GOOD BYE APRIL、4人全員で編み上げた普遍的なポップミュージック。全箇所編成が異なる東名阪ワンマンツアーではフレッシュなグルーヴを

インタビュー | 2024.12.13 20:00

2024年は初の海外公演とBillboard Liveツアーの開催、ヒグチアイや土岐麻子をフィーチャリングしたシングル曲のリリース、「Nobuyuki Shimizu Presents 稲垣潤一×安部恭弘 Special Live with 清水信之」など様々なアーティストのバックバンド、初のドラマタイアップ、11月のメジャー1stフルアルバム『HEARTDUST』のリリースと、精力的な活動を繰り広げているGOOD BYE APRIL。その勢いは年末年始も止まることなく、12月19日には渋谷DIVEで開催される「DISK GARAGE presents 共鳴レンサ vol.53 Supported by DOBEATU」の出演が決定しており、2025年1月からは東名阪を回る「ONEMAN TOUR 2025 "HEART PORTRAIT"」の開催が予定されている。このワンマンツアーは全公演で演奏編成が異なるそうだ。
メジャー2年目でさらにクリエイティブの幅を広げている彼らは、どんな心境のもと音楽と向き合っているのだろうか。新宿でのインストアライブに向かう前の4人をキャッチし、アルバム『HEARTDUST』の制作やライブへの思いを語ってもらった。

自分たちがいちばんいいと思う音楽を作ったことでポップスとしての強度が上がった(倉品)

──メジャー1stフルアルバム『HEARTDUST』、とてもロマンチックでフレッシュな作品だと感じました。2020年の『Xanadu』と2022年の『swing in the dark』で突き詰めていたシティポップやニューミュージックを血肉にしたうえで、普遍的なポップスを実現させた作品なのではないかと思いましたが、皆さんとしてはいかがでしょうか。
延本文音(Ba)これまで作ったフルアルバムで、いちばんポップス然としていると思いますね。シングル曲が多いぶんアルバムに活気もあるし、同時にシングル曲がすごくリラックスしているように聴こえるんです。勢いもあるけど収まりもいいし、シングル曲たちの肩肘張らない姿が見られたのもうれしかったですね。
吉田卓史(Gt)『HEARTDUST』は今までにいろんなところを通ってきたことをあらためて感じられたアルバムでもあるんですよね。1stフルアルバムの『ニューフォークロア』にも自分たちが心地いいと感じていたチューリップを代表とする70年代のポップスの要素があって、ポップスという一貫したものはありながらも『Xanadu』で一旦マニアックな方面に行ってみたり、それを踏まえて『swing in the dark』を作って。いろんな経験から吸い取ったポップスの濃い要素を集約したようなアルバムですし、それがナチュラルにできたと思っています。
つのけん(Dr)純粋にすごくいいアルバムができましたね。自分たちの音源を聴くタイミングはライブ前の確認くらいだったんですけど、このアルバムは自然と再生してしまうんです。僕はJ-POPがすごく好きなので、そこに通ずるものができた感覚があるんですよね。日常に溶け込んで寄り添ってくれる楽曲が揃ったと感じます。

倉品翔(Vo/Gt/Key)

──『swing in the dark』までは、シティポップやニューミュージックに造詣が深い人たちも唸り高揚する、良質な楽曲が生まれていた印象があります。ですがメジャーデビュー以降の楽曲は、そうでもない人たちも巻き込むパワーがあるんだなと『HEARTDUST』を聴いて感じました。
倉品翔(Vo/Gt/Key)普遍的なポップミュージックは、僕らの本質的な意味でのやりたかったことだったんですよね。『Xanadu』で今までに着たことがない服を着るような制作をしてみたり、これまでのいろんなトライを経て得た自分たちのサウンドを活かしたうえでポップミュージックと向き合えました。それはメジャーデビュータイミングで林さん(林哲司)とご一緒したことも大きいですね。
延本だから本当にいいタイミングでメジャーデビューしたなと思うんですよね。自分たちに行き詰まりを感じているときにご縁があって『Xanadu』で大きなシフトチェンジをして、コロナウイルスの影響を逆手に取ってストリーミング経由で世界の市場に出られないかと考えて『swing in the dark』では洋楽も意識して……そういう動き方はインディーズならではだと思うんです。メジャーでこれだけ健やかな気持ちでお茶の間を意識した制作ができたのは、林さんとの出会いもそうですし、『Xanadu』と『swing in the dark』を作ったことも大きい気がしていて。すごくいい流れでここまで来れたと思いますね。
倉品メジャーで活動をすると今まで以上にいろんなところで自分たちの曲が流れる機会が増えるので、必然的に「そういうところで流れる曲はどんなものがいいのかな」と考えることになるし、その結果自然と普遍性に行き着いたんですよね。メジャーデビューをするから普遍的なことを求めたのではなく、ちゃんと自分たちで意味を見出して自分たちがいちばんいいと思う音楽を作ったことでポップスとしての強度が上がった。それがうれしいんです。

吉田卓史(Gt)

ギターが弾けないギターソロ愛好家(つのけん)から、ギタリストでは出ないアイデアが出てくる。天井が見えてない意見って面白い (吉田)

