アルバム『Human Dignity』を掲げ、現在全国ツアーを開催している摩天楼オペラ。今年1月にサポートを務めていたドラムの響が正式加入し、再び5人編成の完全体となったバンドの今を詰め込んだ快作だったこともあり、各地での熱狂もかなり凄まじいようだ。その様子を話す5人の表情も実に活き活きとしていて、今、バンドがかなりいいモードになっていること、そして、その勢いのまま、ここからさらなる飛躍を見せそうな予感に満ちたインタビューとなった。
──現体制になってから初の全国ツアーを行なわれていますが、現状の手応えはいかがですか?
Vo. 苑
思っていた以上に手応えがありますね。ツアーはいつも、ド緊張の初日から始まって、徐々に良くなっていく感じなんですけど、初日から良かったんですよ。
──初日から良い形で行けたのは、良いアルバムを作れたからでしょうか。
Vo. 苑
それに尽きると思います。お客さんの「楽しみにしてました感」も1曲目から伝わってきたし、「どうやってノっていいのかわからない」みたいな感じがそこまでなくて。僕たちもお客さんたちも掴むのがめちゃくちゃ早いというか。そんな印象があります。
──『Human Dignity』は、いい意味でキャッチーな印象もあるんですが、そこも大きかったんでしょうか。
Vo. 苑
確かに今回はキャッチーさが強いですね。これまでは「メタルアルバムを作ろう」とか、いろんなコンセプトを掲げて作ってきたんですけど、今回は「新しい摩天楼オペラの音を作ろう」「とにかくかっこいい音楽を作ろう」と思って、みんなのやりたいことをガッと詰め込んだから、アイデア満載ではあるんですよ。でも、出来てみたらどの曲をシングルにしてもいいようなキャッチーさがあって。そこがお客さんとしては受け入れやすかったんだろうなと思います。あと、一曲一曲が短いのも伝わりやすかったのかな。
──確かに『Human Dignity』は、これまで発表してきたアルバム(12曲入り以上の作品)の中で、収録時間が46分と一番短いんですよね。そこは意図的にそうしたんですか?
Vo. 苑
いや、そこはまったく考えていなかったですね。短い曲にしようという話をしていたのは「箱の底のMUSIC」だけでした。あの曲は瞬発的なかっこよさというか、ワッとやってバッと終わろうみたいな感覚で作ったので。
Key. 彩雨
アルバムを出してすぐツアーが始まったので、場合によってはまだちゃんと聴けていない人もいたと思うんですよ。でも、今回のアルバムはひねくった感じというか、曲を知らないと伝わらないような曲がまったくないんですよね。シンプルな曲が多いし、曲が短いのもあって、初めて聴く人でもすっと入ってきやすいアルバムになるだろうなっていうのは、レコーディングのときから感じていたんですよ。
Vo. 苑
実際に、アルバムの曲をまったく知らない人が「ライヴ楽しかったです!」ってSNSで教えてくれたんですよ。
──それはすごいですね!燿さんとしては、ツアーのここまでの感想というと?
Ba. 燿
ここ数年いろんなことがあったんですけど、今回のツアーはお客さんの顔が緩んでいるというか、不安そうな顔がなくなっているのがだいぶ嬉しいです。今回のツアーで、初めて摩天楼オペラ人も観る人もいれば、メンバーが変わってから初めて観る人もいると思うんですけど、安心感があるというか。そこもあっての新しいライヴができている実感はありますね。
──燿さんとしてもいまのメンバーに安心感を感じます?
Ba. 燿
JaYくんも響くんもめちゃくちゃうまいので、そういう意味での不安はなかったんですけど、今まで付いてきてくれたお客さんの反応はやっぱり気になっていたんです。いっても、それも不安だったかというとまた違うんですけど、今まで付いてきてくれた人たちにも今の体制を受け入れてもらえつつ、これからまた新しい人たちも付いてきてくれるようなライヴができていると思っています。メンバー全員楽しくツアーを廻れているし、この先が見えるようなライヴができているんじゃないかなと思いますね。
──JaYさんは今回のツアーの手応えはいかがですか?
Gt. JaY
んー、苑さんと一緒ですね。
Vo. 苑
はははは(笑)。
──(笑)。初日から緊張とか不安もなく?
Gt. JaY
いや、1発目の松山は緊張したけど、ライヴの流れはすごくいい感じだったんで、ファイナルに向けてそこをもっと詰めて行って……っていう感じですかね、現状としては。
──緊張感はありつつも、いいライヴになっていると思った理由としてはどんなものがありますか?
Gt. JaY
それこそお客さんの表情だと思いますよ。「ここでこんな顔すんねや?」とか。特に「Cee」とかは、最後のところでお客さんが歌ってくれてるんですよ。
──「Cee」はインスト曲ではありつつも、最後にアンセムパートが出てきて、そこを歌ってくれていると。
Dr. 響
最初は誰も歌っていなかったというか、そもそもお客さんからしたらあそこは歌うところじゃない印象だったと思うんです。でも、JaYさんが「歌え!」って言っていたら、どんどん歌ってくれるようになって、今はかなり声が聴こえるんですよ。
Gt. JaY
これはもっとデカくなっていくんちゃうかなって。ツアーファイナルのときにどうなってるのか楽しみですね。
──あと、「Cee」は情報量がすごく多いですよね。30秒ごとに展開が変わっていくような感じですし、イントロでデジタルクワイア的なものが入っているのもおもしろいなと思いました。
Gt. JaY
なんか、ああいうアンニュイな雰囲気を最初に出したかったんで、(苑に)歌ってもらったんですよ。
Key. 彩雨
歌ったものをボコーダーでイジったり、音をたくさん重ねたりして、ああいう感じになってます。
Gt. JaY
10本ぐらい歌ってもらったんですけど、使ってるの1本だけなんですよ。
Key. 彩雨
ううん。
Gt. JaY
あ、2本?
Key. 彩雨
いや、全部使った。
Gt. JaY
全部使ったん!?
一同(笑)。
Key. 彩雨
10本プラス、ボコーダーで11本ですね。自宅でミックスしちゃったんで、みんなが知っているのはボコーダーと生声の2本しかないんですけど、素材はうちにたくさんあります。
Vo. 苑
これまでやってこなかった手法だったので新鮮ではあったんですけど、意外と僕の声ってお客さんわからなかったみたいで(笑)。
Gt. JaY
でも、レコーディングのときは「自分を消す」って言ってたよね?
Vo. 苑
うん。でも、意外とお客さんがわからなくて寂しいっていう(笑)。
──ボコーダーの印象が強く残りますからね。
Vo. 苑
そうかもしれないですね。加工も結構強いから。
──では、響さん。正式メンバーになってからの初ツアーはいかがですか?
Dr. 響
僕としては、そもそもこういうロングツアーをしたことがなかったので、初日は少なからず緊張感はありました。でも、ここまで廻ってきた中で、曲自体のアレンジもそうですけど、曲の繋ぎとかちょっとした間とかを、本当に気づくか気づかないかわからないぐらいではあるんですけど変えたりしていて。そういう意味でもライヴが成長しているのを感じていますね。あとは、今日何度もこの話が出ていますけど、お客さんの不安がないというか、安心していると思うんですよね。前向きな意見をよく聞きますし。僕自身としては、サポートのときと同じメンバーで同じ曲をやっているから、やっていることは変わらないんだけど、やっぱり心の持ちようが違うというか。そこはプレッシャー的なところでもそうですし、より頑張らないとなっていう気持ちは強くなりました。