ペルシカリア 5周年ワンマン「窓に映るのは君といた街」
2025年3月19日(水) 下北沢シャングリラ
開演時間となり、BGMが止むと観客の拍手に迎えられ、仄暗いステージにメンバーが登場。ドラムを囲んで円陣を組むと、SEもない無音の状態で粛々とスタンバイする4人。観客の拍手と矢口が爪弾くギターと感傷的な歌声が静寂をやぶり、1曲目「声」で始まったこの日のライブ。会場中が息を呑み見守る中、中村達也(Dr)、中垣(Ba)が丁寧に音と気持ちを重ねて、フルギヤ(Gt)がギターソロで高ぶる感情を表現すると、バンドサウンドに乗せて気持ちを開放していく矢口のボーカルにフロアから拳が上がり始める。
気付けば全員の拳が上がっていたフロアに、「ペルシカリア、よろしくお願いします」と挨拶した矢口が「今日、俺たちが間違いないって証明しに来たんじゃない。オマエらが間違いないって証明しに来た!」と叫び、間髪入れず始まったのは彼らの代表曲といえる「さよならロングヘアー」。活動初期に演奏されていたアレンジのイントロに歓声が上がるとアグレッシブな演奏に観客が前方に押し寄せ、フロアが瞬時に熱気で包まれる。
続く「ショートカット」に合唱が起きると、「恋心納品日」にクラップや歌声を合わせて、「ビビって」に熱い拳を突き上げてと、矢継ぎ早に放たれるアップテンポな楽曲たちにライブ序盤からクライマックスさながらの盛り上がりを見せるフロア。1曲目から観客の心をガッチリ掴んで、湧き立つ感情や高揚感を共有して。バンドと観客の気持ちをひとつにして構築していったこの日のライブは、ワンマンの理想形といえる。
MCでは「ホントに楽しみより恐怖が勝ってました。目の前にいてくれてありがとうございます」とそこにいる全ての人への感謝を告げると、「600人、かぁ……」と超満員のフロアを眺めてしみじみ呟いた矢口。「120分、本気でやります。俺たちの本気に付き合ってください」と意気込みを語り、「おもいでばなし」、「いびき」とミディアムな曲が続くと、たっぷり気持ちを込めた歌と演奏が会場を暖かく包み込む。
再びフロアが熱を上げた「ハウオールドアーユー」ではメンバー紹介から、フルギヤと中垣がギターとベースの掛け合いで魅せ、超絶プレイに歓声が上がる。さらにヒートアップするフロアに「離愁」を叩きつけ、「俺のこと、ドキドキさせてくれよ!」とハイテンションで迫る矢口に、観客が熱い拳と声を上げて応える。曲の良さはもちろん、各パートのスキルの高さや、この4人だからこそ生まれるグルーヴや高い熱量もペルシカリアの魅力。メンバーチェンジを経て、引き寄せ合うように集結したいまの4人だが。ここに至るまでの変遷の歴史も一つひとつに意味があって、最高のいまがあるのだろう。
「5年前、今日みたいな日に憧れて。紛れもなく、今日みたいな日のために「さよならロングヘアー」を出しました」と結成時を振り返り始まったMCでは、「俺、みんなのこと一人ぼっちにしたい。一人ぼっちは怖いし寂しい辛い、けど自由。何を抱きしめてもいいんだよ」と語った矢口。「俺はこの5年間、一人ぼっちで抱きしめてきたものを全部、目の前にいるあなたたちにぶつけに来ました。「全員救います」とか言いません、全員が平等に孤独になりましょう。ライブハウスへようこそ!」というハッとする言葉で始まった曲は「歓声の先」。会場中のシンガロングで始まり、「600人の一人ぼっちと、なにかをずっと探してた。そこに答えなんてないんだよ!」と歌う矢口の想いに応えるように、自らの意志で歌い踊り、拳を突き上げる観客はどこまでも自由だった。
すでにライブ仕様に進化していた2月リリースの新曲「右手」から、「風道」~「死ぬほどどうでもいい」を畳み込むと、「一人ぼっちって何よりの原動力になって、一人ぼっちの時に抱きしめてたものっていつまでも輝いてるんですよ。そんでもって、大事な人が出来た時、その自分が抱きしめてたものを大事な人にあげられるから、俺はみんなに一人ぼっちになって欲しいって気持ちになってるんです」と先のMCの真意を語った矢口。
