DISK GARAGE presents 共鳴レンサ特別編 ~See you again SHINJUKU BLAZE~
2024年7月13日(土)新宿BLAZE
【出演】SHAKALABBITS / ラックライフ / mezcolanza(O.A)
両者の競演は初ながらも、ラックライフのメンバーが高校の軽音楽部で初めてコピーしたのはSHAKALABBITSの「Pivot」であり、オープニングアクトを務めたmezcolanzaのCocomiもSHAKALABBITSは高校生の頃から憧れの存在であるなど、“共鳴レンサ”のコンセプトにぴったりのラインナップだ。それ以外にもライブハウスならではの出会い、バンドの歴史が朗らかに溶け合う、非常に有意義な時間だった。
Cocomi(Vo)を中心に、カトウタロウ(Gt)、ハジメタル(Key)、岡野いずみ(Ba)、西浦謙助(Dr)と実力派が集うオープニングアクトのmezcolanza。今年結成10周年を迎え、12月には10周年記念ワンマンを予定しているなど精力的な活動を続けている。この日はanoのツアーサポートで不在の西浦の代わりにアカシックの山田康二郎がサポートドラムを務め、色とりどりのポップソングで魅了した。
華やかなシンセが印象的なキャッチーなロックナンバー「リアリーラブリースケアリー」で勢いよく幕を開けると、恋する女子の気持ちをキュートかつ情感豊かに昇華した「ドラマティック ヒロイン」、跳ねたリズムとクラップの相性も抜群の「非恋愛シンドローム」とたたみかける。その後は「ねえねえオトコの趣味が悪い」というサビの歌詞もインパクト大のユーモラスな「イン マイ ライフ」、艶やかなメロディが映える歌謡曲テイストの「シュラ!シュラ!バー!」と楽曲の振れ幅で会場を沸かし、爽やかかつ切ない夏曲「夏花火」で締めくくる。澄んだピュアなボーカルと卓越した演奏スキルが、たくましく可憐に会場をあたためた。
ラックライフは力強さと清涼感を併せ持つ「ファンファーレ」でライブをスタートさせる。ライブハウスで培った人懐こさと頼もしさは、たちまち会場の隅々まで巻き込んでいった。「リフレイン」の後に「16年やってきたことをたくさん詰め込んで、はりきって歌いたいと思います」とPON(Vo)が告げると、ポップなロックナンバー「サニーデイ」、シリアスな情熱がほとばしる「リピート」、柔らかさと鋭さを併せ持つ「Naru」とキラーチューンを連続で披露する。観客と一緒に歩みを進めようとする瞬間もあれば、4人の音に集中する瞬間もあり、その音の満ち引きが激しさのなかに心地良さを生んでいた。
PONは高校入学当初にLOVE大石(Dr)と共に軽音楽部の見学に行った際、高3の先輩がSHAKALABBITSのコピーをしていたというエピソードを明かすと、「あの日のライブがなかったら俺たちはステージに立ってないし、ステージでいろんな気持ちをもらって歌にすることもなかった。あの日のドキドキを今も鮮明に覚えている」「あのとき俺らが感じたキラキラを俺たちで感じてほしいと思いながらステージに上がっている」と興奮気味に語る。ラックライフを観るたびに、ここまでキャリアを重ねていながらもメンバー全員からバンドを始めたばかりのときめきや高揚感が消えないバンドも珍しいと感じていたが、それが腑に落ちた。さらにこの日は活動のなかで出会い信頼を深めてきた人との縁があって、SHAKALABBITSとのツーマンが実現した。人とまっすぐ向き合ってきた彼らの真摯さが演奏に発揮されるには十分すぎる日だ。
4人のピュアネスに触発されてフロアのシンガロングが湧き上がった「軌跡」、エモーショナルなロックバラード「名前を呼ぶよ」と観客の心を揺さぶると、PONは「夢は絶対叶うわけではないけど、やり続ければもしかしたら叶うかもしれへん夢はある。これからも叶えたい夢があるので、一生懸命歌おうと思っています」と告げ、観客へとメッセージを送った。そして彼が「Hand」を歌い出すと、思いに応えるようにフロアから次々と拳が上がる。ikoma(Gt)の奏でる鮮やかな音色、たく(Ba)のメロディアスな低音、大石の躍動感あるリズムワーク、PONの荒々しさと優しさのある歌声が、会場を大きく包み込んだ。
この日の最後を飾るSHAKALABBITS は、まずMAH(Dr)がNAMBA69やFIRE ON FIREなどで活動するKo-hey(Gt)、FEELFLIPのIKKE(Ba)のサポートメンバー2名とともに登場する。3人の音にいざなわれるようにUQUI(Vo)が現れると「MutRon」へとなだれ込んだ。
