2022年6月18日(土)Spotify O-EAST / Spotify O-WEST / Spotify O-nest / Spotify O-Crest / duo MUSIC EXCHANGE / clubasia / 7th FLOOR / LOFT9 Shibuya / HARLEM PLUS / 東間屋 / 他配信
エレキコミックのやついいちろうが、渋谷の複数のライブハウス/クラブで、毎年6月の第3週末の土日に開催してきた『YATSUI FESTIVAL!』(以下『やついフェス』)が、今年2022年の6月18日(土)・19日(日)で11回目を迎えた。
コロナ禍になった直後の2020年は、無料生配信・無観客で行われた。2021年は会場数とチケットの枚数を抑えて有観客にし、無料生配信・配信のみのステージもありで開催された。そして2022年は、ステージ数も入場者数も昨年よりも増やしながら、無料生配信もありでの開催。この日は名古屋で『やついフェス』と連動する『NAGOYA GIRLS FESTIVAL』も開催され、名古屋を拠点とするアイドルグループ10組が出演した。
開催発表の時、やついいちろうは、フェスのオフィシャルサイトに「まだまだ安心できる状況ではありませんが、より前のやついフェスの形に近づけていきたいと思っています」と書いたが、まさにそれを実現する2日間になった。なお、無料生配信のために2020年から始めたクラウドファンディングは、今年2022年は開催2日目の昼頃に、目標金額の1000万円に達した。
メインステージのO-EAST(配信はニコ生1)は、開場の11:30と同時にやついいちろうのDJでスタート。自身の曲「トロピカル源氏」をかけても盛り上がらないことに腹を立て、お客さんを説教して曲をかけ直す……というおなじみのくだりを経て、開会宣言。その言葉が「無事開催できたぞ!」であったことに、当日までの心労がうかがえる。
やついに続くトップのライブ・アクトは高城れに。「あと3日で29歳です!」等のMCをはさみながら、全開の笑顔で4曲を披露し、フロアが紫に光るペンライトで埋まる。彼女の次も毎年恒例、渋さ知らズオーケストラ。昨年と同じく通常よりメンバーを約半分に絞った小規模編成で(通常は40名前後)、妖しくも華やかなステージを繰り広げる。
duo MUSIC EXCHANGE(LINE LIVE)はMega Shinnosuke、O-WEST(ニコ生2)はcinema staff、O-nest(ニコ生3)は秋山璃月、7th floor(ニコ生4)は高井息吹、club asia(YouTube)はアップアップガールズ(プロレス)で、1日がスタート。
ワンダフルボーイズのSundayカミデが、地元大阪で20年以上続けているパーティー「Love Sofa」に丸1日を任せるO-Crest(YouTube)のトップは、彼とやついのユニット、ライトガールズで始まる。1曲目「またミラクル」のラップを、やついが失敗して曲を止めてやり直したり、生配信されていることをまったく意に介さず、カミデが赤裸々に性癖を晒すMCで爆笑をとったりしながら、5曲を披露した。
O-EASTとduoで、音楽と交互に設けられている「お笑いコーナー」には、今年も、ベテランも新人も、テレビでおなじみの顔もそうでない顔も、漫才もコントも落語も含め、さまざまな芸人たちが出演する。
O-EASTのサニーデイ・サービス終わりの時間では、ナイツ、エレ片、ゆってぃの3組がネタをやる。ナイツは得意ネタの「英語漫才」、エレ片は今年2月のコントライブ『燃えろコントの人』で下ろした「大人気アーティスト・かたかた」のコント。が、それでなくても時間が押していた上に、アドリブでさらに押したため、ネタの途中でやつい、「ゆってぃ、1分な!」と叫ぶ。ゆってぃ、それを拾って、出てくるなり「1分で帰るよー!」というひとことから始める。
毎年出演しているおなじみのアーティストが多い『やついフェス』だが、2022年は両日とも、初出演のアクトも増えた。この18日(土)では、duoに出演したNo Busesや、O-nestのゆうらん船、club asiaに出た江沼郁弥などが、それに当たる。
No Busesはトリプル・ギターで爆音を放つ新世代のガレージ・バンド。ゆうらん船はキーボードとピアノがメンバーにいる、フォーキーでサイケデリックな歌を聴かせるバンドで、2019年のフジロックの「ROOKIE A GO-GO」に出演している。