続いて、「キミが一人ぼっちになった時、ペルシカリアが抱きしめられるバンドでありますように。自分自身が一人ぼっちの時、ペルシカリアを抱きしめられますように。声が出なくても新曲が出せなくてもオワコンになっても、ペルシカリアを抱きしめられるボーカルになれますように」と願うように告げ、始まった曲は「優しい人」。<優しい歌を歌えなくても 誰よりも優しい貴方でいて>と自身に言い聞かせるように、一人ひとりに伝えるように歌ったこの曲。「一人ぼっち同士で寄り添いあって生きてるライブハウス、誰も見てねぇからデッカイ声で歌おうや!」の呼びかけに、会場中が歌声を合わせるシーンはあまりにも美しすぎた。
寧に届けられるのは、ワンマンだからこそ。「みんなを一人ぼっちにしたい」の話もワンマンでなければ、きっと伝えきれなかったことだろう。続くMCでは矢口がバンドを始めた本当の理由について初めて語り、「一人でも大丈夫だと思える音楽、いま隣にいる人がもっと大事になるような音楽をやりたいなと思ってます」と、未発表の新曲を弾き語りで披露。さらに温かみ溢れた「HOME」、気持ちの重なった演奏に矢口がメンバーを見渡しながら「4人ぼっちか?」と呟いた「最初の晩餐」と続き、600人の一人ぼっちに優しく寄り添った。
「今日、みんなの顔と拳を見てたら、バンドやってて良かったと思ったし、ついて来てくれてありがとうだなと思ったし。またこれを抱きしめて、ロックバンド続けられそうだなと思いました」と、いまの気持ちに重ねるように歌った「バンドをしている」から、大合唱が起きた「タイムオーバー」へと続き、ライブはいよいよクライマックスへ。<1人じゃないって思えたのも 君と過ごした日々のおかげなんだ>と「いつからか」で改めて感謝を告げると、<さよならを言おう>と「黎明」でまた会う日を約束して本編は終演。
アンコールでは、一人ステージに登場したフルギヤが「この3年間、ペルシカリアというバンドで活動してきて……」と脱退でも告げるかのような神妙な顔で話し始めると、「フルギヤから、(ペルシカリアでは)たいぴょんに改名します!」と発表。メンバーもニヤニヤしながらステージに登場し、和やかな雰囲気から「風道」「えそらねがいごと」~「悲しみについて」と続けて披露。観客同士が肩を組み踊るピースフルな光景に「この街に憧れて良かった、この街で夢見れて良かった!」と矢口が笑顔を魅せた「東京」から、ラストは「どうしたって」でアンコールを駆け抜け、「一人ぼっちはイヤなんで、また会いましょう」と矢口が笑顔を見せてライブを締めくくる。
……と、ここで終演の予定だったのだが。鳴り止まぬアンコールと冷めやらぬフロアの熱量に、再び登場したメンバー。「5年前の俺をいま救うわ」と「17」を披露すると、「愛情完済日」でバンドも観客も残った力を出し切ってフィニッシュ。こんな夜に憧れていた矢口少年はあれから5年が経って、一人ぼっちの強さと優しさを知ってステージに立っていた。そして、ペルシカリアを必要とする一人ぼっちたちに寄り添い、その強さや優しさを振りまいていた。ワンマンを通じてそんな物語や光景を目の当たりにした時、ペルシカリアの音楽をもっとたくさんの人に聴いて欲しいと思ったし、全国の一人ぼっちに届いて欲しいと思った。大丈夫、一人ぼっちを抱きしめてくれる音楽がここにあるから。
SET LIST
01. 声
02. さよならロングヘアー
03. ショートカット
04. 恋心納品日
05. ビビって
06. おもいでばなし
07. いびき
08. ハウオールドアーユー
09. 離愁
10. 歓声の先
11. 右手
12. 風道
13. 死ぬほどどうでもいい
14. 優しい人
15. 情けない
16. ラブソング
17. (新曲)
18. HOME
19. 最初の晩餐
20. バンドをしている
21. タイムオーバー
22. いつからか
23. 黎明
ENCORE 1
01. 風道
02. えそらねがいごと
03. 悲しみについて
04. 東京
05. どうしたって
ENCORE 2
01. 17
02. 愛情完済日