YATSUI FESTIVAL! 2024
2024年6月15日(土)16日(日)
Spotify O-EAST / Spotify O-WEST / Spotify O-nest 5F / Spotify O-nest 6F/ Spotify O-Crest / duo MUSIC EXCHANGE / club asia / LOFT9 shibuya / WOMB
2日目も、O-EASTでのDJやついいちろうのプレイからスタート。「“トロピカル源氏”で客にダメ出し」のくだりなどはいつもどおりだが、この日はなぜか、巨大やつい人形の登場は、なかった。
そしてもうひとつ「いつもどおり」ではなかったのが、「SPECIAL SECRET GUEST」による開会宣言である。
「この方たちの漫才を小学一年生の時にテレビで観て、あまりのかっこよさに、お笑い芸人を目指しました。北野武さんです!」というやついの紹介で登場したのは、松村邦洋。黒いスーツに白いシャツ、つまり本物がフォーマルな場に出る時のあのスタイルでのパフォーマンスで──松村邦洋の芸がどういうものか、一応把握しているつもりの自分が観ても──とんでもなくすばらしかった。
特に、本家がスピーチの時そうするように、巻紙を広げて行った開会宣言。ギャグの入れ方や「貶めながら褒める」手法など、本物のそれと寸分違わないクオリティ。読み終えたたけし、じゃない松村、「こいつがね、ほんとの芸人だからな。今度の映画はやついメインでやろう」。「泣きそうになりますね、モノマネなのに」と応えるやついであった。本当に涙ぐんでいた。
続いてのO-EASTのYOUR SONG IS GOODよりも、少し遅れて始まったのは、O-Crestの一番手、トップシークレットマン。「FESTA!!!」のイントロに続いて、やついの声でアクト名がコールされるジングルに、ボーカルのしのだりょうすけ、大喜び。「うれしい! もう一回流してもらっていいですか?」とスタッフにリクエストし、本当にリピートしてもらってからスタートする。
さらにその後にスタートしたduoの藤巻亮太も、初出演。今日は3人編成のバンドセットである。
ソロの代表曲「マスターキー」や、レミオロメンの「雨上がり」や「粉雪」を歌ってくれる大サービスっぷりに、オーディエンス、大喜び。ラストの「3月9日」の後半では、藤巻が歌いながら腕を振り、全員がそれに倣った。
O-WESTの二番手、POLYSICSもやついフェス初出演である。そのひとつ前、ポリと同じ事務所のthe telephonesも初出演だった。というわけでハヤシヒロユキ、3曲を演奏したところでの恒例の挨拶=「トイス!」のコール&レスポンスの最後に、the telephonesのそれ=「ディスコ!」も足す。
後半のMCではハヤシ、フミに「このあと何観るの?」と訊く。「モーモー(ルルギャバン)かな」と答えるフミに、「俺はまーちゃんごめんね(ママタルト)。あと、TENDOUJIと天童よしみ。なかなか観れないよ? 天童ズは」。うまい。
O-Crestの三番手だったthe dadadadysも、彼らと同じマネージメントだが、正直、自分が倒れるかと思った、ものすごい人口密度とものすごい熱気で。1980年代のライブハウスのような酸欠っぷり。「行儀いいままでは楽しくないわけよ!」「怒られないギリギリの遊びを最後までしましょう!」などと、その加熱状態に油を注ぎ続ける小池貞利だった。
O-EASTの神聖かまってちゃんも、1階のドアを封鎖し、2階から参加者に入ってもらうくらいの大盛況。「ギャー!」と叫んでは「まだまだだなおまえら! なめとんのか!」などと、アオりと悪態が混然一体となった奇声を発しまくるの子だが、ライブが進むにつれ「おまえら最高だ、もういいよな終わっても……いや、まだ帰りたくない!」などと言い始めた末に、最後の曲が終わり、メンバー3人がはけても、しゃべり続けて帰ろうとしない。本気で帰りたくないのだと思われる。見かねたメンバーたちがソデから出て来て、連行されて行った。
