【声出し公演】E.Pウソつかない
2023年7月5日(水)6日(木)Zepp Shinjuku(TOKYO)
※レポートは6日に実施
「2023年、我々を苦しめていた、あのなんたらコロなんとかウイルスから、いよいよ解放! 都知事百合子よ、俺たち今夜、密になってもいいですか? ツイン怒号システム、解禁してもいいですか!?」
「耐えに耐えたりこの3年、溜まりに溜まったその鬱憤、いよいよ今夜、歌え、叫べ、歓喜に震えよ! 今宵のボーカルはもちろんサイボーグジョー、そしてフロアにお集まりのあなたたちです、ジャストミート!!」
普通にチケットを買って観に来たら、影アナをやらされた(と、アンコールで登場して愚痴っていた。曰く「チケットを買う前にオファーしてください」) BAN BAN BAN鮫島一六三によるこんな言葉から、ザ・リーサルウェポンズ「E.P.ウソつかない」Zepp Shinjuku(TOKYO)2デイズの2日目はスタートした。
「ほんとにね、3年と43日ぶりなんですよ。本気の声を出せる、マスクなしでオッケーっていうのはね。ソニーと契約を交わして1ヵ月後にコロナだったからね。けっこうね、笑えなかったんだよね。いけるぞー、やっと人生が始まった! と思ったらね」
そして、アンコールでは、アイキッドは、そんな言葉を口にした。実感がこもっていた、これ以上はないほどに。
そのソニー・ミュージックとの契約直後にスケジュールが切られていたが、コロナ禍の影響で2020年・2021年と二度延期になった末、中止せざるを得なかった『E.P.TOUR 2020 ~E.P.ウソつかない~』のリベンジ公演が、このZepp Shinjuku(TOKYO)の2デイズである。
全曲、画面に歌詞を出し、オーディエンスが「一緒に歌う」というよりも「合いの手の叫びを入れる」、つまりサイボーグジョーとポンザー(ザ・リーサルウェポンズファンの呼称)の「ツインボーカル」ではなく「ツイン怒号システム」で、ライブが進んで行く。
という、「サイボーグジョーとアイキッドとポンザーが一緒にライブを作る」「歌わないアイキッドよりもポンザーの方が重要な時もある」くらいの、極端なオーディエンス参加型で成り立っているのが、ザ・リーサルウェポンズのステージである。
ゆえに、アイキッド曰く「片腕だけでボクシングやってるような3年間」を終え、いくつかの「お客様が声出していいライブ」を経て、「遂に制限ゼロ」になったこのZepp Shinjuku(TOKYO)2デイズは、その時点でもう成功が約束されていた。
というのは、わかった上で観たつもりだったが。それでも、圧倒された。「ア・ニ・キ!」コールから始まった1曲目「80年代アクションスター」では「エイドリアン! エイドリアン!」「アイル ビー バック! アイル ビー バック!」はもちろんのこと、「家族ねじ込む」「戦車落札」あたりも、すっごいボリュームでコールが飛ぶ。
「東海道中膝栗毛」では、曲前の三三七拍子の練習の段階から、各々が力の限りに両掌を打ち鳴らす。「押すだけDJ」も然りで、後半の「ウサンくさい!」「ペテンくさい!」までポンザーの叫び、全力である。
「半額タイムセール」で、最初の「半額! 半額!」のコールが、「オイ! オイ!」に変わっていくさまも……って、このままだと全曲書いてしまいそうなので、このへんでやめます。
あ、でも、11曲目「夏の日のメガドライブ」で、持参したSEGAメガドライブを振り回している人が2~3人いたことには、触れておきたい。サイボーグジョーがそれを指摘すると、アイキッド、「すばらしい! 実は今日ね、SEGAの社員さんが来てますからね」と喜ぶ。
「任天堂のスーファミをやった人は、だいたいスクスク育ってるんだ。SEGAハードを選ぶっていう時点で、人生のハードモードっていうんですか? そこがいいんですよ! メガドライブ、コミックボンボン、ヘヴィメタルですよ!」
ばかばかしいこと、くだらないこと、「言ってどうするそんなの」みたいなことを、みんなで声を揃えて力の限りに叫ぶと、楽しい。気持ちいい。すっきりする。時と場合によっては、魂が解放されたような気持ちになることすらある。
