筋肉少女帯メジャーデビュー35周年記念ライブ「#筋少の日」
2023年6月21日(水)LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)
「35周年経って分かったこと、これはバンドの総意だと思いますよ。もう、感謝しかない! こんなバンドをよくぞ、ここまで育ててくれた。本当にありがとう!!」
この日、渋谷公会堂(LINE CUBE SHIBUYA)を埋め尽くすファンに、繰り返し感謝の言葉を伝えた大槻ケンヂ(Vo)。1988年6月メジャーデビュー、今年でデビュー35周年を迎えた筋肉少女帯が、メジャーデビュー35周年記念ライブ『#筋少の日』を開催。デビュー曲から最新曲まで、出し惜しみナシのオールタイム・ベストな選曲で構成されたこの日のライブは言葉通り、35年間応援してくれたファンへの感謝の気持ちに溢れていたし。デビューから35年が経った現在も、筋少が高いモチベーションを保ち続ける、現役バリバリのロックバンドであることを証明する、35周年記念にふさわしい素晴らしいライブだった。
開演時間を過ぎた頃、ライブへの期待が最高潮に高まった観客の大歓声に迎えられ、メンバーが颯爽とステージに登場。真っ赤な照明がステージを怪しく照らし、ペンライトの光が客席を彩る中、サポートの長谷川浩二(Dr)のけたたましいドラムから、ファンファーレのような派手やかなイントロで始まった1曲目は「サンフランシスコ」。35年前にリリースされたデビュー盤『仏陀L』収録曲であり、リリースしたばかりのオールタイムベスト盤『一瞬!』に新録も収録されたこの曲。超満員の観客が大槻の煽りに拳を突き上げ、掛け声を合わせる。ライブへの規制が緩和されたことや、足を運びやすいホール会場でのライブということもあり、筋少のライブを久々に観た人も多かったであろう、この日。客席はど頭から圧倒的な熱気に包まれ、会場に強い一体感が生まれる。
激しさと力強さと正確さを併せ持つ長谷川のドラムと、クールな佇まいで野太いベースを鳴らす内田雄一郎(Ba)の強靭なリズム隊に、ヘヴィなギターとアグレッシブなパフォーマンスで楽器隊をぐいぐい引っ張る本城聡章(Gt)。間奏でサポートの三柴理(Key)が奏でる荘厳な鍵盤ソロと、橘高文彦(Gt)の超絶ギターソロの掛け合いで大いに魅了すると、絶対的センターの大槻が強烈な存在感を放つ。これぞ、筋肉少女帯! といった激しく重厚なオープニングナンバーに大興奮し、割れんばかりの拍手と歓声が起きる客席に、「筋肉少女帯、メジャーデビュー35周年だぁ!」と、嬉しそうに叫ぶ大槻。「いや~、35年経ってこんな大きいところでライブが出来るとはなぁ~。始まって早々、しみじみするのもどうかと思うけど。しみじみしちゃうなぁ、良かったなぁ……」と呟いたと思えば、「みなさんの想像をはるかに超えて、若い頃の筋肉少女帯はヒドかったですからね!」とおもしろエピソードで笑わせて。カッコいいままで終わらないのも筋少、というか大槻の変わらぬ魅力。
「日本印度化計画」、「元祖高木ブー伝説」と、“90年代の筋少”を代表する楽曲が続き、もう30年も聴いてる楽曲がノスタルジックに響くのでなく、現在も新鮮に響くことに喜びと驚きを感じていると、「どっちも何十年も歌ってるんですけど、全然歌詞を覚えてないんですよね」と、トホホな感想を述べる大槻。さらに「分かったことあるんですよ。ロックって体に悪い! でも、『UFOと恋人』再現ライブで1曲目に「おサル音頭」をやったら、疲れなかったの! だから、これからもちょいちょいやりましょう」と、「おサル音頭」を披露。♪モキモキモキー!と歌声を合わせ、明るく楽しい音頭の調子で会場を沸かすと、「踊るダメ人間」で爆音を鳴らし、再び観客の熱狂を生む。
あまりに自由すぎるライブ展開に、オーケンが好き勝手やってるように見えなくもないが。観客をひと時も飽きさせることなく、決めるところはビシッと決める緩急付けたライブ運びは、やはり35年のライブスキルがあってこそ。「踊るダメ人間」に会場中がダメジャンプを合わせて渋公を揺らすと、間髪入れずに「踊る赤ちゃん人間」へ。楽器隊の勇ましくエネルギッシュな演奏に、よだれかけをした大槻が「あばば あばば」と言ってるのを見てると、やっぱり自由に好き勝手やってるだけなのかも? と思ってしまうが、これも35年のライブスキルあってこその術なのだろう、たぶんきっと。
