兵庫慎司のとにかく観たやつ全部書く:第175回[2024年12月前半・THE COLLECTORS、TALTOナイト、坂本慎太郎、真心、エレキコミック、ヒグチアイ、おとぼけビ~バ~の7本を観ました]編

コラム | 2025.01.21 17:00

イラスト:河井克夫

ライター兵庫慎司が、半月に一回のペースで、自分が観たすべてのライブのレポを書く連載の、175回目=2024年12月前半編です。今回はとにかくヤユヨの解散がびっくりでした。そんなこと思いもせずに観て、レポを書いたもんで。あのあと急に解散が決まった、とは考えられないので、そうか、もうそういう気持ちでステージに立っていたのか、と……。

12月1日(日)16:30 THE COLLECTORS @ 恵比寿The Garden Hall

ニューアルバム『ハートのキングは口髭がない』のリリースツアーの東京公演。リアルサウンドにレポを書きました。≫ THE COLLECTORSが体現するロックバンドを続けていく理想的なあり方 アルバムリリースツアー東京公演レポ

12月4日(水)18:30 TALTOナイト2024 @ Spotify O-EAST

エッグマン傘下のレーベル兼マネージメント、TALTOの所属アーティストが出演する恒例イベント。今年はWON、SPRINGMAN、SAKANAMON、ヤユヨ、マカロニえんぴつの5組が出演。リアルサウンドにレポを書いたので、未読の方はぜひ、なのですが。
中でも、久々に観たヤユヨがえらくよくなっていたので、そのレポの中で絶賛したのだが、9日後に解散が発表されて、「えっ……」と絶句してしまった。2025年1月31日(金) shibuya eggmanがラストライブだそうです。うー。
あ、レポはこちらです。≫ SAKANAMON、マカロニえんぴつ、ヤユヨ、SPRINGMAN、WON……個性でぶつかり合った4度目の『TALTOナイト 2024』

12月5日(木)20:00 坂本慎太郎 @ 福岡DRUM LOGOS

この連載の前々回でも書いたが(≫ 兵庫慎司のとにかく観たやつ全部書く:第173回[2024年11月前半・宮本浩次、syrup16g、坂本慎太郎などの10本を観ました]編)、坂本慎太郎のツアーが発表されると、全ヵ所申し込んで、当たったところに行くことにしている。2年前のツアーの時は大阪が、今回のこのツアーは岡山と福岡が当たった。
なので、このツアーを観たのは二度目だが、二度観れてよかった。セットリストがところどころ違ったので。本編15曲でアンコール2曲なのは同じだが、たとえば岡山ではアンコールの最後にやった「物語のように」を、福岡では9曲目にやった、というような変更もあったし、岡山ではやったが福岡ではやらなかった曲もあるし、その反対もある。
岡山でやって福岡でやらなかったのは、「まだ平気?」「鬼退治」「小舟」。福岡でやって岡山でやらなかったのは、「マヌケだね」「幻とのつきあい方」「ツバメの季節に」でした。

