今回のツアーは、同じ事務所の気の知れた仲間達同士でやるということが、ひとつのポイントになっていて。普段はバラバラに活動している者同士ですけど、同じ事務所にいるのもあって、ジャンルは違えど仲は良いんですよ。そのなかで、自分達のオリジナル曲はやらずに、日本の名曲、特にバラードを中心にしたカバーで寄り添い合おうと。そこに関しては、洋楽で育った自分としてはすごく新しいというか。新鮮な感覚があったし、中島卓偉のファンからしても新しかったと思うんですよね。それぞれのワンマンライブでも、邦楽だけをひたすらカバーするようなツアーもなかなかないと思うので、そこは企画的に斬新でよかったなと。あと、オケは使わずに、基本的には荒幡亮平くんのピアノ一本で、シンガーが入れ替わるというスタイルもよくて。自分もアレンジにはちょっと関わったんですけど、歌とピアノの2WAYの音しか出ていないという潔さもいいなと思いますね。
いままでは、ライブの後や次のライブのときにファンレターやアンケートをいただいたんですが、こういう状況なのもあって、いまは受け付けられないというのをインフォメーションしてるんですよ。だから、まだ感想をあまり聞けていなくて。それならもうステージ上で、たまに照明が明るくなった瞬間に見えるお客さんの表情を見て判断しようと思うんだけど、みんなマスクしてるじゃないですか(苦笑)。
だから、いまはわからない部分が多いというのが正直な感想ですね。たぶんね、いろいろなアーティストやバンドが最近ライヴを始められてますけど、そこはみんな似たような感覚なんじゃないかな。でも、それよりもまず、いまは僕らができることを最大限やろうと。いまはこれしかできないという気持ちもあるし、コロナの危機を乗り越えるために、もしかしたらライブをやる必要はないのかもしれない。だけど、いまライブをしていることを伝えたいという気持ちもあるんです。
もちろん歌えることは嬉しいわけですし、ライブを開催できるのはスタッフ共々喜ばしいことなんですけど、やっぱりまだバカ騒ぎができるわけではない。でも、その中でできることの最大限をやっていますという想いを届けるという気持ちのほうが強いですね。お客さんがどう思っているのかは、このツアーが終わって、またしばらく経ってから「あのときのツアーが……」というときに、そうだったのかって納得できるところもあると思うんですけど。それよりもいまは、ちゃんとファイナルまで中止せずに、無事に完走できるかという緊張感のほうが正直強いです。
ツアーに関わっているスタッフはその責任を持ってやってますね。でも、それをネガティブに思っているわけではなくて、絶対に最後まで完走してやんぞっていう気合いがステージには出てます。
やっぱりこのツアーに選ばれているシンガーは、僕が言うのもおこがましいですけど、ピアノ一本で充分に歌えるっていうことなんですよね。これは本当に胸を張るべきことだと思うし、観ている人も、ピアノとボーカルの声だけしか出ていないから、わかりやすいというか、判断しやすい。余計なものがない分、いい曲ならいい曲、いい歌詞ならいい歌詞というのがダイレクトに伝わりますからね。もちろんオケを使うのが悪いことではなくて、いまここからもう一度始めるのであれば、一番シンプルなところから始めようと。またこの先に、リズムがプラスされるとか、ギターが付くとか、足し算になっていくのはいいと思うんですけどね。
そこはピアノの荒幡くんとリハーサルの段階から話していたことがあって。ピアノのみだからビートレスではあるんだけど、なんとなく2人のビート感は合わせられるじゃないですか。そこが摩擦しあって、聴いている人がちょっとでもビートを感じられるものにしたいねというのが、実はテーマとしてあったんですよ。全員が全員そうやって同じことをやるのも、僕も全曲そうやって歌うわけにはいかないけど、節目でそういう曲が欲しいよねっていう話はしてました。