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ライブレポート

THE RISING OF THE CURTAIN at 豊洲PIT / THE OPENING MATCH at 豊洲PIT



豊洲PIT
2014.10.24 up

THE RISING OF THE CURTAIN at 豊洲PIT [10/17(金)]


豊洲PITのオープニング・イベントが10月17日、18日の2日間に渡って開催された。“PIT”は“Power Into Tohoku!”の略称で、被災地の“こころの復興”の拠点とすべく、エンターテイメントを通じて東日本大震災の復興支援を目指す一般社団法人「チームスマイル」が運営している。17日は『THE RISING OF THE CURTAIN at 豊洲PIT』というタイトルで5組のアーティストが出演した。


THE RISING OF THE CURTAIN at 豊洲PIT

一番手で登場したのは岸谷香。彼女は2012年に復興支援のために1年間限定でプリンセス プリンセスを再結成して、東京ドーム公演なども行っている。この日はそのプリンセス プリンセスの渡辺敦子がベース、プロデューサーの河合マイケルがパーカッション、そして岸谷の友人でもある高嶋ちさ子がバイオリンという気心の知れた4人編成。オープニング・ナンバーは「Diamonds」だった。岸谷はピアノを弾きながらの歌。「これからこのPITでいろんなダイアモンドがたくさん生まれることを祈って、この曲を選びました」と岸谷。観客の年齢層が幅広く、椅子席だったのだが、立ち上がってハンドクラップしたり、歌ったり、客席も一緒に参加していく。岸谷がアコギを弾きながらの「GET CRAZY!」でも会場内がハッピーな空気に包まれていった。岸谷のピアノで始まった「M」はヒューマンな歌声に寄り添うようなベースとバイオリンの優しい音色が印象的だった。「ジャンルの違う人達が一緒に音楽を出来るのは復興支援のもと、心が繋がっているから」という岸谷の言葉どおり、ジャンルの垣根を超えた共演がこの場所にはふさわしい。


THE RISING OF THE CURTAIN at 豊洲PIT

続いて登場したのはバイオリン奏者の川井郁子と福島出身の尺八奏者、小湊昭尚。ここでも異ジャンルのコラボレーション。川井は着物を羽織っての演奏。和のテイストが加わった「ジュピター」は壮大でありつつも懐かしい響きもある。「ここが被災地へのエールの気持ちをひとつにする場所になっていったら」と川井。仙台出身の羽生結弦がソチ五輪のエキシビションで使用した「ホワイト・レジェンド」も演奏されたのだが、冒頭では「荒城の月」も演奏されて、和と洋のミックスされた深みのある展開からは復興への思いも伝わってくるようだった。
続いてはチェリストの溝口肇のステージ。長寿テレビ番組のテーマ曲としてお馴染みの「世界の車窓から」を披露したところで書家の紫舟が登場し、音楽と書道とのコラボレーションが実現した。舞台上手に高さ2メートル以上の白い紙が貼られたボードが設置されて、溝口の演奏に合わせて、書をしたためていくパフォーマンスが展開されたのだ。
「震災後、気仙沼や陸前高田に行ったんですが、何もない風景を見てた時に不思議なことに鳥の声だけがしたんですよ。なのでこの曲をぜひやりたいなと」という溝口の言葉で紹介されたのはスペインのチェロ演奏者、作曲家のパブロ・カザルスの「鳥の歌」。さらにはこのイベントのために作曲してこの日の朝4時に完成したばかりという新曲「全力」(仮タイトル)も演奏された。演奏が始まると、紫舟が筆を手にしてボードに向かっていく。時折、溝口も紫舟が描く文字を眺めている。それぞれが刺激しあっていくセッション。演奏の終了と同時に完成した書には太陽の光に照らされている4羽の鶴と“全力”という文字が浮かび上がっていた。「演奏しながら見ていて、泣きそうになりました」と溝口。場内からは驚異的な共演に感動の拍手が鳴り響いた。


