兵庫慎司のとにかく観たやつ全部書く:第176回[2024年12月後半・the telephones×キュウソ、フラカン×3、ハナレグミ、石野卓球『地獄温泉』、ビッケブランカ、の7本を観ました]編

コラム | 2025.02.05 17:00

イラスト:河井克夫

主に音楽・時々それ以外のライター兵庫慎司が、半月に一回のペースで、自分が観たすべてのライブのレポを書く連載の、176回目・2024年12月後半編・2024年最後の回です。
「21時までに終わらなきゃいけないやつ」「そのギリギリの時間までやるやつ」を、京都と渋谷で観た回になりました。

12月19日(木)19:00 the telephones ゲスト:キュウソネコカミ @ Spotify O-nest

the telephonesのO-nest3ヵ月連続対バン企画。一回目の10月18日(金)はWiennersと共演(詳しくはこちら≫ 兵庫慎司のとにかく観たやつ全部書く:第172回[2024年10月後半・奥田民生@両国国技館2デイズなどの7本を観ました]編 )、二回目の11月15日(金)のPOLYSICSとの回は、ノブ(岡本伸明)の急性気管支炎で2月9日(日)に延期、そして3回目がこの日。

先攻のキュウソは、1曲目「ビビった」のイントロで「the telephonesがいなかったら生まれてなかったバンド、キュウソネコカミだー!」とヨコタシンノスケが絶叫。後半の「ハッピーポンコツ」のイントロで、その詳細に触れる。曰く、ライブハウスの楽しさを教えてくれたのがthe telephonesだった、学生の時に梅田シャングリラの前方でthe telephonesを観て「こういう景色を俺も作れたらええな」と思ってバンドを組んだ、と。

キュウソのメジャーデビュー10周年に石毛輝が出したお祝いコメントで、「新譜の中でこの曲が個人的に好きだったから12月の対バンの時に聴けたら嬉しいぜ!笑」とリクエストしたインスト曲「BACK TO THE NATURE」は、中盤で披露されたが、始まって間もなく演奏をミスって曲がストップ。が、「こんなん観れるのライブハウスだけやぞ!音源は止まらない、ライブは止まる!」とヤマサキセイヤが叫んで却って大ウケしたりして、「やることなすこと裏目に出る」の逆の状態だった。

the telephonesは最初のMCのあとに「じゃあリスペクトをこめていきます。目が覚めるようにディスコしてみましょうか」(石毛)と、キュウソの「MEGA SHAKE IT!」をカバー。
アンコールでは石毛とセイヤのツインボーカルで「Urban Disco」、さらに「Love & DISCO」で他のキュウソのメンバーも乱入。その2曲の間に石毛が言った「バンドをやれてるのはあたりまえじゃないと思う、いい曲をたくさん作ってもライブをやれない人も知っている、ほんとに自分たちは恵まれていると思っている、感謝している」という言葉、とても実感がこもっていた。
そういえば、セイヤは中盤で「活動してるバンドがいちばんかっこいいってとこを見せたるからな!」「俺はとにかく今やってるバンドが最強説を唱えていきたい!」と叫んでいた。リンクしてるなあ。

12月20日(金)19:00 フラワーカンパニーズ @ 京都磔磔/Streaming+

毎年この時期恒例の、フラカン京都磔磔2デイズ。配信もあり。何年か行けてなかったが、というか、自分がもっとも頻繁に観ているバンドなんだから、レポとかの仕事もないのにわざわざ行かなくても、という気もするが、行きたかったので行きました。1日目を観て一泊して、2日目は観終わったらその足で東京に帰る、という行程。
で、フラカン、この磔磔やリキッドルーム等で2デイズをやる時、昔は「かぶり曲なしの2日間」というタイトルを付けていたが、最近は付けない。曲がかぶっているから、ではなく、かぶってないことをアピールしなくなった、ということだ。この初日はアンコール一回で22曲、翌日はアンコール二回で25曲やったが、両日とも演奏したのは、「ラッコ!ラッコ!ラッコ!」と「I’m SKI」の2曲だけだった。
どちらの日も、レア曲多めのうれしいセットリストだったので、書いておきます。
1.人は人/2.どっち坊主大会/3.赤点ブギ/4.野暮天ブギ/5.ピースフル/6.煮込んでロック/7.DIE OR JUMP/8.絶賛公開中/9.パンクはうまく踊れない/10.夜空の太陽/11.アメジスト/12.いろはにほの字/13.エコー/14.セロハン/15.吐きたくなるほど愛されたい/16.フェイクでいこう/17.ラッコ!ラッコ!ラッコ!/18.冬のにおい/19.NUDE CORE ROCK 'N' ROLL/20.I’m SKI/アンコール:21.深夜高速/22.最後にゃなんとかなるだろう

