2022年6月19日(日)Spotify O-EAST / Spotify O-WEST / Spotify O-nest / Spotify O-Crest / duo MUSIC EXCHANGE / clubasia / 7th FLOOR / LOFT9 Shibuya / HARLEM PLUS / 東間屋 / 他配信
エレキコミックやついいちろうプレゼンツの『YATSUI FESTIVAL! 2022』(以下『やついフェス』)の2日目は、O-EASTのやついいちろうのDJ→怒髪天のライブでスタート。
やっつんに1回目からお誘いいただいていたがスケジュールが合わなくて出られなかった、11回目でやっと出ることができた、今日はその10年分を全部詰め込もうと思う、10回分の思いを込めて──と、最初のMCで宣言。以降もその言葉どおりの熱いステージングで、オーディエンスを熱狂させる。
そのO-EASTのサブステージは「お笑いコーナー」で使われるが、2日間で唯一の例外だったのが、怒髪天に続いてライブをスタートしたDEATHRO。「ハロー渋谷! 紹介に預かりました、俺が『やついロックフェス』初登場、from神奈川県愛甲郡愛川町、県央ナンバーワン・ロックボーカリスト、DEATHRO!」という自己紹介からスタート。ステージが狭く感じるほどアクティブなパフォーマンスを見せる。
隣のduo MUSIC EXCHANGEのトップを飾ったI’sは、現在タレントとしても活躍中のあのが、2021年8月に結成したバンド。ゆるめるモ! 在籍時は何度も『やついフェス』に出ているが、バンドになってからは初めて。あの、duoを埋めたオーディエンスに、ギターをガシガシ弾きながら次から次へと曲を放っていく。最初のMCであの、「呼んでくれてありがとうございます、やついさん。よく街で見かけるんです、やついさん。でも声かけないです、悪いと思って。そういう存在なんです」。
O-EASTの二番手、MOROHAのAFROは、DJやトークの会場になっているバー東間屋で、13時から行われた、宮迫博之の焼肉屋「牛宮城」の弁当即売会に行列ができていたことに触れて、「今日は闘いの日でございます。武尊、天心、宮迫、MOROHA、やつい──」という言葉から「俺のがヤバイ」に突入。ラストの「五文銭」の前には、笑顔で「フェスで楽しんでる奴なんて、基本的に俺は嫌いです。大嫌いな皆様に捧げます」と言い、大きな拍手を浴びた。
1日目も2日目も、初登場や二回目の、新しいアクトが増えていることが、2022年の『やついフェス』の特徴のひとつである。と、1日目のレポにも書いたが、それは音楽だけに限らない。「お笑いコーナー」も、最近注目を集めている若手が出演したり、MC担当の芸人が変わったりしている。
O-EASTのMOROHAと忘れらんねえよの間に出演したダウ90000、かが屋など、爆発的にウケているグループも幾つもいた。片や、毎年登場で確実に笑いをさらう、阿佐ヶ谷姉妹、ザ・ギースなども、新しいスタイルのネタにチャレンジしていた。
続くO-EASTの忘れらんねえよの柴田隆浩は、「近況言っていいですか? 女にふられました!」と発表してから「俺よ届け」を歌いきる。歌い終えると「ふざけんなよ! メンバーにも言ってなかったよ、恥ずかしくて!」。ギターのロマンチック☆安田、「そういえば、最近言わないなと思ってました」と、それに応える。怒髪天の増子直純やMOROHAのAFROの、今日のステージ裏での様子を紹介してから、「バンドマンって最高におもしろいんすよ。おもしろくて優しくて、そんな奴らがライブハウスには住んでいるんですね。会いに来てね」という言葉から「この高まりをなんと呼ぶ」、続いて「犬にしてくれ」、そして「最後、新曲やって終わります。『I love you』」と、音源未発表の新曲で締めくくった。
2日目の『やついフェススペシャル歌合戦』は、MCやついいちろうの相方がマキタスポーツに代わり(やつい曰く「堂島孝平くんのマネージャーが「2日間は勘弁してくれ」って)、審査員はいとうせいこうと『トップガン マーヴェリック』仕様のトム・クルーズ(に扮したしまおまほ)。
小沢一敬(スピードワゴン)、ASH&Dコーポレーション(ザ・ギース、阿佐ヶ谷姉妹、ラブレターズの総勢6名)、宮迫博之、戸田恵子の4組が、歌を競った。
蚊の鳴くような声量&異様に狭い声域で、プリンセス・プリンセスの「Diamonds (ダイアモンド) 」を歌い出す度に、何度も「聴こえない!」とやつい&マキタに止められる、という、毎年恒例のやりとりで、爆笑を巻き起こした小沢一敬。ザ・ギース高佐のハープとラブレターズ塚本のアサラト(アフリカの民族楽器のパーカッション)を伴奏に、「残酷な天使のテーゼ」と「WAになっておどろう」をハモリながら歌い踊ったASH&Dチーム、までが常連組。
