──ミニアルバムに収録されている4曲中3曲はバンド結成前に作った曲ですよね。
濱田そうです。「人として、時として、花として。」は、初めて作った曲です。「大停電の夜」と「ゴースト」は、福士くんのファンの皆さん、そして僕を応援してきてくれた方々の顔を思い浮かべながら、届けたいと思うものを作りました。そして、これまでの背景を全て忘れて、ただ無心になってMISSIONのために作ったのが「二律背反-antinomie-」です。
──ヴァイオリンをフィーチャーしたハードロックになってますが、福士さんは「二律背反-antinomie-」を最初に聴いたときはどんな印象を持ちました?
福士全く歌えなかったです(笑)。歌詞のハメ方すらわからなかった。僕の高校時代はビジュアルロックが流行っていたので、ダークな世界観や詩的な表現、現実からちょっと心の奥深くに向かっていくような曲でカッコいいなと感じましたが、最初は歌えなかったし、「無理させますね~」と言いました、濱田さんに。
濱田あはははは。僕の頭の中で、福士君がステージで歌ったらこうなった。
──4曲通して、生きる意味や命の尊さを問うようなシリアスさがありますよね。
濱田MISSIONの作詞を担ってくれている溝口貴紀くんは2017年の日本2位の売り上げを誇る作詞家で、もはや大御所。そんな彼が、MISSIONや福士誠治のイメージをベースにしながら、彼自身がどれだけ捻りだしてきてくるのかを楽しみにしています。多分、1曲に対して5曲分くらいのしんどさで作ってくれているのかもしれません。
福士軽くはないですよね。楽しく歌って、いえーい!という感じではない(笑)。お芝居をしていて、セリフ以外の心の表現という話もしていく上で、そこまで行き着いてスパークしてくれたのかなというのもありますね。でも、あまりにも深すぎて、僕が思う解釈と合っているのかがわからなくて、怖くなって、溝口さんに歌詞の本当の意味を聞いたことがあります。脚本家と演者のすり合わせみたいなことをしたのですが、聴いてくださる方には自由に受け止めてもらえたら嬉しいかな。ただ、深くまで感じたいという人にはたまらない曲になるといいなとも思っています。
濱田歌詞もそうですけど、バイオリンにしても、ギター、ドラムやベースにしても、実はものすごいフレーズの集合体になっていて、超絶技巧派のミュージシャンに弾いてもらっています。最終的にMISSIONを誰に聴いてもらいたいかというと、同世代や先輩方はもちろんですが、やっぱり若い人達にも聴いてもらいたいという気持ちもあります。ただやりたくないのは、こちら側が若い人達の気持ちを先読みすること。若い人達に合わせようとか、こういうことを言えばいいんだということはしない。だから、福士くんとは「あらゆる意味で嘘のない音楽にしよう」と話しています。僕らガチガチの大人の音楽を若い人達に聴いてもらうためには、「大人もマジやからな!」というところを見せないとあかんなと。今、自分の顔をさらけ出した上で意見を言うことにビクビクしている人が多い時代じゃないですか。そういう空気を恐れずに、自分の言葉をしっかりと音楽にしていくことを大事にしていきたいです。
福士そうですね。僕らはもう、「夢を叶えようぜ!」と言っていた10代の子供ではない。自分の道を頑張ってきた人たちが、なぜバンドを組んだのか?いい大人が、急に何を目指しているのか?(笑)。僕らには、言葉ではいえない、熱い想いがあるんです。だからこそ、変にスタイリッシュで、皆さんに媚びたものを作って、「カッコいいでしょ、これよくない?」というよりは、「俺たちはいいと思ってる。あとはお前たちが判断しろ」っていう、ちょっと横柄なことが、大人だからできる。いろいろな経験を経て培ってきた表現者たちが、歌という3〜4分の中で、横暴であり、我儘な世界を1つ作る。普段、我儘なことをしていないだろう僕らが(笑)、我儘な世界を作りたいというのが願望だし、僕らにとってはやる意義でもありますね。自分の思いついたことを発信する大事さや当たり前さはあっていいぞ、ビクビクしてんなよ、と。それを、大人が先陣切ってやろうということかな。
濱田それはほんまにある。
福士横柄なバンドではないけど、そういう世界観を丁寧に乱暴にできると素敵だなと思いますね。
濱田いいですね。丁寧で乱暴。
福士まさに「二律背反」ですね。
