女王蜂 全国ツアー『メフィスト召喚』
2023年7月3日(月) Zepp Haneda(TOKYO)
アヴちゃんが先生(プロデューサー)を務めた日本テレビ系のオーディション番組『0年0組-アヴちゃんの教室-』の最終回で現れた、女王蜂のアイドル=ぁゔちが、アヴちゃんに替わってボーカルを務めるのが、このツアー。
開演前に注意事項等を伝える影アナも、ぁゔちが担当。ぁゔちが「セイ!」と呼びかけると、オーディエンスが「ぁゔち!」と応えるコール&レスポンスが、その時点で、いきなり巻き起こった。
前に、2023年3月2日(木)の東京ガーデンシアターのレポでも書いたが(»こちら)、頭から最後まで完璧にパッケージされた、1本のライヴを見せる存在として、言い換えれば「複数の曲を歌って演奏する場」ではなく「ひとつの物語を表現する場」として伝える存在として、今の女王蜂は、本当にすごいことになっている。
2014年に再始動して以降の数年間は、何曲かに一回MCをはさんだり、曲間が空くタイミングがあったりする、オーソドックスな形のライヴを行っていた。が、ある日を境に、今の「曲間なしアンコールもなしMCは後半で一回だけ」で、「ライヴ1本がまるでDJプレイのよう、もしくはひとつの演劇作品のよう」なステージに変わった。
何年何月何日のあのライヴ、というふうにはっきりとは記憶できていないが、ただ、明確に「ある日」があったことは、憶えている。確か、通常のリリースツアーではなくて、蜂月蜂日だったか、アヴちゃんの聖誕祭だったか、とにかくそういう時のような、特別なライヴの時だったと思う。
1曲目、ステージを覆う幕が開くと、アヴちゃんがステージ中央で、背を向けて立っていて、そのままの形で「CRY」を歌い始める。2曲目「ファウスト」の途中までは、左を向いて歌う。そして、その「ファウスト」の途中で、ローブを脱ぎ捨てて『0年0組』風の制服姿になり、ぁゔちが登場。続く「火然ぇるミ毎」で、やしちゃん&ひばりくんが、曲に合わせて、YouTubeで公開したパラパラダンスを始めると、フロアの熱がさらに上がる。
10曲目の「犬姫」では、ぁゔちの独唱で曲が進む。後半で衣装替えをしたメンバーが戻ってきて曲に演奏を加え、その次の「傾城大黒舞」は、逆にぁゔちがはけて、インスト状態で曲が進む。そして後半で、衣装替えを終えたぁゔちが戻ってきて、歌い始めた。
それまでは、ぁゔちは制服、やしちゃん&ひばりくんはアーティスト写真と同じ衣装(法被とチェックのスーツ)だったが、その衣装替えのタイミングで、コーディネートがビシッと揃った。全員ピンクが基調のキラキラした衣装。というのも、唸らされる、かつ納得させられる演出だった。
アニメ『チェンソーマン』第11話エンディングテーマの「バイオレンス」は、6曲目。このツアーのタイトルになっている「メフィスト」は15曲目。そのカップリングである「ファウスト」は2曲目。
それら以外も、基本、近年の曲(2017年以降)を中心に、セットリストが組まれていた。昔からの人気曲は、13曲目の「あややこやや」(に改題する前の「告げ口」は2011年のセカンド・アルバム『孔雀』に収録)と、ラスト前の「ヴィーナス」(2015年の再始動アルバム『奇麗』に収録)ぐらいだったのではないか。
というセットリストにも、現在の女王蜂の姿勢が表れていたように思えた。「今を見せたい」という。現に、フロア、「昔の曲ももっとやってよ」とか「もっとジュリ扇を振り回せるような踊れる曲やってよ」みたいな空気は、皆無だった。月曜にもかかわらず超満員のオーディエンスはみんな、女王蜂に魅了されていた。
ラストは「失楽園」。地獄のアイドルであるぁゔちのライヴだから、サビで「天国なんて行きたくない」と歌うこの曲を最後にやらねばならなかった、ということだろう。
ただ、そういう、このライヴにおける必然とか、現在の女王蜂におけるこの曲の位置付けとかとは関係なく、個人的に、女王蜂の中でもトップクラスに好きな曲なもんで、ひたすらうれしかった、これを聴けて。歌詞の一言一句、メロディ、女王蜂と皆川真人によるアレンジの細部まで含めて、こんな完璧な曲、そうそうないと思う。
この曲を歌い終えると同時に、ステージ上空から、赤い糸で縛られ吊るされた8本の手首が降ってきて、ぁゔちがその中の1本と指切りをすると、サッと幕が閉まり、ライヴが終わった。
初日のKT Zepp Yokohama(5月19日)の時は、降ってきた手首、1本でした。ツアー1ヵ所につき、1本ずつ増えていったんでしょうね。と、DI:GA ONLINEのスタッフが教えてくれた。