俳優の福士誠治と音楽家の濱田貴司が“MISSION”と言う名のロックバンドを結成し、2月17日(日)に渋谷STRA LOUNGEにてデビューライブを開催後、2月20日には4曲入りの1stミニアルバム『ONE-NESS』をリリースすることが発表された。
BSテレビ東京 連続ドラマ「極道めし」主演やスーパー歌舞伎Ⅱ「ワンピース」、ミュージカル「スリル・ミー」などの役者業に加え、'16年には舞台「幽霊でもよかけん、会いたかとよ」で本格的な演出家デビューを果たし、昨年秋には短編映画「おやぢるどれん」で初の監督を務めた福士と、男女2人組ユニット“arp”の解散後、斎藤工、今井麻美をはじめとする数多くのアーティストへの楽曲提供、ラグビーワールドカップ2019 テレビCM、舞台「暁のヨナ」〜緋色の宿命編〜、演劇UNIT 乱-run-「365000の空に浮かぶ月」の音楽を手がけるなど、作曲家として高い評価を得ている濱田。様々なフィールドで活躍し、オファーの絶えないふたりが今、バンドを始める理由とは——。
BSテレビ東京 連続ドラマ「極道めし」主演やスーパー歌舞伎Ⅱ「ワンピース」、ミュージカル「スリル・ミー」などの役者業に加え、'16年には舞台「幽霊でもよかけん、会いたかとよ」で本格的な演出家デビューを果たし、昨年秋には短編映画「おやぢるどれん」で初の監督を務めた福士と、男女2人組ユニット“arp”の解散後、斎藤工、今井麻美をはじめとする数多くのアーティストへの楽曲提供、ラグビーワールドカップ2019 テレビCM、舞台「暁のヨナ」〜緋色の宿命編〜、演劇UNIT 乱-run-「365000の空に浮かぶ月」の音楽を手がけるなど、作曲家として高い評価を得ている濱田。様々なフィールドで活躍し、オファーの絶えないふたりが今、バンドを始める理由とは——。
──お二人が出会ったきっかけからお伺いできますか?
福士10年くらい前ですね。演劇ユニット「乱-Run-」の舞台で使用する音楽を作ってくれる人を探している時に、斎藤工くんから勧められて、arpのライブを観させてもらいました。こんな素晴らしい音楽を作る方に僕らの舞台の音楽を作ってもらえたら最高だなぁと思ってお話をしたら、「興味がある」と言ってくださった。その時の舞台「金沢の乱〜ラストネーム〜」(2009年4月)の音楽を作っていただいたのが最初です。
濱田あの時は、「前半のここからここまで音楽いらん」と言ったその捨てっぷりを福士君は褒めてくれました。それだけは明確に覚えていますね。
福士最初はたくさん曲を書いてくれていたんです。でも、飲みに行ったときに、「みんなのお芝居が音楽になってるので、余計なことはいらないかも」と言ってくれて、「この人凄い!」と思いました。
濱田そこだけ褒めてくれた。
福士いや、音楽のことを細かく言うの嫌でしょ。「あの和音、すごいですね」って(笑)。
濱田第2回目の乱-Run-の時(『365000の空に浮かぶ月』/2014年〜2015年)は福士くんがある程度演出もやっていたので、音楽の打ち合わせもやっている中で、だんだん信頼関係ができて来ました。その公演の打ち上げで、別の人と「僕、自分のライブで朗読劇とかやってるんだ」って話していたら、一番向こう端で飲んでいた福士くんが気づいてくれて、「俺、それやりたい!」って言ってくれた。「マジか、しらんで、そんなこと言うて。俺みたいなちっこいライブに出る立場ちゃうで」って言っていたのですが、結局それも実現しました。
福士一発目の舞台で音楽を作ってもらった時から、物作りに対する温度とか、熱量やこだわり方が似ているなと感じていて。僕が作ろうと思い描いている世界観に濱田さんの曲が合うと思っていたので、それからはことあるごとに、濱田さんに音楽を作って欲しいとお願いしています。だから、僕が初めて演出した舞台「幽霊でもよかけん、会いたかとよ」でもがっつりやってもらいました。
濱田それと同時に、僕がやっているワークショップで福士くんと歌を録り溜めていて。
福士3〜4年くらい前かな。あれはエンジニアさんを育成するワークショップですよね。そこで、どうせなら曲を作って、レコーディングしちゃえば一石二鳥だ、三鳥まで行くぞ!というのが、濱田さんが作った曲を僕が歌った一番初めの機会です。そのワークショップで最初に歌ったのが、ミニアルバムに入っている「人として、時として、花として。」。MISSIONの“ミ”の字も出てない頃に歌った曲。その次の年も同じ企画で、今度は、「大停電の夜」と「ゴースト」の2曲を作った。「俺たち、3曲もあるよ。これはもったいないんじゃない?これを基盤に何かできないかな?」というところから発展していった感じです。バンドとは関係ない仕事がきっかけで膨らんだモノ。だから、ゼロから「バンド組んでやりましょう!」という感じではない。去年、映画「おやぢるどれん」で監督させてもらった時の音楽も担当していただいたので、会う時間が増えてきたことも大きかったです。
──では、自然発生的に生まれたバンドなんですね。
福士ただ、お声をかけてくださったのは濱田さんですよね。僕は二つ返事で、「やりたい」とすぐに言いました。
濱田言葉として最初に『やろう』と言ったのは僕だと思うのですが、カラオケに行った時に、すごい至近距離で福士くんの熱唱を浴びました。その時に『僕、歌えますよ。歌いたいです!』という気持ちは強烈に感じた。それで、「ほんまにしようか」と言ったのは僕ですね。
──あははははは。言い出しっぺにされた部分もあるんですね。音楽家としては、福士さんの歌声を聞いてどう感じてました?
