2月からツアーをやっているんですけど、今回のツアーの意味を考えていた時にフラッシュアイデアとして「AIに絵を書いてもらって、その世界観をもとに楽曲を作るのはどうだろう?」というのがはじまりです。1曲目の「Storyteller」は伊東歌詞太郎の作詞・作曲、2曲目(「senseitoseito」作詞・作曲/タナカ零)、3曲目(「Virtualistic Summer」作詞・作曲/烏屋茶房)、4曲目(「STARLIGHT」作詞・作曲/マキシコーマ)は作家の方にお願いして。1曲目の「Storyteller」は表紙、あとの3曲では、自分では描かないであろうストーリーを紡ぐという構成ですね。
他の曲もそうなんですけど、クリエイターの方には「とにかくあなたらしい曲にしてください」とお伝えしました。タナカ零さんはアニメの楽曲などで活躍されている方で、(アニメ作品の)テーマや物語、歌い手のキーやテクニックに合わせて作ることが多いんですけど、今回はそうじゃなくて、好きなように作ってほしい、と。僕は今、どんなキーでも歌えるし、どんなタイプの楽曲でも表現できる状態であると思っているので。
そうなんですよ(笑)。今までもそうだったんですけど、最初は「これ歌えるのかな。でも、やるしかないな」と思っても、レコーディングやライブに向けて毎日歌っていくことで、強制的なレベルアップにつながるし、最後は乗り切れるんですよ。「senseitoseito」もそうで。ライブでもしっかり表現できたし、息継ぎがあまり要らない体になっていくっていう。
ありがとうございます。曲を作ってくれた烏屋さんは「お題があったほうが作りやすいんです」というタイプの方で。まずはお互いに気になっているものを3時間くらい話したんですけど、メタバースの話でめちゃくちゃ盛り上がって。この曲、1月のリリースなのに夏の歌じゃないですか。現実が冬だったとしても、メタバースの世界ではどこにでもいける。そこに“海”“恋愛”という要素を加えて、現実とメタバースがオーバーラップしている状態を表現してるんですよね。
これも自分では絶対に作れない楽曲ですね。この曲は構成やアレンジがすごく面白くて。J-POPはAメロ、Bメロ、サビという進行が主流じゃないですか。サビのメロディがいちばん高くて、言葉数も多くなる傾向があるし、僕もそれをやりがちなんです。でも、海外はヴァース(平歌)とコーラス(サビ)という構成がほとんど。最近の(アメリカの)ビルボードTOP100に入ってる楽曲を聴くと、オケのテイストはずっと変わらなくて、ハーモニーの重ね方とかシンセの入れ方でサビ感を出している曲が多いんですよ。「STARLIGHT」もそういう形に近くて、オケの音数がいちばん薄いのがサビなんです。メロディの休符もサビがいちばん多くて。そういう曲をライブでやるのはかなりチャレンジだと思うんですけど、そこもしっかり表現できてますね。
すごくいいです。ただ、最近はあまり(オーディエンスの反応や受け取り方を)意識しなくてもいいのかなと思っていて。言い方が難しいんですけど、お客さんを盛り上げたいとか、感動してほしい、泣かせたいと思うことって、おこがましい気がするんですよ。そういう意識とか考えとは離れたところにあるべきだと思うんです、ライブというのは。自分は器に過ぎないというか、もっと大きいものが僕の体を使って音楽を鳴らしている感覚があるんですよ。「もっと上手くなりたい」とか「表現の幅を広げたい」という感じで歌うのもやめて、とにかく強度の高い器にならないといけないなと。そうすることでさらに最高なアートをお客さんに提示できるし、それをどう受け止めてもらえるかはこちらが提示することではないのだろうな、と。
最近は“自分が歌っている”という感覚もなくなってきて(笑)。「こうやって歌おう」というコントロールもしていなくて、「へえ、今日はこういう表現なんだ」「こんなメロディやリズムを出すんだな」って自分で楽しんでいる状態なんです。当然どのライブもぜんぜん違うし、すごく面白いですね。ライブに来てくれた方から「あなたの音楽で救われました」と言ってもらえることもありますが、それはもう望外の喜びなんですよね。「これだけ幸せに音楽をやらせてもらっているのに、さらにそんなことまで言ってもらえるんですか?」という思いです。