「幸せの黄色い風船」「笑って歩こうよ」「歌になりたい」などの近年の名曲、「はじまりはいつも雨」「月が近づけば少しはましだろう」などソロでの代表曲、「PRIDE」「higher ground」「なぜに君は帰らない」などCHAGE and ASKAの代表曲などなど、個々の曲の相乗効果によってもたらされる、起伏に富んだ流れは圧巻だ。ASKAとメンバーの絆の深さにも、何度も胸を揺さぶられた。この作品について、さらには10月29日に東京国際フォーラムで開催される「ASKA Premium Symphonic Concert 2022 -TOKYO-」について、ASKAに話を聞いた。
今しか作ることのできない作品になりました。菅沼孝三との別れが、今回のツアーに大きな影響を与えたのは間違いないですね(注・ASKAの盟友でもあるドラマーの菅沼孝三氏が2021年11月に逝去し、同じドラマーである娘のSATOKOがツアーに参加した経緯がある)。孝三から娘のSATOKOに、「ASKAを頼む」との遺言があって、SATOKOがスケジュールを調整してくれて実現したツアーでしたから、特別な思いもありましたし、なんとしてもこのツアーをストップするわけにはいかないという意識でのぞんでいました。
はい。ステージに立っている人間だけでも大人数ですし、スタッフも含めると、その数がさらに増えます。その中の一人でも陽性者が出たら、ツアーが止まってしまうので、みんなには、「4か月間、コロナにかからないように、細心の注意をしてください」とお願いしていました。そうしたことも含めて、今しか作ることのできない作品なんですよ。いつもは、ステージの模様を収録した映像を“ライブBlu-ray”という言い方をしていますが、今回の『ASKA premium concert tour -higher ground-アンコール公演2022』は、“アンコールツアーという名前の作品”という言い方がふさわしいと思っています。
実は、映像チェックのために3回観たんですが、その時に、“これは自分一人だけで観るのはダメだな、メンバー全員で観たいな”と思ったんですよ。コロナ禍であり、満足な打ち上げをやっていませんでしたから、打ち上げも兼ねて、みんなに声を掛け、場所を借り切って、大きなスクリーンに映して全員で鑑賞しました。彼らは一流ミュージシャンなので、いろいろな場所で活動していますし、忙しいスケジュールの中だったのですが、ほとんどのメンバーが集まってくれました。
1曲終わるごとに拍手ですよね。彼らはステージの上からお客さんを観ているわけですが、お客さんとなって、自分たちの演奏を観たことがなかったわけですから。特にストリングスチームは後ろにいたので、僕やメンバーの後ろ姿しか観てないわけですよ。ライブ映像を楽しんでくれて、とてもいい時間になりました。
こんなに再会がうれしいのかってくらい、楽しかったです。その時、来年にかけて僕に起こるだろうことをメンバーに伝えました。
まだ具体的にはなっていないことなので、くわしくは言えないのですが、「もし、こういうことが僕に起こったら、その時は頼むよ」とお願いしました。
そうなったらいいなと思っています。
何よりも歌っていて、楽しいんですよ。三位一体のステージ、ひと言でいうと、味をしめてしまいました(笑)。ストリングスは、スタジオでレベル調整しながら録音することによっていい音のバランスが成立するというのが、一般的な認識です。ステージの上でバンドの音と一緒に鳴らしてしまうと、音のディテールがかき消されてしまうからです。でも今回、もしかしたらバイオリンに傷がつくかもしれないのに、彼女たちはピックアップマイクを快く受け入れてくれました。彼女たちの協力があったからこそ、バンドとストリングスを全体のアンサンブルとして融合することができました。三位一体は全員で作り上げたものですね。
さまざまなシチュエーションで楽しんでもらえたらということで、この形態にしました。室内で楽しみたいならばBlu-rayで、車の中で楽しむならばライブCDで楽しむこともできますしね。今は機材が発達しているので、マスタリングの仕方でBlu-ray用とCD用とを作ることができますから。
これまでは、CHAGE and ASKAの作品も含めて、ライブCDはそんなには出していないんですよ。というのは、僕自身、スタジオでレコーディングして作り込んでいくことに対する興味のほうが強かったから。でもライブCDであっても空間も含めて作り込んでいく要素がありますし、ニーズがあることも感じていたので、映像と音源、2つの形で楽しんでもらうのもいいかなと考えました。