THE RISING OF THE CURTAIN at 豊洲PIT

4番手として登場したのは俳優の倍賞千恵子と西田敏行だった。このふたりは映画『植村直己物語』で夫婦役を演じている。倍賞の実の夫である小六禮次郎がピアノを担当して3人の楽しいトークを交えつつ進行。倍賞が踊りながら歌を披露した「さよならはダンスの後に」、西田のボーカルで「もしもピアノが弾けたなら」。人間性までもがにじみでる味わい深い歌声に会場内からは熱烈な拍手が。倍賞が唱歌の「ふるさと」を歌い、詩の朗読をし、西田の歌う「花は咲く」へ。この歌は福島出身の西田も参加している復興チャリティーソングだ。さらに再び「ふるさと」では倍賞、西田、観客が一緒に歌っていく。「皆さんがいろんな思いで聴いてくださっているんだなと思うと、歌っていて、胸が熱くなりました」と倍賞。「長いスパンで復興を応援していきたいと思います」と西田。


THE RISING OF THE CURTAIN at 豊洲PIT

ラストに登場したのはデビュー40年のキャリアを持つ甲斐バンドだった。この日はドラムの松藤英男がアコギを持って、ベースとドラムはなしというアコースティック編成なのだが、1曲目の「ビューティフル・エネルギー」から会場内に熱いエネルギーが充満していく。「安奈」ではチェロの溝口が参加するスペシャルな組み合わせで。「HERO(ヒーローになる時それは今)」はラストを飾るのにふさわしい熱狂的な盛り上がりとなった。「僕らも含めて、いろいろなミュージシャンが集まったこと自体がメッセージです。そして皆さんがこの場に足を運んでくれたこと自体がメッセージです」と甲斐。出演者それぞれが思いを抱いての歌と演奏によって、特別な空間が出現。“Power Into Tohoku!”の第一歩がしっかり刻まれた夜となった。


THE RISING OF THE CURTAIN at 豊洲PIT


THE OPENING MATCH at 豊洲PIT [10/18(土)]


『THE OPENING MATCH at 豊洲PIT』と題された18日は3組のアーティストが登場。オールスタンディング形態ではこれが初日ということになる。波の音のSEとともにステージに現れたのは2人組の音楽ユニット、キマグレン。「夏と海を持ってきたよ!」という言葉で始まったのは「海岸中央通り」だった。3100人の手が左右に揺れて、海の波のようだ。情熱的に歌いまくる「ENDLESS SUMER」、柔らかな歌声からいとしさとせつなさがにじむ「DEAR」など。彼らが登場するだけで、豊洲PITが夏のビーチへ変わっていく。


THE OPENING MATCH at 豊洲PIT

「もう10月で、世間の格好と僕らのカッコウとギャップがだんだん開いてくるんですけど、僕らは1年中夏だ、海だって言ってるんで。会場内の気温も8月くらいになってきたかな」とISEKI。「初日の声を聞かせてくれ〜!」という声に応えて、シンガロングとなったのは「LIFE」だった。KUREIの伸びやかな歌声に歓声が起こる。客席でもタオルが回り、潮風のような風が起こっていく。
「震災から3年経って、(被災地の人々のことを)毎日考えられるかと言ったら、考えられていないなあと思って。こういう場所があったり、曲があったりすると、考えるきっかけになると思うし、みんなも少しでも何かを感じてくれたらいいなと思っています」というMCに続いて、気仙沼の子供たちと一緒に作った「笑顔の花」が披露された。“声を乗せて君に届けよう”という歌詞のとおり、彼らの歌が寄り添うように響いてきた。