12月21日(土)17:30 フラワーカンパニーズ @ 京都磔磔/Streaming+

で、2日目。この日はギタリスト竹安堅一の55歳の誕生日で、途中に彼が選曲したコーナー「竹安ベスト10」が設けられた。11曲目から20曲目までがそれで、10位〜1位の順。「55歳にしみる曲」というテーマで選んだそうです。
1.俺たちハタチ族/2.友達100万人/3.脳内百景/4.ハートのレース/5.マイ・スウィート・ソウル/6.流れ星だろ人生は/7.行ってきまーす/8.少年卓球/9.いましか/10.靴下/11.ペダルマシンミュージック/12.NO MERCY/13.死に際のメロディー/14.ひとつだけ/15.見晴らしのいい場所/16.キャンバス/17.晩秋の候/18.さよならバイバイ/19.夕焼け/20.帰り道/アンコール:21. ラッコ!ラッコ!ラッコ!/22.恋をしましょう/23.YES,FUTURE/24.I’m SKI/ダブル・アンコール:25.真冬の盆踊り
2日目の方が3曲も多かったのは、磔磔は21時までしか音を出せないので、19時開演の1日目は22曲が限界だった、でも2日目は17:30開演なので余裕があったからだと思います。
2日目のダブル・アンコールは、圭介が竹安に「曲名言ってもらいますよ。全然用意してないけど、何やるか」と振り、竹安が「今年最後の『真冬の盆踊り』!」と言って、演奏が始まった。そうか、じゃあ年内の残り2本=12月29日の『RADIO CRAZY』と、12月31日の新代田FEVERでは、やらないのか、この曲。

12月22日(日)18:00 ハナレグミ @ 昭和女子大学人見記念講堂

ニューアルバム『GOOD DAY』のリリース・ツアー『TOUR GOOD DAY』の直後に、『ホールでGOOD DAY』と銘打って追加公演的に行われた、東京と神戸(27日・神戸国際会館こくさいホール)のホール2本のうちの、東京編がこの日。
『TOUR GOOD DAY』の東京公演は、このDI:GA ONLINEにレポを書きました。ツアーの途中だったので、ほぼネタバレなしですが、こちらです。≫ まさに良き日、そして善き日。ハナレグミ「TOUR GOOD DAY」東京公演=11月14日、Zepp DiverCity(TOKYO)レポ
で、このホール編は、『TOUR GOOD DAY』を3分の2弱くらい踏襲しつつ、あとの3分の1強くらいは別の曲を入れたり、その曲を演奏する位置を変えたりする、というセットリストになっていた。「オリビアを聴きながら」を聴けたことや、アンコールのラストが「深呼吸」だったことなどが、個人的にうれしかったポイント。
それから。ニューアルバムの「雨上がりのGood Day」音源にはiriがゲスト参加しているが、『TOUR GOOD DAY』では出なかった、ならばこのホール編には……と期待していたら、やはり登場。イントロに乗ってスッと現れて、のびやかな声で楽しそうに永積崇とデュエットして、歌い終わると風のように去った。永積「あ、もう行っちゃった……天照大神は、天の岩戸に帰ってしまいました」。

