人間椅子が語る、ふるさと自慢!
編集部:人間椅子のみなさんのふるさとというと?
──鈴木さんと和嶋さんは青森県弘前市出身ということで。最新アルバム『異次元からの咆哮』のジャケットもねぷた祭りとのコラボレーションになっていますが、鈴木さんは毎年、ねぷた祭りを見に帰省されてるんですよね?
はい、今年も当然見に行って来ました。みなさん、ねぶた祭りというと青森市の青森ねぶたを想像すると思うんですけど、弘前は弘前ねぷたと言って、青森ねぶたとは全然違うんです。青森ねぶたは立体の山車で賑やかですけど、弘前ねぷたは扇形の山車の表と裏に絵が描かれていて風情があるんですよ。青森ねぶたが良いか、弘前ねぷたが良いかは、青森県内でも論争があるくらいなんですけど。僕はじっくり絵を見て、囃子や掛け声を楽しむ弘前ねぷたがすごく好きですね。山車の絵も絵師さんが100人くらいいるんですけど、絵師さんが描いた絵はその年しか見れないんです。しかも全部の絵を見ようと思ったら1日では無理で、2~3日かけないと見れなくて。いま見なければ一生見れないという刹那的なところがまた良いんですよ。今回のジャケットの三浦吞龍(どんりゅう)さんの絵もスタジオとかで撮ったんじゃなくて、実際に夜に運行している山車を写真に撮った、この日しか見れない絵で。僕は吞龍さんの絵が大好きなので、本当に光栄です。
──ねぷたで披露した絵はお祭りの後、どこかに飾られたりしないんですか?
やぶいて捨ててしまうんです。儚いでしょう?だからこそ、僕は集中してガン見するし、みんなもそうやって見るんです。吞龍さんのねぷたは、弘前市民もすごく注目していて。隣で見ていた人が、話しかけてきた子供に「ちょっと待って!吞龍さんの絵が来たから」っていっていたくらい心待ちにしているんです。また、お囃子が青森と弘前でも全然違って。青森は縦ノリなんですけど、弘前は引きずるようなリズムで、なんというかブラック・サバスのリフが合うようなお囃子なんです。
──わははは! でも冗談抜きで、子供の頃から慣れ親しんだ弘前ねぷたのリズムが人間椅子のルーツになってるかも知れないですね。
僕と和嶋くんは、本当にそれはあると思いますよ。
──和嶋さんは同郷ながら、さっきから熱く語る鈴木さんを冷静に見てますね(笑)。
いや~、鈴木くんのねぷた愛は僕とは比較にならないですから(笑)。ただ補足すると、弘前ねぷたは“出陣”で、青森ねぶたは“凱旋”だと言われていて。なんでこういう祭りがあるかというと、相手を威嚇するために山車を出したんじゃないか?と言われているんです。そこで弘前は出陣だから、まだ勝つか負けるかも分からない。青森は勝って帰って来たからアッパーなんです。だから、弘前のねぷたに趣きがあるとしたら、そこなんじゃないかと思うんです。あと青森の派手な立体の山車に対して、弘前は扇型で平面の中に絵で表していて、そこがまた良いんですよね。また、表側が勇壮な絵なのに対して、裏側には女性が描かれていたりエロスを表現していて、あまり子供には見せちゃいけないような絵だったりして。裏側には死体が描かれていたり、青森のねぶたにはない闇があるんです。僕らはそこが面白いんですけど、客観的目線で見ると青森のねぶたの方がエンターテイメント性があって、人が集まるなと思いましたよ。弘前のねぷたは暗いですから(笑)。
そう!?俺は全然違って、青森行っても、弘前のねぷたが一番だと思ったけどな。
そこが熱く語る鈴木くんと僕の温度差に繋がるわけです(笑)。でも、子供の頃に山車の裏にある闇の部分を見て、ゾクゾクして。そういうのが好きになったところはありますね。また、引っ張ってる人が地元の人もいれば、白塗りのアングラ劇団みたいな人が引っ張ってる山車があって。それが一番好きだったし、子供心に興奮してました。だから、僕の持つアンダーグラウンドみたいな部分もねぷたで養ったし、僕らの表現にも確実に影響を与えていると思いますよ。
──めちゃくちゃ面白い話ですね。いま、ねぷたの話を聞いてるのに、人間椅子のルーツの話を聞いているような錯覚に陥ってました(笑)。
もし、僕と鈴木くんが青森市出身だったら、こういうバンドにはなっていなかったと思いますよ。あと、もっと売れてたと思います。闇の部分を少し隠して、もっと受け入れやすかったと思うんで(笑)。でも、弘前出身だから闇を出したくなってしまうんだよね。
──闇が深くなりすぎないように、ノブさんがセーブするわけにいかないんですか?
僕がですか?僕がバランスを取るんですか?(笑)
でも、ノブくんは実際、山車でいう表の部分を担ってくれてると思いますよ。
いや~、二人にとっては弘前が故郷ですけど、僕にとっても第二の故郷くらいの気持ちはあるんで、その感覚は分かりますけどね。もう、二人と12年以上一緒にいるんで、最初は全く分からなかった方言も今はほとんど分かるようになったんです。弘前は食べ物も美味しいし、景色も素晴らしいし。体半分は弘前の血が流れてる……気がします(笑)。
──ノブさんは東京出身なんですよね?
はい、高円寺出身です。まぁ、東京の中ではローカルな街ですけどね。
そんなことないでしょ。俺、それまで小岩に住んでて、高円寺に引っ越してきた時、「なんて都会だ!」って思ったけどなぁ。
いや、東京ローカルだと思うよ。逆にいうと、僕たちの第二の故郷は高円寺だしね。高円寺は東京の中でも自由な空気がある街だと思うし、安い物件もあるからバンドマンがたくさん住んでるじゃないですか?で、気付けば僕も鈴木くんも、高円寺にず~っと住んでましたから。そこでノブくんとも何年間も同じ空気を吸って。考えたら高円寺に20年住んでて、弘前に17年しか住んでないから、高円寺に住んでた方が長いんですよ。
僕は夜中にコンビニに行くと別のバンドの人と会って、「昨日、コンビニいたでしょう?」と言われたり。常に誰かに見られてる感じがイヤで、高円寺出たんですよ。
それが田舎ってことじゃないですか!(笑)東京の中では下町風情が残ってて、ご近所付き合いがあったりするんですよ。24時間、街が動いてるし。
そう、それがイヤだったんだよ(笑)。
確かにうるさい街ではあります。でも、周りの街に比べても物価が安いし、街が広すぎないから便利だし。クズに優しい街なんです(笑)。あと俺らも驚いたんですけど、修学旅行生が増えたんです。地元の人間からすれば、せっかく東京来たんだから渋谷や原宿に行けば良いと思うんですけど。“古着の街”みたいな感じで紹介されてるらしくて、地方から来た修学旅行生が高円寺に買い物に来たりしていて。あと、ちょっと前までゲイバーやホモバーがたくさんあって……(中略)。って、俺は何の話をしてるんだろう?(笑)
あはは。ま、色んな人種を受け入れる自由な街ってことですよ。そんな弘前のアンダーグラウンドと高円寺のアンダーグラウンドが集まったのが、人間椅子です(笑)。
編集部:みなさん、ありがとうございました!
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