2日目の『やついフェススペシャル歌合戦』は、司会は同じくやつい&堂島孝平、審査員はDJ KOOとしまおまほ。今日のしまおまほは、『シティハンター』の冴羽獠コスプレで、海坊主まで従えている。
ひとりめの出場者は、流れ星☆のちゅうえい。持ちネタである『ドラゴンボール風居酒屋』をやついに何度も振られてひとりでくり返し、さらにやついのアドリブでニルヴァーナの「Smells Like Teen Spirit」を振られて二回トライ(して「無~理~」で落とす)。ヘトヘトになってから、THE YELLOW MONKEYの「バラ色の日々」を歌い上げた。
二番手は、昨年は出場がなかったASH&Dオールスターズ(阿佐ヶ谷姉妹&ザ・ギース&ラブレターズ)。ギース高佐の (ハーモニカではない方の)ハープと、ラブレターズ塚本のアサラト(アフリカのパーカッション)で、nobodyknows+の「ココロオドル」を、見事な歌とラップと歌で聴かせ、曲中も曲の後も大拍手を浴びた。
最後は2代目AKB48総監督、横山由依。「恋するフォーチュンクッキー」でオーディエンスと共にダンスしながら歌い、フロアの雰囲気が一気に華やぐ。
そして、昨年病気で出演がキャンセルになった大事MANブラザーズバンド・立川俊之がゲストとして登場、「それが大事」でさらにフロアをひとつにした。
MVPに輝いたのは、ちゅうえい。DJ KOO曰く「2組は、来年も観たい、というのがあった。ちゅうえいさんは…ピークでしたねえ」ちゅうえい「え、優勝ってこんな気持ちになるもんなの?」。この日も、Sundayカミデが加わっての「FESTA!!!」で終了した。
O-nest5階のkurayamisakaも、酸欠レベルのおそろしい満員……いや、そもそも1日目のレポでも書いたように、特にO-WEST/O-nest/O-CRESTの3会場は、ほぼ1日中入場規制がかかりまくりであり、その事実が今年のやついフェスが過去最大動員であることを示していたが、それにしても!と言いたくなる状態。
ボーカルの内藤さちが、何度も何度も「ありがとう」とか「ほんとにうれしいなあ」と、お礼を述べるほどである。「私たち、3ヵ月ぶりのライブなんですが、こんなに来てくれてうれしいです」。
WOMBで16:40からのfishbowlは、静岡発のアイドルグループで、2年連続のやついフェス出演。13:30からタワーレコード渋谷店でリリースイベントを行ってからのダブルヘッダーである。「茶切cute side」や「熱波」などの8曲をパフォーマンス、参加者を魅了した。
開催前の記者会見にも、やついと共に出席した天童よしみは、バンドを率いて登場(ドラムはそうる透!)。最初に大ヒット曲「珍島物語」でオーディンスをロックしてから、「みなさん、演歌・歌謡曲って聴いたことあります? 後半はオリジナルでいきますが、最初はみなさんに聴いてもらいたい私の好きな歌、カバーアルバムに入っている曲から」と、クレイジーケンバンドの「タイガー&ドラゴン」、やしきたかじんの「やっぱ好きやねん」と「なめとんか」、美空ひばりの「川の流れのように」、山下敬二郎の「ダイアナ」を連発。
フロアはワンコーラス終わったところでどーっと拍手が湧く、等の熱いリアクションを返す。ラスト、「昭和かたぎ」を経ての「あんたの花道」では、すごい音量の手拍子がO-EASTに響いた。
続く「お笑いコーナー」では、ママタルトの登場で「キャー!」と黄色い声が上がったり、エレ片がBTS(防寒対策したいんだ)のネタで爆笑を取ったり、にゃんこスターが音響さんとの行き違いでネタの具合がカオスになりつつも、客を舞台に上げて3人でコントをやって大拍手&大歓声を浴びたりする。
大歓声と言えば、O-EASTのドレスコーズ、志磨遼平が登場し、「ビューティフル」を歌い始めた瞬間の大歓声も、すごいものがあった。ブレイクで志磨遼平がフロアにマイクを向けると、みんな大シンガロングで応える。