12月7日(土)17:30真心ブラザーズ @ 新宿THEATER MILANO-Za

ニューアルバム『SQUEEZE and RELEASE』のリリース・ツアー、全11本の6本目の東京公演。THEATER MILANO-Zaは2023年4月にオープンした東急歌舞伎町タワーにある劇場で、普段は演劇やミュージカル等が行われることが多いハコである。前に一度来たことがあるが、今年7〜8月に上演された、松尾スズキ作・演出の『ふくすけ2024−歌舞伎町黙示録−』でした。
さて真心、今回のツアーは、ニューアルバムにも参加した新しいリズム隊。ドラムはDOGADOGAやお父さん(古市コータロー)のバンド等で叩いている古市健太、ベースは木(KI)の大橋哲。2023年の秋に、YO-KING/DOGADOGA/木(KI)の3つで回るツアーがあって、その時YO-KINGは、前半は弾き語りで、後半はDOGADOGAと木(KI)の混合メンバーによる「ザツオン21グラム」の演奏で歌った。
その演奏を大変に気に入って、次の真心のアルバムと、リリース・ツアーへの参加を要請したという。その一昨年秋のツアーのことは、この連載にも書きました。こちら。≫ 兵庫慎司のとにかく観たやつ全部書く:第147回[2023年11月前半・モトリーとデフレパ、SHISHAMO、TESTSETなどの5本を観ました]編
なお、4人でお揃いのオーバーオールに白Tシャツ、というふうに衣装を揃えていた。ふたりで揃えたことはあったが、4人で揃えるのは、デビュー以来で初めてだそうです。ドラムもベースも、すばらしいプレイだった。今後も長く続きそう、この編成。
さて。そもそもニューアルバムの『SQUEEZE and RELEASE』は、1995年の名盤『KING OF ROCK』のようなアルバムを作ろう、というのがコンセプトで、だからだろうが、まるで『SQUEEZE and RELEASE』と『KING OF ROCK』、両方のリリース・ツアーみたいなセットリストだった。
プラス、「拝啓、ジョン・レノン」や、2006年のアルバム(=再始動して最初のアルバム)『FINE』から「紺色」、ファーストアルバムの「うわさ」などなど、うれしい曲だらけ。特に、アンコールの1曲目が、真心の最初のターニングポイントになった「素晴らしきこの世界」だったのにはしびれた。
あと、『SQUEEZE and RELEASE』収録の、桜井秀俊がラップする「Mic Check」は、この日がライブ初披露、というサプライズもありました。

12月13日(金)19:00 エレキコミック @ 下北沢本多劇場

第34回発表会『す』、金曜1公演土曜2公演日曜1公演、の初回。コント6本と幕間映像4本。コントは「雪山でサウナ」「やつてんモバイル」「将来なりたい職業」「怖い系YouTuberやち子」「食品ロスをなくす仕事」「代わりに謝り屋」の6本。あ、タイトルは便宜上、僕が勝手に付けたものです。
で、幕間映像は、まず前回にひき続き、お掃除芸人マッハスピード豪速球ガン太にやついが掃除を依頼し、電話した段階でもガン太が家に来て作業に入ってからも、山のように因縁をつけまくってタダ同然まで値引きする、という企画の前編と後編。
もう1本は、週3〜4ペースで中野新橋界隈で飲み歩いている、「中野新橋の仙台四郎=中野新ダチ四郎」こと今立進に、行きつけのバーの社長から、新店舗を出すのでその店長をやらないかと打診があった。それを引き受けたのでアルバイトを募集します、ということで、その面接の様子の前編後編。
世のコントも漫才も、基本的に、片方がもう片方を戸惑わせ、困惑させ、振り回す、という構造が基本だが、その「戸惑わせ力」「困惑させ力」「振り回し力」が、すさまじく秀でている芸人だなあ、やついいちろうは。というのが、今回特に実感したことだった。コントで演じているキャラだけでなく、幕間映像でもそうなので。
アフタートークのゲストがロバート秋山竜次だったが、その秋山をも振り回し放題振り回して、そのまま終了。秋山「えっもう終わり?まだ何もしゃべってない!おい(エンディングの)音楽かけんなよ!しゃべらせろ!」。あっはっは。