濱田同世代に対しても強い思いがあって。35歳くらいから元気が無くなっていく仲間が少なからずいます。その理由を追求してみると、人生が見えてくる感じがある。出世とか給料とか出会いとか。予想外のことは病気くらい。そう思うようになってくると、つまらないなという気分になるのもわかる。今、僕らがバンドを始めるのは、年齢的にもちょっとクレイジーじゃないですか。
福士あははははは。しかも、おじさんが趣味で始めるような熱量じゃないし。
濱田僕らは本気やから。いずれは大きな会場でもやりたい。そんなこと、今から本気で考えるのもアリというか。僕らが狂うことで、同世代以上の仲間にそんな空気が少しでも漂えば嬉しいです。
福士新しいことを初めて欲しいです。MISSIONを見て、バンドを始めなくてもいいけど(笑)、何か新しいことをやる、挑戦するということになったら、すごくいいし、意味がある。それこそ、MISSION=天命、任務っていうバンド名も腑に落ちるなと感じます。
濱田最初、福士くんのマネージャーさんに相談しに行った時に、断られる可能性も十分にあるなと覚悟はしていました。すでに、役者として成立している人やし、バンドをやるっていうイメージが俳優としてのキャスティングに悪影響を与えるんちゃうかという心配もしていて。でも、言ってみたら、「いいっすよ〜」って。
福士今の年齢だからというのもありますね。30歳を超えてから、演出をやらせていただいたり、映画を撮らせていただいたり。自分も挑戦して、自分の世界を広げていきたいという時期の話でもあった。しかも、歌が好きで、濱田さんを信頼しているし、お互いに熱い思いを抱えている。これは、やらない理由はないなと。どういう形が成功で、どういう形が失敗かはわからないですけど、絶対に1つも無駄にならないと思う。ステージに立って、お客さんとその時間を共有できれば、失敗という言葉はないはずなんですよ。自分の世界を広げた先にまた何かあるかもしれない。そういう機会、任務を与えてもらったことに感謝していますね。
──1stワンマンライブはどんなステージになりそうですか?
濱田既に発表している曲以外に、新曲を何曲か披露します。リハーサルの最中ですが、とにかく、すごいライブになると思っています。
福士あはははは。「すごいライブ」ってどんなライブですか?それこそ子供みたいなこと言ってる。
濱田僕、普段そんなことをいうタイプじゃないんですよ。MISSIONも、正直、もうちょっとゆっくりやっていくつもりだったのですが、始めてみたら共感して力を貸してくれる人が多くて、すごいスピードで走り出してしまいました。自分一人で作っている気はしない。サポートメンバー、舞台を制作している方々、支えてくれているスタッフ、あらゆる人たちの熱量が僕の想像をはるかに上回っている。チームで「すごいもの」を作っている実感があり、このメンバーで実現するものは、間違いないと思います。僕自身、まだ見ぬ潜在していた力を引き出してもらっているのも感じる。そして、この世界の中で福士くんが先頭に立ってジャンプしてくれれば。
福士ジャンプします!(笑)。ただ、僕は今回、初めてライブをやらせていただく身。だから、ちょっとどうなるかわからないですけれど、終わった後に真っ白になれたらいいかなとは思いますし、お客さんの前で演じるのではなく、自分が立つ感覚がどんなものなのかも知ってみたい。この新しい挑戦が今の楽しみであるし、忘れかけていた想いでもありますね。1stワンマンライブで感じるものはきっと大きいと思います。
──楽しみにしてます! 最後にバンドとしての今後の目標を聞かせてください。
福士ライブに来るのが楽しみなバンドになれたらとても嬉しいなと思います。役者をやりながら、作曲家をしながらのスケジュールなので、まだどうなるかはわからないけれど、いつか全国も回れたらいいなと思っています。やったことのないことに挑戦してみたい。それができたら単純に楽しそうだなぁ、と。MISSIONで生でやっている時間が多ければ多いほど楽しみではありますね。
濱田僕はできる限り大きな会場でちゃんとやりたい。演出家と打ち合わせをしていると、「福士くんと僕がバンドをすることで、発想できる演出はものすごく幅広い」と言われて。福士くんと僕のやってきたことを考えれば、確かにそのはず。今回はバンドでぎゅっとやりますが、大きな会場の方が、パーフェクトに見せられることは多いと思う。そこへ向かうプロセスとして、みんなが想像している時期よりは、だいぶ早く、次をやると思います。ライブの当日には何か発表できたらいいなと思っています。
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