「やついフェスは9年ぶりです、ご無沙汰しました。私たちは今日はとても楽しんでいます。ロックンロールを好きな人が、こんなに集まってくれてありがとうございます。一緒にめちゃくちゃやろう、ランランモリー!」
という言葉から突入した「すてきなモリー」でも大合唱……というか、終始、フルハウスのO-EAST全体が、波のようにうねっていた。
「やついフェス、毎年のように出てるんですけど、初めてトリを務めさせていただきました。仏教的に言うと13回忌。我々は35周年」
と、和嶋慎治が喜びを表した人間椅子は、「フェスということでね、いつもやらない曲をやってみましょう」と、2曲目で「サバス・スラッシュ・サバス」をプレイ。1999年のアルバム『二十世紀葬送曲』の収録曲である。7曲を演奏し、トリの責を果たしたが、ステージを下りてもハンドクラップが止まず、アンコールで「なまはげ」を追加した。
「月光荘」「マジカルダンサー」「サイン」「時をかけるメロディー」「彼女のジャズマスター」といった最新アルバムからの曲、2020年の初ソロアルバムからの「Kapachino」、そしてandymoriの「Life Is Party」「革命」「すごい速さ」「Sunrise&Sunset」「光」で、O-EASTの1階も2階も終始熱狂させた小山田壮平(band set)が、今年の大トリ。
アンコールで小山田壮平は、「つらい時も、うれしい時も、苦しい時も、やついさんにはいつも支えてもらって感謝してます。やっつんありがとう」という言葉を、オーガナイザーに贈った。そしてオーディエンスに「ファンファーレと熱狂」をプレゼントした。
そこからのDJやついいちろうは、「everythings is my guitar」「ユートピア」「FOLLOW ME」「クラブナイト」と、andymoriをスピンしまくる。
「クラブナイト」の前には、「ちょっと前に壮平たちとクラブのイベントをよくやってた、その時に作ってくれた曲です」という解説が入った。そして今立進・片桐仁と「FUNKY FUN!!!」を歌って、DJタイムを終える。
「ここでみなさんに報告です。やつい人形、昨日動かしすぎて首が折れました。今年いっぱいで見納めになるかもしれません」
と言ってから(だから最初に出て来なかったんですね)、残っていた出演者たちと、「今日、このためだけに来てくれた」曽我部恵一がステージに。「月が今夜笑ってるから、ぼくらそっと東京の空を見を上げる」を曽我部のギターで歌唱→記念撮影で、2024年のやついフェスの、全行程が終了した。
……いや、してなかった。その直後から、『やついフェス打ち上げ サッポロ生ビール黒ラベルで乾杯!』の生配信があったのだ。このような打ち上げ企画は、2021年に始まって、今年で四回目である。街裏ぴんく(幹事)、でか美ちゃん(幹事補佐)、エレキコミック、曽我部恵一、Sundayカミデの6人が出席した。
そこで曽我部が「お客さんを見てて、世代が入れ替わっているような気がした。若い人たちがいっぱいいて」と言ったのに応えて、やついが今年から「U-20チケット(20歳未満は安い)」を発売した話をする。
即完したそうで、こんなに観たいと思ってくれる10代がいたんだ、ということに気がついたという。「来年は高校生のバンドとかも出られるとおもしろいかもしれないね」と曽我部。
で、最後に、やついのリクエストで曽我部が「いろんなことに夢中になったり飽きたり」を弾き語りしたのだが。
去年はサニーデイのライブを観て、O-EASTのステージ上で号泣したので、今年は酒量を抑えて2日間正気を保った今立進が、曽我部の歌が終わった段階で、黙って涙を流していることを、街裏ぴんくとでか美ちゃんが指摘。一同、驚愕する。
その後、サッポロ生ビール黒ラベルで乾杯して生配信を終える時も、まだみんな「かんぱーい!」と缶を突き出している段階で、いち早く缶を口元に持っていく今立さんであった。