと歌だけに集中したいなという日に、明け方の5時ぐらいにふっとサビが浮かんで、そのままのノリでAメロも浮かんだんです。ほんの5分間ぐらいで、ずっと悩んでいた1曲目ができて、ほっとしましたね。1曲目ということで考えすぎたんでしょう。一番楽しみなことなのに。それはすごく印象に残っています。5分でできるんだったら、何だったんだろうと(笑)。「FUN FUN CHANT」はオールドスクールそのまま、シックとかナイル・ロジャースとかその辺を意識しました。去年、デモを作ってあったんですけど、それはアルバムに入れるつもりもなくて遊びで作ってあったんです。それが評判がよくて、だったら遊んじゃいますよということで完成させました。「LIFE」という曲も印象に残っています。近年、R&Bの流れもあるんでしょうけど、あまりギター中心の曲をやってこなくて。アコギでもエレキでもいいんですけど、ギターの入った素朴な曲を作りたいと思ったんですね。あまり作らないような、飾り気のない曲。これもこのアルバムじゃないと入ってない曲ですね。
遊びだったり、化粧しすぎなかったり。化粧するなら遊びの中でするとか、そういう傾向にありますね。