HONEBONE、アルバム『祝祭』リリースツアー完走。ファイナルで見せたバンドメンバー・オーディエンスとの一体感!

ライブレポート | 2023.06.16 18:00

HONEBONE 祝祭 JAPAN TOUR
2023年6月3日(土) Spotify O-nest
【サポートメンバー】木下きえ(Ba)/野口紗依子(Key)/YUNA from CHAI(Dr)

“祝福すること“と”挑戦すること”とが両立した素晴らしいステージだった。“祝福”とはコロナ禍が明けてライブの声出し解禁になったこと、日常の日々が戻ったこと、そして今を生きている人々を音楽で祝うこと。“挑戦”とは約10年ぶりのバンドスタイルでライブを敢行し、HONEBONEの音楽の新たな可能性を切り拓いたことだ。HONEBONEのニューアルバム『祝祭』リリースを受けて開催された『祝祭 JAPAN TOUR』のファイナルとなる2023年6月3日、渋谷・Spotify O-nest。

祈るような、そして祝うようなアカペラのハミングとコーラスをコラージュしたオープニングSEに導かれてメンバーが登場すると、大きな拍手と歓声が起こった。通常の彼らのステージとは景色がやや違う。EMILY(Vo)とKAWAGUCHI(Gt)というHONEBONEの2人に加えて、サポートメンバーとして木下きえ(Ba)、野口紗依子(Key)、YUNA from CHAI(Dr)が参加するバンド編成でのライブ。『祝祭』のツアーにふさわしく、ステージ上が華やいでいる。

KAWAGUCHI(Gt)

EMILY(Vo)

オープニングナンバーは「冷たい人間」。1コーラス目はEMILYの歌とKAWAGUCHI のアコースティックギターという2人だけで始まり、2コーラス目からドラム、ベース、キーボードが加わる構成になっていた。1曲の中に内省的なフォーキーな魅力とダイナミックなバンドサウンドの魅力が共存している。後半はエネルギッシュなバンドの演奏に乗って、EMILYの伸びやかな歌声が真っ直ぐ届いてきた。EMILYの歌とKAWAGUCHIのギターでのフィニッシュ。内面の闇と対峙するまなざしを持ちながらも、最後の最後に希望が浮き彫りになる歌詞の展開も鮮やかだった。

2曲目は「東横戦争」だ。東横線の始発駅である渋谷で演奏されることによって、アウェー感が増す選曲が心憎い。ドラムで始まり、ベース、キーボードが加わっていく。タフなバンドのリズムが不穏な空気を醸し出していく。東横沿線住人をもれなく敵に回すようなEMILYの不敵な歌声にゾクゾクした。観客のファイティングスピリッツに火をつけるようなダークな歌と演奏がいい。2人が5人になっても、彼らの音楽の純度は薄れることがない。しかも強度は増していると感じた。メンバー全員がHONEBONEの歌の世界観をしっかり共有して、音を奏でているからだろう。

YUNA from CHAI(Dr)

木下きえ(Ba)

野口紗依子(Key)

「みなさん、かっこいいでしょ!今日は最強のメンバーを迎えて、バンド編成でやっていきます」とEMILY。序盤でKAWAGUCHI のギターの弦が切れるハプニングがあったが、EMILYがメンバー紹介に時間をかけて対処。バンド編成のメリットはこんなところにも表れていた。KAWAGUCHI のアコースティックギターで始まったのは『祝祭』収録曲の「へだたってる僕ら」。せつなさの漂うミディアムナンバーで、歌と寄り添っていくような温かみのある演奏が染みてきた。ラストは歌とギター。ステージ上と客席の間には“へだたり”はまったくない。

朗らかな歌声と自在にスイングする演奏が楽しかったのは「とりあえず、生!」だ。ビールに例えるならば、泡立ちがよくて、キレとコクのある演奏。“のどごし”ならぬ、“耳ごし”がいい。会場内がビヤホールに一変し、“夏祭り”がやってきたかのようだった。一転して、「ナマリ」ではタフな歌とな演奏が客席を直撃。この曲でのEMILYの歌声はドスが効いているのだが、その奥底からせつなさや悲しみがじわりとにじんでいる。EMILYが手をピストルに見立てて、うちわを振っている観客を撃つような仕草をするパフォーマンスも楽しい。全員が参加して楽しめるところにも、HONEBONEのライブの魅力があるだろう。