そして初登場、「私、やっつんには借りがありましてね。5年前の私の還暦ライブの時に、DJを引き受けてくれて、5ステージも付き合ってくださって、その借りを返すために。だから、今日で最後ってことで」という理由でオファーを受けたという戸田恵子。中村中が提供した2007年のシングル「強がり」を超絶な歌唱力で聴かせ、あまりのすばらしさにフロア呆然、歌が終わるとまさに割れんばかりの拍手がO-EASTを包んだ。マキタスポーツ、「すばらしい! よかったねきみたち、ようやく仕事できたね」と、バックを務めるCalmeraをねぎらう。
そして最後は、客前に出ることも、ましてや歌を歌うことも久々すぎて「あかん、緊張がえぐい」と言いながら登場した宮迫博之。やつい&マキタに心配されるほどのガチガチっぷりだったが、アカペラで「全てが僕の力になる!」を歌い始めた瞬間、その圧倒的な声量でオーディエンスを魅了する。ニコ生1の弾幕も絶賛の声で埋まり、結果、MVPに輝いた。
その『歌合戦』と同じ時間のclub asiaでは、初恋の嵐がライブ。メンバーのベース隅倉弘至&ドラム鈴木正敏に、サポートでギター木暮晋也と玉川裕高、キーボード高野勲が加わった編成。ゲスト・ボーカルはセカイイチ岩崎慧とGOING UNDER GROUND松本素生。皆勤で『やついフェス』に出演して来た松本素生は、今年はこのステージで、記録を更新した。
17:20にO-WESTに登場したbetcover!! は、曲によってギターやフルートを使いながら歌う柳瀬二郎を取り囲むように、サポートのメンバー4人がギュッと集まったフォーメーション。オーディエンスみな、ただただ固唾を呑んで耳を傾けるしかない、鬼気迫る……いや「迫る」んじゃなくて「もう鬼」のようなインパクトのステージを見せつけた。
今年初登場のアクトたちの中でも、特にインパクトを残したのが、18:05からO-EASTに登場した22歳のヒューマンビートボクサー、SO-SO。台湾やポーランドのコンテストで優勝するなど、海外でも知られた存在である。
この日はまずひとりで30分、ループステーション→DJで、バキバキのダンス・トラックを放ち、続けて自身もメンバーである4人組のヒューマン・ビートボックス・クルー、SARUKANIによるパフォーマンスで、参加者の度肝を抜いた。
先程『歌合戦』でMVPを獲得した宮迫博之は、O-EAST/19:20からの『お笑いコーナー』にも出演。Hi-Hi、コウメ太夫に続き、エレ片+Hi-Hi上田とのユニットコントに挑む。
コントの途中で突然泣き出して共演者たちを慌てさせたり(やつい「とにかくいろいろ勝手にやる。とにかく楽しくてしょうがないようだ。俺たちは先輩に合わせるしかない」とフォロー)、芝居の合間で「ちょっと待ってくれ! めちゃめちゃ楽しいな!」と叫んだりする。
挙句、アドリブで延々とコントを引き伸ばし、やついに「主催から言いますよ? もうやめてください!」と言い放たれた。
そして、ライブ・アクトの大トリは、今年4月にRYO-Z・ILMARI・FUMIYAの3人体制で再始動を発表、「5ヵ月連続シングルリリース」を宣言し、「Human Nature」「Gentleman」「After the rain」とリリースして来たRIP SLYME。5年ぶり、再始動後は一発目になるライブの場として、『やついフェス』を選んだ、ということである。
サポートで全曲WISEが加わった4人で「楽園ベイベー」でスタートし、「熱帯夜」で終わる全10曲。新曲の3曲も披露。そのうち、2日前にリリースされたばかりの「After the rain」は6曲目に披露されたが、フィーチャリングで参加しているシンガーAmiideは今ロンドンにいるので、彼女のパートを素敵なアーティストが──という紹介から、フレンズのおかもとえみが登場。そのままラストの「熱帯夜」まで、歌とラップで参加する。
RYO-Zによると、4月に再始動を発表した時に、最初にオファーをくれたのがやついだったという。「『やついフェス』の最高のオーディエンスと、やついくんにありがとう!」という感謝の言葉から、ラストの「熱帯夜」に突入した。
RIP SLYMEからバトンを受けたDJやついいちろう、「『トロピカル源氏』で盛り上がらなくて怒る」おなじみのムーヴ等を経て、昨日同様に「FUNKY FUN!!!」で、今立進&片桐仁も加わる。
最後は今日も、残った出演者総登場で、曽我部恵一を中心に「月が今夜笑ってるから、ぼくらそっと東京の空を見上げる」を歌ってフィナーレ。
ステージを去る前に、これから小沢一敬・曽我部恵一・エレキコミックによる『やついフェス打ち上げ サッポロ生ビール黒ラベルで乾杯!』が配信されることなどを告知する、やついいちろう。精魂込めて、心身共に全力で、この2日間に向き合ったことが、ガラガラに枯れた声に表れていた。