もうね、発見だらけですよ。たとえば70年代の音楽って、世間からしてみると歌謡曲だと思われがちなんだけど、アレンジだけ聴くとブラックミュージックの影響が強かったり、すごくソウルチックなものが何曲もあるんですよ。自分はそういう曲が好きだと思って育ってきたし、そういう曲を選ぼうとしている自分もいて。だから、ライヴはピアノと歌でやるんだけど、覚えるために何回も曲を聴いていると、すげえドラムかっこいいなとか、ベースすげえ弾いてるなとか、これはあの時代のあの曲がヒントになっているんじゃないのかなっていうのが見えてきたりして。自分も40歳になったぐらいからソウルチックな曲を書くようになってきてるんですけど、こういうふうにしてみようかなとか、むしろいまはこういうのが新しいんじゃないのかなとか。そういう影響も受けますね。
あと、僕は今回のメンツの中では一番年上で、演者の中には20代前半の子もいるし、お客さんにもいろいろな層の方々がいらっしゃると思うんですよ。そういう方達が曲を聴いたときに、再確認したり、発見したりしてほしいなっていう気持ちもあります。「懐かしいよね」と思う人もいれば、「昔にこんな曲があったんですね」って初めて知ってくれるのもいいし。そうやって自分の国の曲を知って、いい曲だなと思ってもらうことって、すごく重要なことじゃないですか。僕、今回のツアーでは上田正樹さんの「悲しい色やね」とかもやってるんですよ。
あの曲は、自分が幼稚園に入るか入らないかぐらいの頃にヒットしていて、ラジオをつけたらとにかく流れていたから、耳が覚えてたんですけど。あの曲って、歌詞に関西弁が入っているのもあって、どうしても歌謡チックに思われているんだけど、僕はあの曲はソウルだと思ってるんです。だから、お客さんに対して、これは歌謡曲というよりも、日本屈指のソウルナンバーなんだよってメッセージしたい想いもあるんですよね。
関西の僕のファンが事務所までファンレターを送ってくれたんですけど、その子からしたら、「悲しい色やね」は小さい頃にカラオケでよく歌われている歌という印象が強かったみたいなんですよ。関西弁も自分の街の言葉だから、どうしてもそういう気持ちがあったけど、僕が歌っているのを聴いてソウルだって言っているのが一発でわかりましたって書いてくれていて。そう思ってもらえるのが嬉しいし、ようやくわかってきたかと(笑)。そういう楽しみもあるのが、このツアーの醍醐味ですからね。
もうすぐクリスマスシーズンも来るので、全員で歌う曲にそういった季節に合うものを取り入れられたらいいなと思っていますし、セットリストも毎回変えてるんですよ。昼と夜で一曲もかぶらないときもあって。だからもう是非ね、2公演観れる方は観ていただきたいです。どうしてもコロナの時代の中、行きたいけどまだ行く気になれないという方は当然いらっしゃると思うんです。スタッフも我々もケアに関しては徹底していますし、安心して観てもらえるようにすることは責任だと思っていますので。それをちゃんと怠らずにやっているツアーであり、ライブであることは、この場でしっかりお伝えしたいです。もちろん、会場に来たとしても、不安はあって当然だと思うんですよ。誰かが咳き込んでいたら、大丈夫かなと思ってしまったりとか。でも、観終わった後には「やっぱり来てよかった」と思ってもらえるようにしたいなと思ってます。
ありがとうございます。「行きたいけど行けない」というのは、やっぱり気持ち的には「行きたい」ほうが強いと思うんですよね。なので、ぜひいろんな気持ちを跳ね除けて、足を運んでもらえたらなと思います。