サポートのオヤイヅカナルとふたりでステージに上がった江沼郁弥は、バンド時代(plenty)の頃も、2018年にソロで活動を始めてからも含めて、今回が初である。
やついに「フェスやれば?」と言った張本人であり、このフェスの「みんなの歌」として1日の最後に歌われる「月が今夜笑ってるから、ぼくらそっと東京の空を見上げる」を書いた人であり、言うまでもなく毎年出演している、つまりやついに次ぐこのフェスの支柱である曽我部恵一のサニーデイ・サービスは、13:40からO-EASTに登場。解散前の時代から3曲、近年のレパートリーから5曲をプレイした。10分以上にわたる「セツナ」の熱演に、フロアから大きな拍手がわき起こる。
また、そのサニーデイ・サービスの田中貴、渋さ知らズの鬼頭哲&渡部真一、玉置標本による「ラーメントーク」などのトークコーナーがふんだんに設けられているのも、『やついフェス』の魅力のひとつだが、今年は新しくLOFT9(配信はLINE RECORDS)にて『地下芸人トーク』なるイベントが催された。
チャンス大城がお勧めの地下芸人たちを呼び、トークと2分ネタでエレ片の3人にプレゼンする、という企画。86歳の母親と64歳の息子のコンビ「おとんがぽっくり残されたうちら」や、地獄の滑舌だが歌う時だけちゃんと発音できる「インタレスティングたけし」など、強烈な6組が登場し、オーディエンスを戦慄させた。
MCはやついいちろうと堂島孝平、審査員はいとうせいこうと黒柳徹子(に扮したしまおまほ)、バック・バンドはCalmeraで、4組のシンガーが歌を競う、O-EASTの『やついフェススペシャル歌合戦』。この日は井戸田潤(スピードワゴン)+西寺郷太、虹の黄昏+チャンス大城、眉村ちあき、大槻ケンヂが出場した。
井戸田潤が歌に入るタイミングがわからなくて泣き始めたり、虹の黄昏+チャンス大城が氷室京介+布袋寅泰+高橋まことに扮したり、眉村ちあきがひとりで劇団四季の『ライオン・キング』を演じきって拍手喝采を浴びたり、審査の時間をSundayカミデとやついがこのフェスのテーマソング「FESTA!!!」を歌ってつないだり、と、いろいろあった末にMVPに輝いたのは、Calmeraのド迫力な演奏と共に本気の「元祖高木ブー伝説」を聴かせた大槻ケンヂだった。
2021年1月より88risingからリリースを開始、世界デビューを果たした新しい学校のリーダーズは、今年はO-EASTに登場。SUZUKA、連続で出させてもらっていた時期、club asiaで入場規制がかかっていたので、いつかメインステージに出たいと思っていた、と、喜びを露わにする。
先程の「ひとりライオン・キング」と同様にひとりで、バック・トラックとギターを操りながら、全開のパフォーマンスを見せた眉村ちあきは、「私は八代亜紀さんにバトンをつながないといけない、責任を感じていますよ。ぶちあっためていかねえと。あったまってんのかい!」とオーディエンスをあおり、ラストの「大丈夫」の冒頭で「舟唄」をサンプリングした。
自身のバンドを従えてステージに立った八代亜紀は、2017年以来二度目の出演。「おんな港町」「もう一度逢いたい」の2曲を歌ったところでやついがステージに参加してふたりでトーク。「残酷な天使のテーゼ」等のカバー曲も織り交ぜられたセットリストは、「雨の慕情」「舟唄」の大ヒット曲二連打で締めくくられた。
O-WESTは昨年に続き二度目の出演のCody・Lee(李)が、O-nestは初登場のLOSTAGEが、O-Crestはおなじみのワンダフルボーイズが、トリを務める。
O-EASTの締めはDJやついいちろう。自身の「きみはキョンシー」、TRFの「survival dAnce 〜no no cry more〜」を経て今立進と片桐仁が加わり、先日解散を発表した危険日チャレンジガールズの「FUNKY FUN!!!」へ。音源に参加している西寺郷太も、自分のパートで歌いながら登場する。
そしてフィナーレ。残った出演者が総登場し、曽我部恵一の歌とギターを中心に、みんなで「月が今夜笑ってるから、ぼくらそっと東京の空を見上げる」を歌って終了。やつい、曲の前に「全員入ってください、こういうのがやっとできるようになったので」と出演者たちに呼びかけた。