12月26日(木)24:00 石野卓球『地獄温泉』@ LIQUIDROOM

毎年恒例、石野卓球が誕生日に頭から最後までひとりでDJをやるこのイベント。今年は、当日夕方のJ-WAVEの番組の「今日行われるライブやイベントを紹介」みたいなコーナーから電話出演の依頼が来て、生放送で1分半くらいしゃべりました。地獄温泉に毎年行っているこういう職業の奴を検索で探して、Xもしくはこの連載に辿り着いて、僕のことを知ったのだと推測する。
このイベント、ここ数年は、石野卓球のルーツになっている、1980年代頃のニュー・ウェイブやテクノ・ポップ系の曲が軸になったプレイであることが多い。今年もそうで、ニュー・オーダー、ペット・ショップ・ボーイズ、DAF、スパークス、アダム&ジ・アンツ、ブロンスキ・ビート、デペッシュ・モード、ブロンディ、ヘヴン17等々がスピンされた。それはもう楽しい。
という中で、突然B’zの「BAD COMMUNICATION」がかかったのには、びっくりした。でもウケてた。

12月27日(金)19:00 ビッケブランカ @ LINE CUBE SHIBUYA/CSテレ朝チャンネル1

毎年東京や大阪で行っている『RAINBOW ROAD』。今回は『VK Blanka presents RAINBOW ROAD -號-』と銘打って行われた。リリース作品ありきの普段のツアーではできないような、懐かしい曲やめずらしい曲も演奏する、という趣旨。CSテレ朝チャンネル1で生中継もあり。
11曲目の「ミラージュ」を終えたところで、ビッケブランカ、「影アナでも言ってたでしょ?」と、今日はアンコールはないことを、改めて告げる。LINE CUBE SHIBUYAは音止め21時厳守、でも平日なのでお客さんの来やすさを鑑みて19時開演にした、だからアンコール待ちでいったん引っ込んだりするのをやめて本編だけにした、ということなのだと思う。
しかし。ラストの16曲目「Old Rivals」が終わったところで、まだ時間に余裕があると判断したらしく、予定を変えてアンコールを決行。ひとりで「アイライキュー」と「girl」を弾き語りし、オーディエンスを大喜びさせて終了、と思ったら、バンドのメンバーを呼び込んで、全員で「High Love」を追加。オーディエンス、さらに大喜び、後半のブレイクできれいなシンガロングが響く。
曲が終わって、一同がはけて客電が点き、終演アナウンスが流れ始めたところで時計を見たら、20時57分だった。よかった。ヒヤヒヤした。感動したけど。

12月31日(火)15:45 フラワーカンパニーズ @ 新代田FEVER/YouTube

フラカン、大晦日は新代田FEVERで年越しカウントダウン・ライブをやるのが恒例になっているが、今年は夕方にライブをやって、その模様を収録して、年越しの時間に配信する、というふうに変更になった。
グレートマエカワに理由を訊いたら、コロナ禍以降、大晦日から元日にかけての深夜帯の電車が「ほぼない」くらいまで減ってしまって、お客さんたちが帰りづらくなった、この時間の方が来やすいし、体力的にもラクなんじゃないかと思って、一度これでやってみることにした、とのこと。
じゃあ俺はどうすればいいのよ。年が変わる時間に家にいたことなんて、20年以上、ないんですけど。と思ったが、結果、これまでのフラカンの大晦日のFEVERでもっとも大入り満員だったし、みなさんめちゃくちゃ盛り上がっていた。グレートさん、正しい選択でしたね、と、言わざるを得ない。
スタートから時間を計測して、配信の時に年越しにさしかかるタイミングで、ちゃんとカウントダウンも行っておられました。セットリストは、この間の磔磔2デイズとはまた違う内容で、「終身刑」「ビューティフルドリーマー」「はじまりのシーン」あたりが、個人的に、特にうれしかった。
ちなみに、その年越しの時間の配信、有料でチケットを販売したが、本番時のトラブルで、前半のスイッチング映像が破損してしまった。なので、チケットを買った方には払い戻しを行い、前半は1カメ・後半はスイッチング映像で、LIVE HOUSE FEVERのYouTubeチャンネルで、1月6日まで無料で配信する、という処置が取られた。

  • 兵庫慎司

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    兵庫慎司

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