というのがザ・リーサルウェポンズの発明だが、要は、その究極形のようなライブだったわけである。
サイボーグジョーとアイキッドのふたりも、そんな熱いポンザーに応えるべく、大会場ならではの演出を仕込んでいて、随所で繰り出した……いや、「大会場ならでは」じゃなくて「いつもの」演出も多々あったが。
2曲目の「ポンズのテーマ」では、手持ちCO2をフロアに噴射する(説明するのも野暮ですが、曲調が「ゴーストバスターズ」風なので、あの映画でゴーストを捕まえる時に使うやつのオマージュだと思います)。
「ビッグビッグミラーボールあるから、ディスコソングやりたい!」というサイボーグジョーの叫びで始まった「マハラジャナイト」では、天井のまんなかでバカでかいミラーボールがキラキラと回る。
10曲目の「シェイキン月給日」では、うまい棒をばらまく。本編ラストのブロックの最初=12曲目の「昇龍拳が出ない」では、フロアにいくつもの大バルーンが投げ込まれ、ポンザーたちの上をポンポン転がった。
徹底的にくだらないけど、こんなにくだらないことを、みんなで一緒に、全力でやれていること自体が、もう大変に幸福。ばかばかしいのに涙が出そう。いや、ばかばかしいからよけい出そうなのかも。
という空気になることを読んでそうしたのか、それとも単に曲順的に他に置きどころがなかったからなのかわからないが、本編ラストの15・16曲目が「さよならロックスター」と「雨あがる」だったのには、何かもう、本当にやられた。
2020年10月に亡くなった、エドワード・ヴァン・ヘイレンに捧げられたこの曲、ヴァン・ヘイレンのファンとして、聴くたびに絶賛したくなる。「JUMP」のアレンジの構造を借りて、まったくパクリではない曲に仕上げているところに、アイキッドの愛を感じるので。サビでのポンザーのシンガロングにも、とてもグッとくるものがあった。
「ウィルスと戦った全ての人へこの曲を捧げます。深い感謝と尊敬の念をこめて」
「雨あがる」では、画面にこんな言葉が映し出された。ザ・リーサルウェポンズらしくない真摯さだが、伝えずにはいられなかったのだと思う。
アンコールで「都立家政のブックマート」をやったあと、11月11日(土)両国国技館『地獄の国技館バトル』の告知映像が。サイボーグジョーが「何をしますか? どんなライブですか?」と問うと、アイキッド、「歌を歌いながら、ギターを弾きながら、人を殴るっていうね」と答える。
BAN BAN BAN鮫島一六三が呼び込まれ、冒頭で触れた愚痴で大ウケ。「チケットを買ったら出演が決まりました、ジャストミート!」。
そしてアイキッド、「3年と43日ぶりにね、あのシステムを復活させます! 15人、カモーン!」と、ポンザーをステージに上げる。「15人上がれます、15人です。なるべく女性が多めがいい、とジョーが言ってます。8人は女性でお願いします」と、鮫島が場をさばく。
ステージ狭しと並んだ15人を、ジョー「すごいなあ!」アイキッド「懐かしい感じというか」鮫島「YouTubeで観た光景ですね」と称賛してから、ラストの「キミはマザーファッカー」へ。ステージ上の15人も、ステージ下のポンザーたちも共に、終わりを惜しむように「マッスルヘッド!」「サノバビッチ!」「F! U! C! K!」と、ノドもつぶれんばかりに叫んだ。
SET LIST
01. 80年代アクションスター
02. ポンズのテーマ
03. 東海道中膝栗毛
04. 押すだけDJ
05. 半額タイムセール
06. マハラジャナイト
07. Super Cub is No.1
08. ミッションインポッシブル
09. 熱血ティーチャー
10. シェイキン月給日
11. 夏の日のメガドライブ
12. 昇竜拳が出ない
13. サイボーグメカニンジャ
14. ホッピーでハッピー
15. さよならロックスター
16. 雨あがる
ENCORE
En1. 都立家政のブックマート
En2. キミはマザーファッカー