アルバムにつながっているのは間違いないですね。この3枚のシングルは“今、自分が歌いたい曲を作って発表する”というテーマなので、制作した楽曲です。順番は3番目になりましたが、最初に作ったのは、「僕のwonderful world」でした。
世の中が暗い空気に包まれていたこともあって、こんな時だからこそ、サッチモ(ルイ・アームストロング)の「What a wonderful world」みたいな曲を作りたい、僕なりの「What a wonderful world」を歌いたいと思って作ったのが、「僕のwonderful world」でした。その後、「幸せの黄色い風船」ができた時に、3曲の中でこの曲を最初に発表するのがいいだろうなと考えました。
「幸せの黄色い風船」のリリース日には、全国各地で自主的に、“黄色い風船を飛ばそう”という動きがあり、たくさんの人たちが風船を飛ばしてくれました。2番目のリリースとなった「自分じゃないか」は<七つの星>というモチーフがヒントになって作った曲です。もともとは聖書に出てくる言葉で、予言的な文章がしるされています。その内容が印象的で、その言葉に着想を得て制作した曲です。
今の世の中の出来事も考えつつ、同時に、そこに集中しすぎてはいけないという意識もありつつ、自分の中から出てくるものを素直に受け入れようという意識もありました。“こっちに行こうという自分”と“いや行かないという自分”と“受け入れる自分”という、3つの自分の気持ちが入り混じっていました。3つの意識を持って制作したことによって、バランスの取れた作品になったのではないかと感じています。
「太陽と埃の中で」は外から持ち込まれた企画だったんですよ。お笑いコンテスト「G-1グランプリ」の大会テーマソングとして使いたいという話をいただいことがきっかけでした。「PRIDE」も亀田興毅から番組で使いたいという話をもらったのがきっかけです。新たに録るチャンスをいただいて、「太陽と埃の中で」と「PRIDE」をリメイクできて良かったなと思っています。今の自分の年齢の「太陽と埃の中で」と「PRIDE」になりました。
2曲ともテーマは一緒ですよね。僕は、誰かを応援しようという意識で曲を作ることはないんですよ。でもそういう意識とは別に、僕の作った曲を聴いて、「励まされました」と言ってくれる人がいるのはありがたいことだなと感じています。
励ますために作るのではなくて、自分のために作って歌っています。その歌が結果として、共有されているということなんだと思っています。
「太陽と埃の中で」を1曲目にすることで、アルバムが広がるだろうなと判断したからです。あくまでも感覚的・直感的なものですが、なんの躊躇もなく決めました。
リメイクする時って、変化させなきゃいけないという気持ちが強くなりがちですが、そこばかりを強調してはいけないなと思いながらも、今こういうふうにやりたいと感じたことは、素直にやってみようと考えていました。サビ始まりにしたのは、ライブバージョンだったら、こうやるだろうなと思ったからです。サビ始まりの構成はスタジオに行ってから決めました。
人は誰でも、いくつになっても、こんなふうに感じるものなんじゃないかと思っています。満足って経過の中にしかないものだから、瞬間的に感じることがあっても、最終的には満足はしないですよね。
「自分じゃないか」は頭は抑えめで入って、サビでドンといく展開にしようということは考えていました。
もともとは20年くらい前に作った曲なんですよ。CHAGE and ASKAでやろうと思っていて、実際に横浜アリーナでやったことがあります。「新曲できたよ。かっこいいんだ。でもまだ歌詞ができてないので、ラララでやるから聴いて」と言って、やりました。でもしばらく時間がたってみると、“何かが違う”と感じてしまう自分がいました。“これはサビの展開が違うんだな。直球で作ってもおもしろくないな”と考えて大幅に変えました。
「組曲みたい」という感想もいただきました。この手の曲は、男性っぽさがあるので、男性が好きなのかなと思っていたら、女性も好きみたいです。ロックとポップスの境目はないと思っていますが、「ASKAロック」と言ってくれる人もいます。
言葉のとおりですよね。“一体俺はどうすればいいんだ”という違和感を描きました。
2年ほどまえにYou Tubeで数日にわたって制作の過程を公開した曲なんですよ。3日目に玉置浩二がなだれこんできて、玉置がアドリブで歌った映像をあげたら、再生数が300万を超えました(11月24日現在で387万回)。その時のメロディはアドリブでしたが、さらに突き詰めて構築したら、サビのメロディと歌詞とがうまくハマりました。
僕はリビングか仕事部屋で歌詞を書くことが多いんですが、生活音があるんですね。その音がきっかけになることがあって、この曲も流しの水の音というモチーフから広げて作りました。この曲は最後のほうで半音上げています。これまでは半音上げはほとんどやっていなかったんですが、この曲はこの展開がふさわしいと判断しました。同じメロディでも半音上げるだけで気持ちも変わるし、変化もでます。これは今後もありだなと思いました(笑)。
頭のピアノを四つ打ちで行ってるのは、何気ない入り方にしたかったからです。こういう曲を大上段に行くと、曲の印象がそっちに向かってしまうので、頭はメロウに入って、サビはドンと大胆に違う世界に持っていくのがいいかなと考えて、歌詞も展開に合わせて書きました。この曲のドラムは菅沼孝三(ASKAの盟友のドラマー。2021年11月に逝去)が叩いています。
2年ほど前ですね。この曲が孝三の最後のレコーディングでした。その時は気がつかなかったんですが、マスタリングをしながらミュージシャンクレジットを眺めている時に、孝三のことと<僕が生まれたこと それだけさ>という歌詞とがシンクロする瞬間がありました。
同じところにいられない性分であることは自分でもよく知っています(笑)。変化がないと、ダメなタイプ。まわりから、“ジェットコースター”と言われていて、自他ともに認めています(笑)。「NEVER END」という曲の中にも、<変わり続けることでしか 生きて行くことができなくってる>というフレーズがあります。この性分は変わらないですね(笑)。
配信でリリースしたときには、ホーンセクションは抑えめだったんですが、マスタリングの時に、音を上げました。変化をつけたのは、それくらいですね。