濱田カラオケではまず、歌、むちゃくちゃ上手いなと思っていました。お芝居も何度も観させていただいていて、すごく言葉が伝わる人やなと思ったし、本当に存在感のある表現者やなと。あと、最近のカッコいい人はどこか中性的な人が多いと思うけれど、福士くんは男でさえ憧れを抱くほど、華麗に男っぽい。テクニック、表現力、人間力。そういうことを頭の中で組み合わせていくと、今のJ-POPでヒットしているシンガーの中には存在しない、唯一無二にして、必要なシンガーになる感じがしました。だから、この人と歌を真剣にやってみたいと思ったのが、ほんまの最初のきっかけですね。
──福士さんは高校時代にバンド活動をしていて、音楽系の専門学校に通ってたんですよね。
福士そうですね。高校の頃はコピーバンドでヴォーカルをやっていました。でも、20年近く前の話なので、僕のルーツとしては、かなり薄く消えかかっている頃に、濱田さんが新しく足してくれた感じです、灯火を。
濱田専門学校に行っていたときに特別な賞をもらったって言ってなかった?
福士グランプリをもらいました。年に1回開催されるヴォーカルコンテストで一度だけ。でも、そんな過去の栄光はもう忘れました。
──音楽の道には行こうと思わなかった?
福士もう役者の仕事もしていましたし、音楽では自分自身は食えないと思った。その時は始められなかったし、よし続けようという事はできなかった。でも、1周、2周回った今だからこそ、熱い想いもあったかもしれないです。決して諦めた世界ではなかったし、濱田さんと出会えたことも運命に近いかな。それに、役者も同じですが、音楽もゴールはないんだろうなと気づいた時に、始めないよりは始めないとわからないこともあると感じて。僕にとっては未知の世界で、まだライブで歌うイメージができていないけれど、人生の中でのターニングポイントになるだろうなと思っていることは確かです。
──ミュージカルとも違う向き合い方ですか?
福士違いますね。お芝居の上で板に立つのは、僕であって僕じゃない。でも、MISSIONでは、限りなく僕の素に近いものが出ると思う。MCのセリフを誰かに書いてもらうわけでもないですしね。だから、怖いといえば怖いけれど、楽しみではある世界です。
──では、濱田さんはバンドを始めるにあたって、福士さんにどんな曲を歌わせたいと思いました?
濱田僕がたまたま観ていたお芝居で、福士君はいいお兄ちゃん役が多くて。でも、僕は彼の男らしさにグッときていたので、この人がすごく男っぽい役をやったらかっこええやろうなとずっと思っていました。その思いは歌にも繋がっています。その後、男らしい役とか、恐い人間性の役柄とかも観させてもらって、やっぱり、もの凄く痺れた。そのように男を感じるという意味では、J-POPのシンガーとしてはあり得ないくらい、声が低い。
福士(バリトンの美声を響かせながら)残念です。
濱田あはははは。そういう意味では、一般の男性がカラオケで楽勝で歌えるキーです。でも、むちゃくちゃ低いのに、不思議なくらい低くは聴こえません。低い声って本来は声量が出ないのでサウンドの中にくぐもっていくはずなのですが、福士くんはそうはならない。あえて分析すれば、低いのにものすごく声量があるということかなと。すごく歌が上手い部分は天性だと思いますが、その独特の表現力は役者として積み上げたものが活きているのだろうなと感じます。歌声と話し声が、あまり違わないというのも独特で。だからますます言葉が前にくる。
福士あまり変わらないですね。残念ながら低いです。学校でも一番低かったですもん。
濱田一つはっきりと言っておきたいのは、役者さんが歌っている歌という感じではない。J-POPのシンガーとしての常識を覆しながら、基礎的な歌唱力は申し分がないので、シンガーを超えたシンガーが歌っているって感じ。僕も作家として様々な音楽を作ってきた中で、様々な引き出しを育んできたつもりですが、それを使ってこの、唯一無二のシンガーをどう映していくか。誰にも真似できない音楽になると思いますね。
福士そうなればいいですね、僕も。
濱田真似できないですよ。昔も今も、この歌はないと思う。この歌声がハマる曲を制作していて、今のところアイデアが煮詰まることがない。しばらくは自然に作れると思います。このシンガーがかっこよく歌っている姿が見える曲を書くというだけです。