フジジュンのライブ終わったら、ど~する? #7 「これまで触れる機会のなかったジャンルの本物たちに生で触れ、終わった後に誰かに語りたくなるイベント」WALK THIS WAY@2022年2月5日 柏PALOOZA

コラム | 2022.02.16 18:00

Photo:にしゆきみ

その日、「え、柏って北千住乗り換え一発で行けちゃうんだ。意外と楽じゃん!」なんて言いながら、俺と息子の壱(高1)は半蔵門線から常磐線に乗り換えて、千葉・柏へと向かっていた。

2月5日(日)柏PALOOZAで行われた、PON主催のイベント『WALK THIS WAY』。過去5回行われ、今回で6回目の開催となるこのイベント。「地元・千葉を盛り上げたい、とにかく楽しいことしたい!」 という主催者の熱意のもと、本当に好きな人に声をかけ続けた結果、事前の座談会で「『このイベント、変態すぎるだろ!』と思って、やるしかないなと思った」と般若が語っていたように、他に類を見ない変態イベントへと成長した(笑)。

この日の出演者はハルカミライ、さらば青春の光、般若。パンク、お笑い、HIPHOPと各々のシーンで大活躍する本物たちばかりで、みんな最高にカッコいいし面白いし、それぞれが大好きだというPONの気持ちはよく分かるが。「みんな好きだから一挙に集めよう」という発想が、ヤバいし面白い(笑)。開演前、柏PALOOZAの店前にはそんな貴重なイベントを見届けようと、好奇心旺盛で変態なオーディエンスが大挙。ゴリゴリのB-BOYにライブキッズと、趣味嗜好も年齢もバラバラな客層を見ながら、「この人は誰目当てで来たんだろう?」なんて想像するだけで面白かったし、このラインナップと幅広い客層がどんな化学変化を起こすのか? と考えると、イベントへの期待は高まるばかり。

事前の座談会では出順の話からトリの押し付け合いとなり、読者が当日の出演順を当てる「WALK THIS WAY 出演順当て3連単クイズ」も開催されたが。出演順はイベントが始まるまで、本当にシークレット! 開演時間となり、前説でステージに登場したPONが「無事、開催出来ました!」と開催の喜びを語り、「出演順は内緒です。全部楽しんで下さい!」と告げると、「どの順番でも絶対楽しいイベントになるはず」という信頼もあるのだろう、オーディエンスから期待に満ちた拍手が起きる。また、「事前の出演者座談会を読んだ人?」という質問に7割の人が手を挙げてくれたのも嬉しかったし、座談会からの流れも含め、このイベントを思い切り楽しもうとするみんなの気持ちがなにより素晴らしいと思った。

主催者 PONによる前説

そしてステージの幕が開き、ついに最初の出演者がステージに登場。特攻隊長となるトップバッターは、ハルカミライ! BGMが上り、飛び出すようにメンバーが登場。楽しそうな笑顔の橋本学(Vo)が「やらかそうぜ!」と叫ぶと、ドガシャーンと爆音を鳴らしてライブがスタート。狭いステージを自由に暴れ回りながら「君にしか」を披露すると、「今日はどんな空気になるのか、俺も誰も分からない。でもたぶん今日、いい日になると思うよ! 俺はそんな予感がしてる」と笑う学。その予感通り、勢い溢れる歌と演奏、パフォーマンスにオーディエンスの拳が上がり、序盤から強烈な熱気が生まれていた会場。「完全に「混ぜるな危険」の科学の授業だったら、混ぜてボンで大失敗みたいな日ですけど、ライブハウスの爆発は大成功だと思います。ハルカミライだ、付いてこい!」と煽ると、圧倒的なエネルギーを放ちながらライブが加速度を増していく。「QUATTRO YOUTH」、「PEAK'D YELLOW」と続くと、「あぁ、思い切りシンガロング出来たら、雰囲気も全然違うんだろうな」なんて思ってしまうが、「春のテーマ」、「それいけステアーズ」のようなミディアムテンポの曲をじっくり味わえるのは、このタイミングだからこそ。たっぷり感情込めた「世界を終わらせて」でオーディエンスの心をガッツリ掴む中、ふと横を見るとハルカミライのライブを初めて観た壱が、真剣な表情でステージを見ながら、感動と興奮で肩を震わせているのが分かる。あ~、連れて来て良かった! ラストは「行けんのか? ここで行かなきゃ男じゃねぇよ」と、ロックバンドの意地と誇りと覚悟を歌った「僕らは街を光らせた」から、希望溢れる「ヨーロービル、朝」でフィニッシュ。オーディエンスをばっちりブチアゲて、特攻隊長の役割をしっかり果たしたハルカミライ。『WALK THIS WAY』にガッツリ爪痕を残して、ステージを後にした。

