取材・撮影/加賀生馬
9月15日、「ONWARD presents『髑髏城の七人』Season風 Produced by TBS」が豊洲・IHIステージアラウンド東京で開幕。これに先駆けたプレスコールがより開催された。
IHIステージアラウンド東京は2017年3月に開場した劇場。約1,300人を収容できる円形の客席が360°回転するという新機構を持ち、今回の『髑髏城の七人』上演にあたっても客席の周囲に設置されたステージでは、それぞれ荒涼と広がる関東荒野、薄暗い髑髏城、艶やかな色里、怪しげな鍜治場などが設置され、場面転換のたびに客席が各ステージ前に向けてゆっくりと回転してゆく。
織田信長亡き後の戦国時代を舞台に、殺陣とアクションはもちろんのこと、涙あり笑いありと盛りだくさんの歴史劇である『髑髏城の七人』は、劇団☆新感線の出世作にして代表作。1990年の初演以降、7年ごとにリニューアルを経て上演されて続けてきた同公演は、今回13年ぶりに“捨之介”と“天魔王”が一人二役のオリジナルバージョンで復活したことも見どころの1つだ。
プレスコールは、関東荒野で狸穴二郎衛門(生瀬勝久)と沙霧(岸井ゆきの)が出会うシーンからスタートした。沙霧を追って兵庫(山内圭哉)率いる関八州荒武者隊がやってくると、二郎衛門と関八州荒武者隊の激しい殺陣のシーンが展開。ひと悶着あったところに関東髑髏党の鉄機兵が沙霧を捕えようと打ちかかってくるも、主人公の捨之介(松山ケンイチ)が舞台右奥から現れ鉄機兵を打ちのめしていく。着物姿にもかかわらず軽やかな身のこなしで殺陣をこなす捨之介の無駄のない所作に目を奪われていると、あっという間に戦いを終えていた。
一行は怪我をした沙霧を手当てするため、関東一の色街にある“無界屋”へ移動することになったのだが、この際にスクリーンが閉じ客席が回転。花道を左へと進む演者たちのバックスクリーンには色里の街並みが投影されており、舞台転換の時間に一行の移動中の様子が描かれる。「幕が閉じて舞台転換する」タイプの演劇では、ちょっとした合間に現実に引き戻されてしまうことも多々あるが、本公演では一瞬たりとも現実を意識することなく、まるで実際にこの世界に入り込んでしまったかのような不思議な感覚が味わえるだろう。
そして“無界屋”では極楽太夫(田中麗奈)が遊女らと一緒に顔見世の踊りを披露する場面から始まり、遊女たちの艶やかな踊りが目を引く。中には兵庫と荒武者隊が遊女たちを応援するために、ピンク色のサイリウムを持って“ヲタ芸”をパフォーマンスする場面など、テンポのよいコミカルな演出には思わず吹き出してしまう。沙霧が手当てのために奥へ引き連れられるシーンで再度スクリーンが閉じ、舞台が回転――。
――またも舞台が変わり、目の前には“無界屋”の裏手にある小川の風景が広がる。小川のせせらぎや暗闇に浮かぶ月、木々が生い茂る森など、目の前に広がるしんとした風景が持つリアリティはすさまじく、その場の空気感を肌で感じ取れるかのよう。ここで亡くなった一族の魂を弔う沙霧と、それを見守っていた捨之介は何者かの気配に気づき身を隠す。
遊女に化けていた髑髏党の女が、無界の里の主である無界屋蘭兵衛(向井理)に切り殺されるところを目撃してしまった捨之介は飛び出すが、思わぬところで蘭兵衛と鉢合わせ、お互いの姿を見てびっくり。2人の関係性が明らかになる無界屋の中へ一行が戻ってゆくところで、プレスコールは終演した。否が応でも次なる展開が気になる、絶妙な演出だ。
「ONWARD presents『髑髏城の七人』Season風 Produced by TBS」は11月3日まで上演。10月5日には全国76館でライブビューイングも行うことが決定しており、惜しくもチケットを逃してしまったという方も『髑髏城の七人』の世界を堪能することができる。本公演でしか味わえない空気感や新感覚の演出を、ぜひこの機会に体感してみてはいかがだろう。
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