elements night ~sunday night session~
6/26(日)日比谷野外大音楽堂
<artists>KREVA / LITTLE / MCU / SONOMI / UL / JMC(ジュミッチ) / 千晴 / KICK THE CAN CREW / 小西真奈美
<musicians>岡雄三(Bass) / 木原健太郎(Piano) / 熊井吾郎(DJ & MPC) / 白根佳尚(Drums) / 瀧田敏広(keyboard) / Juny-a from FIRE HORNS(Sax) / 馬谷勇(Guitar) / 小林知弘(Viola)
<guest>増田有華
2016年6月26日(日) 日比谷野外大音楽堂
REPORT:三宅正一
PHOTO:curly_mads
6月26日(日)に日比谷野外大音楽堂にて「elements night〜sunday night session〜」が開催された。まず、このパーティが企画された背景から説明しよう。
KREVAやKICK THE CAN CREWなどが所属するプロダクション(有)エレメンツの自社スタジオである「monday night studio® 大橋」が、今年2月末に建物の老朽化による取り壊しに伴い13年間の歴史に幕を降ろした。それを受けて、スタジオの音や空気を焼きつけるべくエレメンツ所属のアーティスト―KICK THE CAN CREW(LITTLE、KREVA、MCU)、SONOMI、JMC、千晴、女優の小西真奈美、ミュージカル女優の綿引さやか―さらにスタジオに縁深いミュージャンやエンジニアが総結集し、スタジオトリビュートアルバム『monday night studio® session』が制作され、6月8日にリリースされた。アルバムのテーマは、ジャズ。各ラッパー/ボーカリストが手を取り合い、7人編成の生バンド+DJ熊井吾郎をバックに往年のジャズマンたちが残した名フレーズを引用しつつ、フレッシュな息吹に満ちた全10曲を作り上げた。そのリリースパーティとして開催されたのが、「elements night〜sunday night session〜」である。
ちなみにKICK THE CAN CREWが日比谷野音のステージに立つのは、活動休止前最後のライブとなった「KICK THE CAN CREW 旅人〜STEP IN THE DAY〜」以来、12年ぶりとなる。また、約1年ぶりのライブステージ登場となるKREVAのパフォーマンスにも大きな注目が集まった。
会場には開演前からオーディエンスの期待感が充満していた。まずバックバンド+熊井吾郎がステージに現れ、続いてMicchiy(JMC)、千晴、SONOMI、MCU、LITTLE、KREVA、小西真奈美、JUMPEI(JMC)が登場(綿引さやかは舞台出演のため欠席)。そう、いきなり全出演者がステージに立った。1曲目はこのパーティのために制作されたKICK THE CAN CREWの「タカオニ2000」をリメイクした「タカオニ2016 春」。「タカオニ2000」をベースに各アーティストの楽曲の一部分をサンプリング的にピックアップし、それらがバンドアンサンブルとスクラッチによってシームレスに紡がれていく。この“シームレス”というのがパーティの重要なキーワードで、アーティストからアーティストへバトンが渡っていくようにライブが展開されていった。「タカオニ2016 春」を経て、そのまま全出演者で『monday night studio® session』の実質的なリード曲といえる「虹」をプレイ。心配された雨も降ることなく、心地よい天候に恵まれた日比谷野音の上空に爽快なラップやメロディがリズミカルなマイクリレーによって解放されていく。
ここから、アルバムの制作とパーティの演出を指揮し、その充実感と日比谷野音のステージに立つ喜びを噛みしめるようなステージングを見せた千晴、エレメンツ期待の若手ユニットらしく溌剌(はつらつ)たるラップと歌声を聴かせてくれたJMC。
ジャンルを超越した女性シンガーとしての堂々たる風格を示したSONOMI、「nukumori」や「いいわけ」といったメロディアスなソロの代表曲を披露したMCU、ベテランラッパーの揺るぎないスキルを見せつけたLITTLE、MCUとLITTLEのユニットならではのリリカルなポップネスを響かせたULという流れで、パーティは進行していった。
オーディスエンスからの熱視線をひときわ浴びていたのが、続いて登場した小西真奈美だ。「今日が人生初ライブなんです」と本人は緊張気味に語っていたが、なんのなんの、長年の女優業で培った表現力を存分に感じさせる歌声とラップでKREVAのカバー曲である「トランキライザー」を完璧にやり切った。会場一体の感嘆が入り混じった大きな拍手が彼女に送られた。
ここで小西が「次はKREVA!」と紹介する。しかし、ステージに登場したKREVAは小西に「まだここに残ってほしい」とリクエスト。KREVAがオーディエンスに「せっかくなので、普段なかなか聞けない曲を、今日見に来てくれた人に聴いてもらおうかと思っています」と告げる。鳴らされたのは、「生まれてきてありがとう」。オリジナル音源では、さかいゆうが担当しているフックのメロディを小西が歌い、KREVAがメロウなラップで応える。オートチューンのエフェクトがかかった2人のボーカルはナチュラルに調和していた。
ステージにはさらにSONOMIと、KREVAの新しい音楽劇「最高はひとつじゃない」で名演を見せた女優の増田有華登場。KREVAは3人の華麗な女性コーラスをバックに「王者の休日」を、最後は増田有華とSONOMIの2人を従えて「SWEET SWEET メモリーズ feat.SONOMI」をライブで披露した。
ひとりでステージに残った増田有華は、「KREVAさんは神様のような存在だと思うんです」と彼に対する感謝と敬意を述べ、トリビュートアルバムでKREVAのカバー曲「ひかり」を歌った綿引さやかに代わり、メロディの細部までオーディエンスの心に染み入るような様相で「ひかり」を増田有華として初のステージで堂々と歌い上げた。
いよいよ迎えたトリを務めたのは、KICK THE CAN CREW。“10”から始まったカウントが“0”になった瞬間にLITTLE、KREVA、MCUの3人が飛び出すようにステージに登場し、1曲目の「マルシェ」へ。おなじみのコール&レスポンス〈上がってんの? 下がってんの? 皆はっきり言っとけ!〉〜〈上がってる!〉が、夕暮れ時をすぎて薄暗くなってきた日比谷野音に響き渡る。以降、「イツナロウバ」、「アンバランス」という鉄板の名曲を立て続けに投下し、本編が終了。
アンコールに応えて再登場したKICK THE CAN CREWは「タカオニ2000」をパフォーマンス。オーラスは、KREVAが全出演者をステージに呼び込み、増田有華も交えてこの日2度目となる「虹」を皆で交歓するようにマイクリレーした。こうして、まさにプレミアムな一夜限りのパーティ「elements night〜sunday night session〜」は大団円を迎えた。