V.W.P(花譜/理芽/春猿火/ヰ世界情緒/幸祜)
「神椿代々木決戦二〇二四」 DAY1
V.W.P 2nd ONE-MAN LIVE「現象II - 魔女拡成-」
2024年1月13日(土) 国立代々木競技場第一体育館
V.W.Pが個々でパフォーマンスをするオンラインライブ「SINKA LIVE SERIES」で、彼女たちはなぜ音楽が必要なのか、音楽を通して伝えたいメッセージとは何かと自問自答を繰り返し、アーティストとして真正面から音楽と向き合ったという。その集大成として開催された「現象II-魔女拡成-」で、5人は“進化”と“深化”を証明するパフォーマンスを見せた。
オープニングムービーと、自身のアイデンティティを落とし込んだポエトリーが流れると、バンドメンバーとカルテットによる計9人のインスト演奏に導かれ5人が登場。ポップな振り付けも痛快な「共鳴」で晴れやかに決戦の口火を切った。
柔らかく少女性のある声で聴き手を包み込む花譜、肩肘張らない歌声で余韻を作る理芽、ラップを得意とし豊かな表現力で楽曲をカラフルに彩る春猿火、聴き手一人ひとりの心の奥に入り込むような気魄を感じさせるヰ世界情緒、しなやかに躍動したグルーヴで観客を巻き込んでいく幸祜と、異なるボーカルスタイルを持つ5人。ユニゾンでは強度を生み、ハーモニーでは変幻自在に様々な色を作り出す。「輪廻」では全員で観客に呼び掛けて観客を盛り上げ、「玩具」は遊び心のあるボーカルを響かせるなど、パワフルなロックナンバーを立て続けに披露して会場を焚きつけた。
MCでは会場の広さに感動を示し、雪降るなか会場に訪れた観客を慮るなど、和気あいあいとした空気のなか観客と意思疎通を図る。バーチャルとリアルという隔たりを感じさせないのはテクノロジーの観点だけでなく、彼女たちが自身の意思でステージに立っていることが大きな要因になっていると言っていいだろう。彼女たちの外面はバーチャルかもしれないが、存在はリアルなのだ。
5人のボーカルがグラデーションを描くように色を放った「変身」、壮大なロックバラード「再会」、感情をむき出しにするようなボーカルが会場との一体感をさらに引き起こした「定命」と届けると、「花魁鳥(エトピリカ)・改」への衣装チェンジを挟んで理芽と各メンバーのツインボーカルパフォーマンスのセクションへ。理芽のボーカルがどんな楽曲とも、どんなボーカリストとも見事に調和することを再確認する。自身の表現を極端に変えずともそれが実現してしまう彼女の天性のバランス感覚に唸った。花譜との「魔的」、幸祜との「素的」、ヰ世界情緒との「不的」と「的」シリーズが続くなか、春猿火とは新曲「私的」を初披露。最後は5人全員で「飛翔」を歌い、爽やかな情熱で会場を包み込んだ。
続いてはKAMITSUBAKI STUDIOに所属するアーティストとのコラボレーションステージ「ヴァーサス」。ラジオ番組のパートナーであるCIELと共に初披露曲「此処で咲かせて」を歌い上げた幸祜は、身のこなしもしなやかで麗しい。理芽は2023年に連名でアルバム『imagine』をリリースしたGuianoと共に、同作に収録されている「絵画のように美しくいたかった」をスタイリッシュに色づける。ヰ世界情緒はVALISと6人でキュートかつセクシーなダンスも交えて新曲「異世界転調リクヱスト」を、春猿火は梓川とパワーを衝突させるように2ndアルバム『心獣』の先行シングル曲「friction(Remix)feat. 梓川」を、花譜はAlbemuthと共に儚さと強さが宿る声で新曲「千年奏者」を歌唱。5組それぞれの“ヴァーサス”に、会場が熱中した。
「THE PARTY」のセクションではリミックス×VJとダンサーによる「V.W.P DISCOTHEQUE」、V.W.Pの歌声とビジュアルをベースに生まれた“音楽的同位体”の5人組ユニット・V.I.PとVALISを加えた計15人でV.W.Pの新曲「プロトコール」、V.I.Pのために作られた新曲「機械の声」を披露する。ヰ世界情緒とのコラボレーションステージでは3Dモデルで登場したVALISも、このステージではオリジンの姿でダンサーとして登場。“会合”と“団体”それぞれの意味で“PARTY”を実現させるだけでなく、V.W.PとV.I.Pの10人で歌うからこそ歌詞に描かれたメッセージも、様々な意味合いをもって聴き手の心の奥まで届く。祝祭感から没入感までも味わえる、圧巻のセクションだった。