「筋肉少女帯35年やって、これが一番の思い出だったなと思ったことある人?」という大槻の無茶振りに、「活動休止から再始動したことが、歴史の中でも大きな転換期。『再結成したならお遊びじゃなく、やれる限りやりたい』という意思が35年に繋がった」(橘高)「和田アキ子さんの歌番組に出た時、記憶を無くしてステージから客席に落ちたんだよ。疲れてたんだろうね(笑)」(本城)「35年のことは忘れちゃって、デビュー当時のことしか覚えてなくて。エディの家で『キノコパワー』を録音してた頃のことしか覚えてないね」(内田)と、それぞれが35年を振り返ったMCを経て、「筋少って、色んな音楽のミクスチャーだったよね?」と、筋少の音楽性について語った大槻。
「いまから演る曲は初期の曲で、筋肉少女帯でやらんとする、ありとあらゆるスタイルが入ってた曲です」と始まった曲は、本城と橘高が加入した89年に制作したアルバム『猫とテブクロ』収録の「月とテブクロ」。幻想的なサウンドと大槻の感傷的な歌声、ドラマチックなメロディで始まり、激しくノイジーなサウンドへと展開。様々な音楽要素をミクスチャーしたプログレッシブな楽曲は、筋少が当時から独創的かつハイレベルな音楽を追求していたことが改めて分かると同時に、現在のスキルと深い理解をもって演奏することで、楽曲が深みと壮大さと説得力を増して心に迫る。現在に繋がる筋少のルーツと現在の筋少の凄みを魅せた「月とテブクロ」。個人的にこの日、一番ヤラれたのがこの曲だった。
「いまも忘れちゃいけないのはあの時の初期衝動つうか、『やってやるぞ!』って気持ちっていうのかな? あの頃、酒飲んだ後にラーメン食べれたもんね、『シメのラーメンだ!』って。それくらいの気合いを忘れちゃいかんですよ!」と大槻が語り、本城と橘高の奏でるアコギに乗せて、新人バンドのようなフレッシュな気分で披露した「新人バンドのテーマ」で始まった後半戦。ポップでエモーショナルな「サイコキラーズ・ラブ」は切なく温かい歌と演奏で、会場を優しく包み込む。MCでは、筋少のオールタイムベスト盤『一瞬!』と、筋少楽曲も収録された三柴理のアルバム『LA PASSION』がリリースされたこと、10月よりメジャーデビュー35周年記念ツアー『一瞬!』が開催されることを告知。ここからの活動にも大いに期待させたところで、激しく妖しいイントロで「イワンのばか」が始まると、ライブはいよいよ終盤戦へ。
疾走感ある曲調とテクニカルな演奏、ドラマチックな曲構成。そして大槻の表現する独特な世界観と、筋少の魅力がギュッと凝縮されたこの曲から、激しく美しい「機械」、“10年代の筋少”の充実ぶりを表す「週替りの奇跡の神話」と続き、「香菜、頭をよくしてあげよう」へ。曲が始まった瞬間、グーッと楽曲世界に引き込まれて、年を重ねて哀愁と優しさと説得力を増した大槻の歌声に、涙が止まらなくなってしまった僕。たとえ何十年も歌ってる曲の歌詞を忘れても、速い曲は疲れるとボヤいても、よだれかけをして「あばば」とおどけても、そんなの一発でチャラにしてしまうほどカッコ良かった大槻の歌姿。この日、「サンフランシスコ」や「月とテブクロ」、「イワンのばか」を聴いて変わらずドキドキして、「あ~、やっぱり筋少が大好きだ!」と再確認したけど。この曲を聴いて、「あ~、筋少も大好きだけど、大槻ケンヂが大好きだ!」と再確認。改めて言うまでもないが、大槻がいるから筋少があって、筋少があるから大槻がいる。この不文律が崩れない限り、筋少は無敵だ。
本編ラストはデビューアルバム『仏陀L』の1曲目に収録された、「モーレツア太郎」。35年のキャリアを重ねたからこその深みや凄みや、いい意味の脱力感を武器に、いまなお高いモチベーションをもって現在進行系で進化を続ける“20年代の筋少”が演奏するこの曲が、モーレツにカッコ良かったことをお伝えし、「筋少はいまが一番カッコいい!」と断言したい。アンコールは35年前にリリースしたデビュー曲「釈迦」から、最新のベスト盤『一瞬!』に収録された新曲「50を過ぎたらバンドはアイドル」という、35年を一瞬で時間旅行するような流れでフィニッシュ。ライブ中、「40周年、いやさ100周年まで、サイボーグ化してもやり遂げたいもんだぜ!」と叫んでいた大槻。アイドルだろうとサイボーグだろうと、どんな形に変化しても、筋少をやり遂げて欲しいし。さらに年を重ねて、カッコ良さを増していく筋少の姿をいつまでも見届けたい。
SET LIST
01. サンフランシスコ
02. 日本印度化計画
03. 元祖 高木ブー伝説
04. おサル音頭 ~BORN TO BE WILD~
05. 踊るダメ人間
06. 踊る赤ちゃん人間
07. 月とテブクロ
08. 新人バンドのテーマ
09. サイコキラーズ・ラブ
10. イワンのばか
11. 機械
12. 週替わりの奇跡の神話
13. 香菜、頭をよくしてあげよう
14. モーレツア太郎
ENCORE
01. 釈迦
02. 50を過ぎたらバンドはアイドル