PRINCESS PRINCESS ライブ、イベント、コンサートのチケット情報・先行予約・一般発売・当日券ならDISK GARAGE(ディスクガレージ)

クリスマス・イヴに起きた音楽のミラクル。PRINCESS PRINCESSの東京ドーム公演をそう表現したくなった。
彼女たちは東日本大震災の復興支援のために、解散から16年後の2012年に、1年間限定で再結成して、仙台サンプラザ2days、武道館4days、そしてこの東京ドーム2daysの初日と、ツアーを展開してきた。その最終日となるのがこの12月24日の公演。まず登場の仕方が見事だった。
ステージ前方の花道に出現した白い巨大な風船が割れて、岸谷香(Vo&Gt)、中山加奈子(Gt&Cho)、富田京子(Dr)、今野登茂子(Key&Cho)、渡辺敦子(Ba&Cho)が円陣を組んでいるのが見えてきた。5人ががっちり肩を組む姿からはバンドの絆の強さまでもが見えてくるようだった。

オープニングナンバーは「SEVEN YEARS AFTER」。“あなたに逢えてよかった”というフレーズがこの場所のこの瞬間にふさわしい。
「OH YEAH!」では早くも観客も一緒にシンガロングで参加している。この客席を巻き込んでいくパワーはPRINCESS PRINCESSだからこそだろう。ひとつひとつの音に気迫と思いとをしっかり込めていくような歌と演奏が素晴らしい。
東京ドームという広い空間に約4万5千人の観衆が集っていたのだが、彼女たちの奏でる音楽と観客ひとりひとりがしっかり繋がっているという印象を受けた。

「今日はこの3時間、私たちと一緒に心を解き放って、うんと笑って、うんと歌って、思う存分楽しんで帰ってください」という岸谷の言葉どおりの楽しい楽しいステージ。
「WONDER CASTLE」ではステージの端から端まで、岸谷、中山、渡辺の3人が走りながらダイナミックなパフォーマンスを展開した。
「世界でいちばん熱い夏」「M」など、代表曲、人気曲が並んだ集大成的なライヴ。再結成では新曲は作られていないので、演奏された曲はすべて16年以上前に作られたものばかりなのだが、どの曲もまったく色褪せていない。つまり彼女たちの作品は時代を越えていく普遍性を備えているということだ。
例えば、「STAY THERE」。この曲はチェルノブイリで原発事故があった当時に作られた曲だが、今の時代にもリアルに響くナンバーになっていた。暗いニュースが目立つ時代の中、“ずっとずっと輝いて”というこの曲のフレーズがダイレクトに届いてきたのは、彼女たち自身が数々の困難を乗り越えて、ステージの上で輝いているからだろう。

中盤はセンターステージで5人が輪になってアコースティック編成で、「SHE」「パパ」「友達のまま」を披露したのだが、ドームなのにアットホームでパーソナルな空間が出現した。
彼女たちは再結成にあたって、約1年半に渡って、プライベートスタジオでリハーサルをしてきたのだが、このセンターステージでの演奏はその時の雰囲気を再現したものとなった。こんなに広い空間なのに、歌がすぐ近くで聞こえてきた。

後半は圧巻のひと言。「GET CRAZY!」「ROCK ME」「パイロットになりたくて」「GUITAR　MAN」などなど、これでもかとたたみかけていく構成で、ロックバンドとしての彼女たちの魅力が全開となった。強烈なエネルギーが渦巻く中に身を任せているのは至福の体験だ。集中することと開放することとが両立している。おそらくこれはバンド史上最高のステージ。スポーツの世界に例えると、引退していた選手が16年ぶりに現役に復帰して、最後の最後に自己最高記録を更新したようなものだ。が、このミラクルは偶然起きたのではない。大きな志を胸に、より良いステージにするべく、日々着実に努力してきた成果がラストステージで実を結んだということ。
本編ラストで演奏された「19GROWING UP」はいつもまでも成長しつづけていこうという誓いの歌と解釈することもできそうだが、彼女たちはこの日のステージでその歌詞の内容をそのまま体現していた。タオルが宙を舞い、ステージと客席とがひとつになっていく様は絶景だった。

アンコールでは彼女たちからクリスマス・プレゼントとして、「DING DONG」も演奏された。が、この日のプレゼントはそれだけではない。美しい歌、美しい景色がたくさんあった。アンコールの最後の曲、そして再結成の活動の最後の曲となったのは「Diamonds」だった。なんて楽しくて、明るくて、せつなくて、かけがえのない歌なのだろうか。会場内もひとつになって歌い、笑い、そして涙を流していた。これはとても不思議な光景だった。もちろん寂しさがないわけではないのだが、感動的ではあっても感傷的ではない。それはおそらく彼女たちが東京ドームで音楽によって表現したものが“終わり”ではなくて、“未来へと向かっていくための何か”だったからだろう。音楽のパワーの素晴らしさをまざまざと実感した夜だった。
この３時間のステージは観客それぞれの胸の中で輝くダイアモンドへと変換されていくに違いない。そしてそのダイアモンドは未来へと進んでいく動力源のような役割を担っていくことになるだろう。

INFORMATION