THE OPENING MATCH at 豊洲PIT

続いて登場したのは独創的な音楽性で注目を集めている4人組のバンド、ゲスの極み乙女。だった。休日課長(B)とほな・いこか(Dr)の生み出すファンキーかつダンサブルなグルーヴに乗って、川谷絵音(V、G)のラップが繰り出されていく「パラレルスペック」での始まり。切れ味のいいグルーヴに会場内が激しく揺れる。疾走感あふれる演奏で一気に駆け抜けていく「キラーボール」、スリリングな演奏が魅力的な新曲「星降る夜に花束を」、ちゃんMARI(key)のピアノをフィーチャーした「列車クラシックさん」、せつなさがほとばしるダンス・ナンバー「猟奇的なキスを私にして」など、ヒップホップもファンクもダンスミュージックもプログレもクラシックも飲み込んだ自在な音楽を展開していく。「みなさん、ゲスの極みと一緒に遊びませんか?」という言葉に続いては「アソビ」。まさにこれは音楽による遊びを具現化したような楽しい曲だ。客席も一緒に“パラリラパラリラ”と歌っていく。最後の曲は「ユレルカレル」。今の瞬間を完全燃焼していくような演奏に胸を揺すぶられた。


THE OPENING MATCH at 豊洲PIT

トリを務めるのは桜井和寿とGAKU-MCのユニット、ウカスカジー。桜井のアカペラで始まっていったのは「勝利の笑みを 君と」だった。ひとりだけの歌声と思いきや、会場中がすぐ一緒に歌い出している。そして飛び跳ねている。GAKU-MCが客席をあおって、全員が雄叫びをあげている。「手を出すな!」ではバンドアミーゴのファンキーな演奏に乗って、GAKU-MCがソリッドなラップを繰り出していく。さらに「サンシャインエブリディ」、「春の歌」へ。
「音楽とフットボールは言葉が通じなくても、一瞬で仲間になれるからね」とGAKU-MC。その言葉をそのまま音楽にしたような「「縁 JOY AMIGO」ではみんなでタオルを回しながら。まるでスポーツのような爽快感と肉体性のある世界が楽しい。ピアノで始まった「My Home」での桜井の温かな歌声は深く染みこんできた。桜井もGAKU-MCもアコギを手にしての「昨日のNO、明日のYES」ではメンバー紹介を挟んで、Mr.Childrenの「Tomorrow never knows」が演奏されるサプライズもあった。ここでも観客全員が歌っている。“明日へ”という歌詞からまた「昨日のNO、明日のYES」へ戻る展開。ラストの曲は「mi-chi」。桜井とGAKU-MCとが肩を組んで歌う場面もあった。肩こそ組んでないけれど、ウカスカジーと客席とが一体となって歌っていた。「ウカスカジーのライブの特徴としまして、ともかく一緒に歌うというのがあって」という桜井の言葉どおり、全員がコーラスアミーゴ。これがウカスカジーのライブだ。全員参加型という点ではスポーツに限りなく近い音楽。耳で聴く、目で観るだけでなく、体を使って、喉も使って楽しむスポーティーでなおかつ感動的なステージ。3組それぞれが個性を発揮して、会場を巻き込んで一緒に参加していく夜となった。


終演後、豊洲PITに隣接のMIFA Football Parkフットサルコートでアフターパーティーも行われた。おそらく観客のほとんどの人が参加したのではないだろうか。DJブースでダイノジのDJもあり。球舞のパフォーマンスも展開された。GAKU-MCやキマグレンが顔を出す場面も。ダイノジが「4月6日に三陸鉄道が全線開通しました」と言った後で、「トレイントレイン」をかけて、参加者たちが輪になって踊っていた光景も印象的だった。たくさんの思いがひとつになった時に大きなパワーが生まれていく。“PIT”とはそのパワーを活かしていく場ということだろう。ただし、一過性のものではなくて、継続していくことが大切になってくる。つまり勝負はこれからということだ。


●取材/文:長谷川 誠
●撮影:武 裕康/横井明彦



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豊洲PIT(2014.10月 Live Report)


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