12月14日(土)18:00 ヒグチアイ @ 東京国際フォーラム ホールC

インディーズ・デビューから10周年を記念して行われた『HIGUCHIAI ALL TIME BEST LIVE“元気じゃなくてもまた会いましょう”』。1500キャパの国際フォーラム ホールCがソールドアウト。
オズワルド伊藤&畠中による、ナレーションというか、前説というか、ラジオのしゃべりみたいなトークを経て、開演。ステージ左方には、カワイが貸してくれたという最高級モデルのグランドピアノがどーんと置かれているのだが、1曲目はステージ中央のエレピの弾き語りでスタートする。
以降、いつものバンド=ベース御供信弘・ドラム伊藤大地・ギターひぐちけいと共に演奏する曲、GOOD BYE APRILの倉品翔や、2021年の舞台『シンフォニー音楽劇「蜜蜂と遠雷」〜ひかりを聴け〜』でヒグチアイと共演したパーマ大佐等の6人からなるコーラス隊が加わる曲、ピアノから離れてハンドマイクで歌う曲、ひとりでグランドピアノで弾き語る曲、と、いうバリエーションがありつつ、本編17曲・アンコール2曲の約2時間15分だった。
前述したように、ひとりでエレピ弾き語りの「かぞえうた」で始まり、「ココロジェリーフィッシュ」「まっすぐ」「悲しい歌がある理由」「わたしのしあわせ」「備忘録」「東京にて」等々の歴代の名曲を経て、「劇場」で本編を締め、アンコールでヒット曲の「悪魔の子」と「縁」を追加、というセットリスト。
頭4曲終わったところで「楽しいのはここまでなんです」と言ったとおり、そこからヒグチアイならではの、聴き手が自分自身と対峙せざるを得なくなるシビアな曲が続いた末に、最後は軽快で楽しい「縁」で、ハンドクラップが広がって終わる、といういい構成だった。自分も聴き手も甘やかさないところがとても誠実、そんな歌だらけだなあこの人、と、改めて思う。
2025年は、1月26日高松から4月11日東京・北沢タウンホールまでの、11本のツアー『HIGUCHIAI ALL TIME BEST SOLO TOUR “元気じゃなくてもまた会いましょう”』から始まる。

12月15日(日)18:00 おとぼけビ~バ~ ゲスト:SiM @ 味園ユニバース

おとぼけビ~バ~のジャパン・ツアーのファイナル、間もなく閉館が決まっている味園ユニバースでの2デイズの2日目。1日目はワンマンで、この2日目はSiMとの対バン。
ツアー全公演に申し込んだ坂本慎太郎のチケット、おとぼけビ~バ~の東京公演=11月15日(金)リキッドルームと同じ日の、岡山YEBISU YA PROが当たってしまった。なので、おとぼけビ~バ~は、ファイナルの大阪まで行くことにしたのだった。味園ユニバース、閉まる前にもう一回行っておきたかったし。
というわけで、まずSiM。1曲目の「DO THE DANCE」を終えたところでMAH、オーディエンスに「元気ですかー!生きてるかー!」と問いかけ、「オーッ!」と歓声が戻ってくると「じゃあ、死ねー!」とデス声で叫んでから「かかって来ーい!」。次が「KiLLiNG ME」だったのでそう叫んだんだろうし、SiMのライブでは恒例なのかもしれないが、思わず爆笑した。間と言い回しがあまりに絶妙だったもんで。
それ以降も、歌も演奏も含めて、よく「オーディエンスを掌に乗せる」とか言うけど、あれってこういうことを言うんだなあ、とつくづく思わされるパフォーマンス。
後半のMCでMAH、こんな話をする。おとぼけビ~バ~と初めて対バンした時から、メンバーみんな打ち上げに来てくれた。でも開始から15分するとサラダが出てくるじゃないですか、その瞬間ピリッとして……みんな爆笑(※おとぼけビ~バ~には「サラダ取り分けませんことよ」という曲があるのです)。
そしておとぼけビ~バ~。何度か観ているが、自分が今まで観た中で最高だった。観るたびに、聴くたびに思うが、このバンド、歌と演奏=ギターとベースとドラムの間に、本当にブレがない。演奏のグルーヴ自体が合っている、という以前に、この歌だから、この歌詞だから、このフレーズでこのリフでこのリズムなんです、というふうに、4人がやっていることすべてが必然だけでできている感じ。
アンコールの1曲目「もうその話きいた」では、ひろちゃんの代わりにSiMのSINがベースを弾いた(ちゃんと青いワンピースを着て)。
その次は、新曲「めんどいだるいねむいしんどい体調が良い日がない」を披露。「家にいるのにすでに帰りたい」というキラーフレーズあり。
この曲を終えてステージを去ったが、ダブル・アンコールを求める声に応えてもう一度登場、また新曲。「ニューアルバムはまだですか」という曲で、ファンにそう訊かれるのがダルいので作ったそうです。で、曲を終えて、去って、また出て来て、2曲やって、あっこりんりんがマイクを床に投げつけて去る。またコール、また出て来て1曲やって、あっこりんりんがマイクを床に投げつけて去る。またコール──というのを、6回ぐらいくり返して、終わった。

  • 兵庫慎司

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    兵庫慎司

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