ハルカミライ

転換時間を挟んで幕が開くと、ステージ上には居酒屋のセット。続いての登場は、さらば青春の光。『キングオブコント2017』でも披露した居酒屋コントが始まると、空気が一変。ハルカミライの熱狂ライブが終わったばかりとは思えないほど、一瞬で会場を自分たちの色に染め上げ、どっかんどっかんとフロアを沸かせる。やっぱ芸人ってスゲェな、カッコいい! ネタ終わり、オーディエンスの拍手に一礼して、改めて自己紹介をする二人。「誰? 俺らをハルカミライの後にしたの?」と愚痴って笑わせながら、「今日はコントの合間にトークをしながら、ステージ上で次のネタの衣装に着替えます」と斬新すぎるライブの説明をして、フリートーク。森田哲矢が「僕、ハルカミライの学くんに顔が似てるって言われることがあって。僕を綺麗にしたのが学くん、もっと綺麗にしたのがCreepy NutsのDJ松永やって言われます」と笑わせたり、バンドマンを題材としたコントでハルカミライや般若の曲名を引用したり、ハルカミライや般若のファンに親しみや親近感を感じさせるサービス精神も一流芸人ならでは。さすがです! 持ち時間をフルに使って、4本のネタとトークでたっぷり笑わせて、大きな拍手に包まれて深々とお辞儀する二人の姿はロックスターにも負けないカッコ良さだった。

さらば青春の光

そしてこのカオスなイベントのトリとして登場したのは般若。真っ赤な照明に包まれ、重厚なトラックに乗せたどっしりと貫禄あるラップで観る者を圧倒した「INTRO」でライブが始まるとヒリつく緊張感が生まれ、これまた会場の空気を一変。フロアを見ると最初は唖然としていたライブキッズがビートに身体を揺らし始め、曲終わりには完全に心掴まれて大きな拍手を送っていたのがすごく印象的だったし、そこにこのイベントの面白さと醍醐味を感じた。<連れてってやる イカれたショウへ>と歌う「理由」から、<今日に至ってはハルカミライともさらば青春の光とも友達だよ 知ってる俺のこと!?>とアドリブを噛ませた「寝言」とこの日にぴったりな曲でライブを本格スタートすると、もはや般若の独壇場。「変態すぎんだろ、このスリーマン。ヤバいでしょ? 主催のPONって相当頭おかしいでしょ?」とPONへの最大限の賛辞を送り、キレッキレのラップと熱すぎるメッセージで、ノンストップでライブを駆け抜ける。強さと優しさを歌った「大丈夫」、圧巻の高速ラップで魅せた「サイン」、<終わるよりも始まる事を>と前向きなメッセージを届けた「手」と丁寧に力強く言葉を届けると、「凄くないッスか? 今日、柏にこんな集結してるって。しかも何がヤバいって配信とかしてない、秘密結社って感じが最高じゃないですか?」と嬉しそうに語った般若。<俺等は絶対うまくいく>と願うように祈るように歌った「うまくいく」から、フリースタイルでいまの想いを届けると、ラストはたっぷり感情を乗せた「あの頃じゃねえ」を届ける。イベントや出演者、そして集まったオーディエンスへの愛と感謝とリスペクトに溢れた般若の熱い熱いライブは『WALK THIS WAY』をしっかり締めくくり、終演後も会場に熱と余韻をたっぷり残した。

般若

ジャンルも世代もバラバラなら、客層もバラバラ。どんな化学反応が起きるかも分からない変態イベント『WALK THIS WAY』だったが。終わってみれば、愛と熱気と笑顔に溢れた、ただただ楽しく素晴らしいイベントだった。柏からの帰り道、般若とさらば青春の光を目当てに来たら、ハルカミライにすっかりやられてしまったウチの壱が、このイベントの面白さとハルカミライに感動した話を熱弁してくれてすごく嬉しかったし、高1という色々を吸収しまくる多感な時期にこのイベントを見せられて本当に良かったと思ったし。壱の話を聞きながら、同じようにお目当て以外の出演者にやられちゃったお客さんが山ほどいただろうなと容易に想像出来た。これまで触れる機会のなかったジャンルの本物たちに生で触れ、自分の視野や興味や価値観を大きく広げて、終わった後に誰かに語りたくなるイベント。それが『WALK THIS WAY』だ。ライブ終演後には、次回の開催も予定されていることも発表。PONの目利きと変態的ブッキングセンスで、間違いない出演者が集う『WALK THIS WAY』次回開催時は、騙されたと思ってぜひ参加して欲しい。

そして、このコラムのテーマでもある「ライブ終わったら、ど~する?」つう話。せっかく柏くんだりまで行ったので、地元民に愛される居酒屋かラーメン屋で一杯やるか、繁華街に繰り出して柏ガールとワイワイしたいところでしたが。まん防期間中&この日は子連れということで断念。あ~、悔しい! 柏駅前の鯛焼き屋さんで鯛焼き買って、駅のホームでもそもそ食べて、壱とライブの感想を話しながら、1時間半かけて帰ってきました。ん~、残念! 『WALK THIS WAY』の次回開催は柏か市川か!? 普段はあまり行く機会のない街で、ライブ終わりに至福の一杯がやれるのも楽しみです!

PROFILE

フジジュン

1975年、長野県生まれ。『イカ天』の影響でロックに目覚めて、雑誌『宝島』を教科書に育った、ロックとお笑い好きのおもしろライター。オリコン株式会社や『インディーズマガジン』を経て、00年よりライター、編集者、デザイナー、ラジオDJ、漫画原作者として活動。12年に(株)FUJIJUN WORKSを立ち上げ、バカ社長(クレイジーSKB公認)に就任。メジャー、インディーズ問わず、邦楽ロックが得意分野で、笑いやバカの要素を含むバンドは大好物。

  • フジジュン

    TEXT・撮影

    フジジュン

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    Nozomi Nakajo

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