JAZZBILLY「ROCK’A SWING PERFORMANCE 2024 WINTER」
2024年12月14日(土)CHELSEA HOTEL(渋谷)
「JAZZBILLYのテーマ」に乗って5人のプレイヤーと3管ホーンズがずらりとステージに並ぶ。颯爽と現れた上澤津孝が、おもむろにマイクをつかんで歌いだす。1曲目は「Bang!Bang!Bang!」だ。いかした黒のロカビリーシャツと、ご機嫌なシャッフルビート。マイナー調の「クルージングナイト」からロマンチックな「あの夏が聴こえてくる」へ、よくはずむリズムと分厚いブラス、メロディアスなピアノとギターが歌を盛り立てる。バンドは若くてイキがいい。上澤津のよく伸びる歌声も絶好調だ。
「〈Rock‘a Swing Performance 2024 Winter〉へようこそ。
今日のオープニングは、夏の公演で配ったリクエストカードにお答えしてお送りしてます」
MAGIC時代の3曲を思い入れたっぷりに歌い上げ、バンドメンバーを愛情いっぱいに紹介する。トランペット佐々木大輔、トロンボーン柏原康介、テナーサックス矢元美沙樹を、メンバーの出身地トークで盛り上げるトークが冴える。矢元のソロを大フィーチャーした「Stand Up Boy」、CHARの1978年の大ヒット曲を洒落たスウィングナンバーに仕上げた「闘牛士」、甘く切ない青春ラプソディー「美咲」。MAGICの曲は当時のみずみずしさのままに、カバーとソロ楽曲は大人の色気とノスタルジー多めに、ポップで親しみやすい踊れるロックナンバーが続く。笑顔の絶えないメンバーと、ダンスと拍手で応えるオーディエンス。いい雰囲気だ。
今年からバンドに参加したドラム河野瞬、マニピュレートをはじめアコースティックギターやコーラスなど何でもやる幡宮航太、アップライトとエレクトリックを弾き分けるベース奥野翔太、ミスターテネシアンことギター石井洋介、バンマスを務めるキーボード三浦理。メンバーを丁寧に紹介するMCに信頼がにじむ。全員が腕達者なのは言うまでもなく、特にホーンズ3名は上澤津の盟友・羽毛田耕士が書き下ろした譜面のもと、ビッグバンドの迫力をコンボで出す高度な演奏をやってのける精鋭部隊だ。頼れるメンバーに支えられてJAZZBILLYのショウは出来上がってる。
続いてのセクションはホーンズがお休み。柏原が振るスレイベルがロマンチックモードを盛り上げる「今年もまたメリークリスマス」、軽快なロカビリーソング「君にMerry X’mas」と、MAGICとソロで世に出たクリスマスソングを2曲続けて。さらに「盛り上がってくよ!」と一声、いかしたヒーカップ唱法とウッドベースのスラップ奏法でぶっ飛ばす「BE-BOP-SLAP」から「Dancin’ Dancin’ Dancin’」へ。10曲で1時間、上澤津の艶やかな声とバンドの熱演でハッピーボルテージは上がりっぱなしだ。
ここから2曲は矢元が譜面を書いたインストゥルメンタル・セッションで、上澤津の代わりに主役を奪ったホーンズが大活躍。ファンクとジャズ好きにはおなじみの「Play That Funky Music」「THEME FROM LUPIN Ⅲ」(ルパン三世のテーマ)をハイテンションでぶちかまし、革ジャンに着替えて戻ってきた上澤津と交代して「Thank You Nowhere Man」へ。爽やかなギターポップのアレンジがとてもチャーミングな曲から、素晴らしいスローバラード「八幡坂」、ノスタルジックな歌謡曲の味がする「月と廃墟」へ。スウィングやロックンロールとは趣の違うタイプの楽曲も、JAZZBILLYのライブでは大事なアクセントになってる。
特にMAGIC再後期の楽曲「月と廃墟」は上澤津の思い入れが強く、近々レコーディングの予定があるらしい。アレンジを手掛けた伊藤立、上澤津 孝、羽毛田耕士の3名が自称・JAZZBILLY TRIANGLE。続くソロ曲「琉球グラフィティ」と、正真正銘の新曲「BIG SMILE」もトライアングルによるアレンジで、「BIG SMILE」はコロコロはずむピアノのフレーズが印象的な軽快ロックナンバー。「BIG SMILE」は「スモールギフト、ビッグスマイル」という「サンリオ」の理念に共感して作った新曲だそう。「素晴らしい世界を一緒に楽しもう」と歌う、まっすぐな思いが伝わるハッピーな1曲だ。
「ここからは体力的に大変です。年齢を重ねてるのはステージ上だけじゃないからね(笑)。でもそんなの関係なくぶっ飛ばしていくので最後まで盛り上がってください」
織田哲郎のポップなメロディが輝くMAGIC曲「パステルカラーに染めてくれ」、上澤津とオーディエンスがタオルをぶんぶん回してアゲまくる、赤坂ジャズビリー楽団名義で世に出た「コモエスタAKASAKA」そして中森明菜のカバー「飾りじゃないのよ涙は」と、大ネタ続きのセットリストにフロアは熱狂。そしてラストはMAGICが織田メロディをカバーした「Someday/Somewhere」を最新のJAZZBILLYアレンジで。バンドの疾走感、ホーンズの高揚感、そしてここまで21曲歌ってまったく落ちないボーカルのテンション感。本当にタフなバンドだ。
「来年の上澤津のキーワードはBIG SMILEです」
全員揃ってカワイイ「ジャズ猫」Tシャツを着てお送りするアンコール。CDでは織田哲郎をボーカルに迎えた2024年の一押しソング「東京ストリートロッカー」は、ホーンの迫力とグレッチ・テネシアンのソロが光る真正ロカビリーの魅力あふれる1曲で、「Let The Good Times Roll」は織田哲郎のカバー。BLACK CATSからMAGICヘ受け継がれたロカビリーの血脈に大きな関りを持つ織田の曲に込めた、上澤津の熱い思いが伝わる素敵なフィナーレ。
「あと2曲、MAGICで突っ走ります。命がけでやるので命がけで聴いてください。ヨロシク」
記念写真の撮影も終えてこれで一件落着、と思ったらまだ嬉しい続きがあった。「Crazy For Your Love」「自転車」の2曲はMAGICと上澤津の音楽を愛し、今日ここに集まったファンへの一足早いクリスマスプレゼントだ。ラストを今日一番速い曲で締めくくるなんて、なんてかっこいいんだろう。全てを出し切り「よいお年を!」と手を振る上澤津の表情に充実感が浮かんでる。2025年にはきっと新曲リリースとライブが待ってる。JAZZBILLYは止まらない。ロッカスウィング・パフォーマンスは止まらない。