UQUIとMAHが長い時間を掛けて培ってきた強固なグルーヴに、Ko-heyとIKKEのダイナミズム溢れる音が重なるサウンドは、SHAKALABBITSが新体制で帰ってきたことを観客に強く印象付ける。2022年5月1日をもってそれまでの体制での活動を終了することと、UQUIとMAHがバンドを引き継ぐことを発表し、2024年3月の『PUNKSPRING 2024』にてSHAKALABBITSはステージに帰還した。この音を手に入れるために2年という歳月が必要であったことを痛感させられるほどに鮮烈な演奏だ。
UQUIはメインシンガーとしての華やかな佇まいを持つことはもちろん、バンドメンバーの繰り出す音を全身で吸収したうえで歌を響かせる。「少年と白い犬」や「ダズリングスープ」ではバンドを引っ張っていたかと思いきや、バンドの音に身を委ねるように粘度の高いボーカルで魅せる場面もあるなど、巧みかつ奔放に音を愉しむ姿からもバンドの充実が伝わってきた。「Rooler Coaster」「SADISTIC AURORA SHOW」「mademoiselle non non」とさらにディープでポップな空気感で会場を染めていくと、スカやロカビリーなどの要素を含む軽快なロック/パンクナンバー「KARENA」「THAT THING YOU DO!」でかき回し、「SPICE!」や「Ladybug」では優しく包み込む。硬派で凛々しいライブスタイルは、観客を心の奥からを奮わせていた。
10曲を披露したタイミングでUQUIは、「セットリストを考えてると、明らかに(楽曲の)物語の主人公が情緒不安定でさ(笑)。どう考えてもヤバいやつなんだけど、すごく楽しげなんだよ。それが伝わってくれたらうれしいです」と話す。そして新体制でのバンド活動の充実を語り、SHAKALABBITSはどれだけ形が変わろうともなくしてはいけないと思っていること、自分とMAHがいればいろんな主人公の心の機微を綴った曲たちを届け続けられること、現体制で曲作りを始めていることなどを告げ、「このメンバーで続けられたら幸せなので、どうぞよろしくお願いします」と頭を下げた。
「Soda」「Pivot」とフレッシュなムードで会場を魅了すると、UQUIは最後に「MONSTER TREE」をみんなで歌いたいと呼びかける。そしてこの曲が2日前に訃報があったB-DASHのGONGONが好きな曲であること、彼が旅立ったことへの寂しさと悲しみ、みんなと一緒に彼にこの曲を届けたいという思いを伝えた。観客も気持ちを重ねるように高らかに歌い、UQUIは時折涙ぐむ様子を見せる。全員が一丸となって、遠くの空にいるGONGONへと思いを届けるような歌と演奏は切なくもあたたかく、愛に溢れていた。
ライブイベントとはおしなべて、それを作る一人ひとりの音楽人生が交わったからこそ生まれるものかもしれない。だが『共鳴レンサ特別編』ほどそれを意味深く感じられた日は稀有である。BLAZEは14年弱の歴史に幕を閉じるが、SHAKALABBITSはこの夏全国6公演を回る『SHAKALABBITS LIVE TOUR 2024 "BACK IN THE SODA!”』が始まり、ラックライフも11月に『ラックライフ QUATTRO TOUR 2024』が控えている。続けてきたからこそ生まれる出会いや叶えられる夢もあれば、いつまでも色褪せない過去もあり、失われるものも記憶には残り続ける。3バンドの軌跡と生き様が、健やかに花開いた一夜だった。
SET LIST ※出演順
【mezcolanza】
01.リアリーラブリースケアリー
02.ドラマティック ヒロイン
03.非恋愛シンドローム
04.イン マイ ライフ
05.シュラ!シュラ!バー!
06.夏花火
【ラックライフ】
01.ファンファーレ
02.リフレイン
03.サニーデイ
04.リピート
05.Naru
06.軌跡
07.名前を呼ぶよ
08.Hand
【SHAKALABBITS】
01.MutRon
02.少年と白い犬
03.ダズリングスープ
04.Rooler Coaster
05.SADISTIC AURORA SHOW
06. mademoiselle non non
07.KARENA
08.THAT THING YOU DO!
09.SPICE!
10.Ladybug
11.Soda
12.Pivot
13.MONSTER TREE