今年10月に2枚目のシングル「はさみ」をリリースした黒木渚が、東名阪仙に地元・福岡を加えたリリースツアー「やわらかなハサミ」の最終公演を11月30日に東京キネマ倶楽部で行った。
オープニング映像が投影されていた紗幕が下りると、レースが縁取られた真っ白いタイトなワンピース姿の黒木渚が仁王立ちで登場。時に、頭をかきむしりながら、ステージ上を右往左往し、激しいロックナンバー「プラナリア」や、自由自在のビート変化をみせる「クマリ」、音の波に身を任せるように歌う「マトリョーシカ」など、昭和のキャバレー音楽からキャッチーなポップロックに4ビートのジャズまで、多彩なナンバーを立て続けに演奏した。
「この日を待ち望んでいたし、今年の集大成になるようなライブにしたい。2013年11月30日をあなたの中にずっと鮮やかに焼き付けるためにも全力でやっていきます」というMCのあと、“1つの演劇を見ているかのよう”と称される独特の世界に突入。「エスパー」では、手にした銀のスプーンをサビに合わせてぐにゃりと曲げ、緑の羽根を出した。自然発生的に裏打ちのクラップが巻き起こった「あしながおじさん」では新機軸を見せ、未発表曲「ウェット」では、シャワーの水が流れる音とともに<2ヶ月前、私はこのバスルームで死んだ……>という楽曲の中の主人公の背景がセリフで語られ、「安藤麻衣子」では、ブルーのワンピースに着替えて、中2階の張り出しに現れ、三拍子の指揮をとりながら、苦しみをゆっくりと表現。続いて、「真夜中、時計の音、ひとりぼっち、あなたは机の引き出しを開けます」というセリフとともに、最新シングル「はさみ」をエモーショナルに歌い上げた。
さらに、「楽曲のテーマ自体をテーマにした、私のハジけるような若さが溢れている曲」とはにかみながら冗談まじりに紹介した攻撃的なロックチューン「テーマ」、黒木のか弱いウィスパーと叫びにも似たストロングな歌声が交錯する「赤紙」と続け、観客の興奮が覚めやらぬなか、半年後の2014年6月1日に渋谷公会堂でワンマンライブを開催することが本人の口から発表され、会場からは、割れんばかりの歓声が起こった。
2013年の2月に上京して活動の拠点を東京に移し、今年を「勝負の年」と位置づけてきた彼女たちは、6月1日にキャパシティー200人のCLUB Queで初のワンマンを開催。ちょうど半年後となったこの日の公演は実に3倍となる600枚のチケットが完売。今回のワンマンツアーで各地をまわり、ファンと直接触れ合った彼女たちは、「武道館公演が実現するまでは絶対に死ねません」という声を数多くかけられたと語り、改めて、渋谷公会堂へ向けた意気込みとともに、「2年以内に武道館公演を叶え、さらに大きなステージへ」という約束をファンとの間で固く誓った。
最後に「本当に楽しかった。生きてる実感があった」と語り、黒木渚流の行進曲「骨」を笑顔で高らかに歌い上げ、本編の幕は閉じた。
アンコールでは、彼女自身が日本語歌詞をつけたイギリス民謡「ダニーボーイ」のカバーに続き、ファンに問いかけたツイッターのリプライを基に書かれた新曲「ロマン」を初披露。ファンとの再会の願いを込めた「カルデラ」を歌い切ったところでステージをあとにしたが、それでも観客の声は鳴り止まず、ダブルアンコールが実現。全編英語詞の「No Reason」で会場全体を1つにし、「ありがとう。バイバイ」と語り、ステージをあとにした。
SET LIST
1.プラナリア | 7. ウェット | アンコール |
2. クマリ | 8. 安藤麻衣子 | 13. ダニーボーイ |
3. マトリョーシカ | 9. はさみ | 14. ロマン |
4. エスパー | 10. テーマ |
15. カルデラ |
5. あしながおじさん | 11. 赤紙 | ダブルアンコール |
6. あたしの心臓あげる | 12. 骨 | 16. ノーリーズン |
INFORMATION
黒木渚(2013.12月 Live Report)