──アルバムは林さんとの共同作曲の「Love Letter」で幕を開け、3曲目には林さんが作曲を担当した「BRAND NEW MEMORY」と、頭に林さんテイストのある楽曲が集中しています。その絶妙な仲介役を担うのが2曲目の「CITY ROMANCE」なのではないかと思ったのですが、いかがでしょうか。
倉品そんなことまったく考えてなかった(笑)。たぶん聴いてくださる方々は、GOOD BYE APRILそのものに林さんイズムを感じてくださっている気がしていて。だからこそ林さんと一緒に作った曲に、他の曲たちが見劣りしないように意識を払いましたね。
延本「BRAND NEW MEMORY」も「Love Letter」も、人の手が入っている気がしないくらいに自分たちに馴染んでいるんです。それはわたしたちが前々から林さんの作る曲が好きで、林さんが引っ張っていくというよりはわたしたちの中に入って制作をしてくださったからだと思うんですよね。
倉品「BRAND NEW MEMORY」は絶対3曲目がいいだろうなと思ったのと、「Love Letter」も「このベースとドラムのイントロで始まるアルバムすげえかっこいいだろうな」と1曲目に置いて、じゃあ間に何入れようかな?とメンバーで話して「CITY ROMANCE」に決めて。
延本「CITY ROMANCE」は80年代後半から90年代のアニソンをイメージして作った曲なんです。当時のアニソンは『幽☆遊☆白書』の「微笑みの爆弾」みたいにフュージョンっぽいテイストとポップスが融合した曲が多かったり、そういう曲をカバーしてほしいという声を頂くこともよくあって。わたしたちも一時期CASIOPEAのライブ映像をずっと観ていた時期もあったので、遊びのような感覚で作りました。
倉品最初はシングル候補曲を作るつもりでフュージョンを取り入れたんですけど、シングルよりはアレンジで遊んで振り切ったほうが面白い曲になるなという話になったんですよね。スタジオでいろいろパーツを組み替えたり、サビを作り変えたり、間奏をめっちゃ長くしてみたりしていくなかで、このかたちに落ち着きました。
吉田あの時代のフュージョンを取り入れたアニソンの雰囲気に合わせるならギターソロも終盤速弾きっぽくなる定番の展開を入れたらわかりやすいと思ったし、いま最大限にできることを瞬発的に取り入れましたね。あと、僕がギターソロを作っているときは、だいたいつのけんが先生みたいに横にいて「こここうしたら?」「これとこれ合体させたら?」みたいにアイデアをくれるんです。
つのけんもともとギターソロ聴くのすごく好きなんです。だから頭にはいろんなアイデアが浮かんでくるんだけど、ギターが弾けないからそれを音にはできないという(笑)。
吉田ギターが弾けないギターソロ愛好家だから、ギタリストでは出ないアイデアがいろいろ出てくるんですよ。「確かにめっちゃいいけど、それ弾くの無理やで!」と思うことも多いけど(笑)、天井が見えてない意見って面白いんですよね。「こういうことはできないだろうな」という前提の上に提案されるよりは、不可能なことをパッと言われたほうが「じゃあこんなふうにしてみたらいいんじゃないかな」と新しい発想が生まれるので面白いです。頭3曲ギターソロが続くんですけど、どれもつのけんのアイデアがちょこちょこと反映されていますね。
倉品全員が全部の場所に関わるやり方をずっと続けて来たんですよね。だから今回も、全曲そんなふうに作っているんです。
──自分の担当する場所以外にも触れられると、より楽曲への愛着も湧きそうですよね。
延本やっぱりバンドは、ジャンルや曲調によって演奏メンバーを変えることはできないから、自分の限界を超えるには誰かの知恵を借りる必要があるんですよね。4人ともいろんなものを吸収できる資質があるし、いろんなことやってみたい精神も強いので、ずっとこのやり方が成立しているのかなと思います。
倉品1個の手札だけでずっと続けていると出す曲も出すアルバムも同じテイストになってしまって、面白くないなと思っちゃうんです。作品ごとに全然違うコンセプトやアプローチをしていいし、確固たる個性があれば全然違うアプローチをしてもその人の作品になるはずで。せっかくバンドをやっているならメンバーのアイデアは取り入れたいし、バンドメンバー以外の人のテイストが入ることで自分たちの伸びしろが生まれて、同時にGOOD BYE APRILの音楽が成立している状態がいちばんかっこいいと思うんですよね。
延本だからほんとうちらはいつまでも自分たちを追い込んでいくよね(笑)。
吉田わかる。どんどんハードルは上がり続けてる(笑)。
延本でもそんな状況を4人全員で同じテンションで走れているのはすごくいいことだなと思います。

公演情報

DISK GARAGE公演

GOOD BYE APRIL ONEMAN TOUR 2025 “HEART PORTRAIT”

2025年1月25日(土)名古屋・HeartLand《Thank you SOLD OUT!》
【Support】はらかなこ(Key)

2025年2月1日(土)大阪・Music Club JANUS
【Support】藤田淳之介 from TRI4TH(Sax)

2025年2月11日(火祝)Shibuya WWW X
【Support】はらかなこ(Key) / 藤田淳之介 from TRI4TH(Sax) / 織田祐亮 from TRI4TH(Tp) / 湯浅佳代子(Tb)

DISK GARAGE presents 共鳴レンサ vol.53 Supported by DOBEATU

2024年12月19日(木)SHIBUYA DIVE
【出演】GOOD BYE APRIL / hockrockb / エルスウェア紀行

チケット一般発売日:2024年11月30日(土)12:00

RELEASE

『HEARTDUST』

Major 1st Album

『HEARTDUST』

2024年11月13日(水) SALE

配信先URL

CD URL
  • 沖 さやこ

    取材・文

    沖 さやこ

    • ツイッター
    • instagram

SHARE

GOOD BYE APRILの関連記事

アーティストページへ

最新記事

もっと見る