ビートをちゃんと黒人並みにして、和音を有機的に構造して、ちゃんとしたサウンドでやる
(バンドの資料を読んで)まだプロフィールに「デイリーヤマザキ」って書いてあるんだ(笑)。
ふふ、わかんない。俺はずっと引っかかっているんですけど。
アハハハハ。
前身バンドをギターの熊谷拓人とやっていたんですけど、そのバンドで鳴らしてる音楽が嫌になっちゃったんです。それで新しく作ろうと思って、メンバー募集をかけたらベースの柳澤凌成とドラムの歌代が入ってくれることになり、2015年にGRASAM ANIMALを結成しました。音楽でいうと、「ビートをちゃんと黒人並みにして、和音を有機的に構造して、ちゃんとしたサウンドでやる」この3つを基軸としてやってます。
ああ、はいはい。
アルバムを出すということは、もちろん毎作自分たちの基準を越えているからリリースしているわけですけど。まだ世間が俺らに気づいてないので、認知の壁は感じてますね。
基本は全員に勝つところにラインがあるので……そういうことですね。曲を出しているということは、俺らの作品は「周りに勝っている」ということです。
俺はポップ野郎なので良いメロディにしないと気が済まないフシがある
逆に、どう思いましたか?
ドラマの主題歌と言っていただきましたけど、そういう感じはありますね。1つ1つの曲が感情を引っ張っていけるなって。狙っているワケじゃないですけど、そういうものにしないと良くならないと思います。多分、前作は爆音で流したり、しっかり聴かないとわからないことも多かったと思うんですよ。まだまだ表出していない部分があった。今までに比べて『GOLDEN BAD』は、もうちょっと軽くなれた感じはあります。このアルバムに文句を言える人は少ないはずだし、悪い言い方をすると浅く広くというか。
最初からみんなに聴かれたい趣向は強いですし、俺はポップ野郎なので良いメロディにしないと気が済まないフシがある。あとは根が良い奴だから、自然に作るとキレイな曲がいっぱい出てきちゃう(笑)。
「ヤモメ」とか「花の香りに」のことです。この2曲はエスニックな感じにも近いんですよ。「ヤモメ」はスウェーデン・ポップスっぽくしたくて、「花の香りに」はブラジル・ポップスにしたかった。雪景色とか広い草原とか、そういう感動する情景が好きなんです。
うん、音楽ってそういうものですからね。良い音楽なら情景は感じるものだと思いますよ。
フジファブリックの「Anthem」を聴いたときは「うわぁ、スウェーデンだ」と思いましたね。
家でずっとビートルズが流れていた、とかそういう音楽の英才教育はなくて。普通にBUMP OF CHICKEN、RADWIMPS、9mm Parabellum Bulletとかを聴いてましたよ。
確かにそういう風に思われてますけど、俺は叩き上げなんですよ。母親はSMAPとミュージカルばっかり聴いてて、父親はドゥービー・ブラザーズばっかり聴いてた。俺はどちらも好きになれず、あんまり親からの影響は受けないで育ったんです。みんなが聴いてたような邦楽のバックグラウンドしかないまま、前身バンドを始めて。高校3年生になってようやく洋楽も聴くようになった。だから俺らの音楽は、ちゃんとした洋楽っぽさがなくて荒いんですよ。
そうなんですかね?まあまあ、そういうこともあるかもしれないですね。
一気に曲を書き上げることってほぼないんですよ。Aメロまでとか1番までしか作れないまま、半年間かけてようやく曲が完成するパターンが多くて。だから精神状態といってもカオスなんですよね。
まあ……曲は暗い気持ちになった方が作れますね。暗い気持ちになると死に近づくじゃないですか。生じゃなくなったときにパワーが宿るんですよ、人には。
神の力ですね。
アハハハハ。ワザと変な言い方しましたけど、要はアイデアが浮かびやすくなる。獣は危機に直面すると出血をしないために血がドロドロになるんですね。その状態って異常じゃないですか。異常だけどすごく鋭敏になるし、そっちにいた方がものを掴めるというか。だから、少しでも暗くなった方が良い気がする。
ただ、無理に暗くなる必要はなくて。楽しいときは楽しいままで良い気がします。人には感情の波があるから、そのラインが上に行ったときはステージで演奏して、ガーッと下がったら曲を作る。そういうサイクルで心身をボロボロにしていけばいいんです。