『祝祭』収録曲の「わるいゆめ」からは、KAWAGUCHI がアコースティックギターからエレキギターへと持ち替えての演奏となった。ボーカルとエレキギターのカッティングで始まり、客席もハンドクラップで参加。さらにベース、ドラム、キーボードが加わり、疾走感が増していく。緩急自在のグルーヴが気持ちいい。歌と演奏が深い陰影のある世界を鮮やかに表現していた。ラストはEMILYのどこまでも届いていくようなボーカルと幻想的な音色のキーボードでのフィニッシュ。5人で1つのバンドと言いたくなるような一体感あふれる演奏が素晴らしかった。

「捨てられない花」は哀愁を帯びたEMILYの歌声がヒリヒリと刺さってきた。シャウトやフェイクも駆使してのボーカル。KAWAGUCHIのエレキギターの表情の豊かさも際立っていた。ニュアンス豊かなドラム、深みのあるベース、教会音楽を連想させるオルガン風の音色のキーボードなどなど、バンドの繊細なアンサンブルによって、この持っている“やるせなさ”が際立っていた。デュオとはまた違う、バンドで描くHONEBONEの世界の魅力を実感した。『祝祭』収録曲の「灯火」はピアノでの始まり。EMILYのエモーショナルな歌声と起伏に富んだ演奏に聞き惚れた。アルバム『祝祭』収録曲はバラエティーに富んでいるのだが、それぞれの曲の個性がしっかり発揮されていた。メンバーそれぞれの音楽の引き出しが豊富だからこその演奏と言えるだろう。

KAWAGUCHIがアコースティックギターを手にして演奏された「ネロリ」も『祝祭』収録曲。アコースティックギターの軽快なつまびきとジャジーな演奏の中で、EMILYがリラックスした柔らかな歌声を披露した。緩やかなグルーヴが気持ちいい。熱い演奏からほんわかした演奏まで、HONEBONEのライブの振り幅の大きさを堪能した。

「去年はコロナ鬱にむしばまれて、ライブをするのもつらくなり、敗北感や挫折感をおぼえました。でも今年になって、野外ライブでお客さんが声をだして励ましてくれて、コロナ前の元気だった頃の自分を思い出しました。今日もみなさんがこうして来てくれて、いつだって何度だって再出発できるなと思いました」というEMILYのMCに続いて、「リスタート」が演奏された。EMILYのアカペラの凜とした歌で始まり、バンドの演奏が加わった瞬間に、一気に視界が開けて、頭上に空が広がる景色が見えてくるようだった。この曲の歌詞と今のEMILYの心持ちとが重なっている。EMILYのひたむきな歌声とKAWAGUCHIの温かなギターが染みてきた。EMILYの歌を支えるような包容力を備えたバンドの演奏も見事だった。演奏が終わった瞬間に感動の歓声と拍手。

「まだまだ行けますか!ここを東京ドームにしたいと思います!」とEMILYが客席をあおって始まったのは、読売ジャイアンツの丸選手に向けて作られた「夜をこえて」だった。「いつか絶対ドームで歌うぜ」とEMILY。観客がハンドクラップやタオル回しで参加。バンド編成で演奏されることによって、爽快感や疾走感が増していた。歌とギターだけになる瞬間もある。デュオの魅力もバンドの魅力も飲み込んだ演奏だ。「ヘイ!」とEMILYとKAWAGUCHIがあおりと、客席からこぶしが林立し、雄叫びがあがった。「愛している!」とEMILYが何度も叫んでいる。会場内の熱気がすごい。EMILYもKAWAGUCHI もバンドのメンバーも観客も実に楽しそうだ。「夜をこえて」は全員が一丸になることの楽しさを堪能させてくれる曲だ。未来の景色が見えるような瞬間があった。

「今後もお客さんを増やして、HONEBONE旋風を起こしていきたいと思います。みなさんに祝祭あれ!」というEMILYの言葉に続いて、本編の締めくくりは最新アルバムのタイトル曲「祝祭」だった。EMILYの明るく伸びやかな歌声は本編のラストにふさわしい。歌と演奏からは明るいエネルギーがほとばしっている。カラフルでポップな曲調だが、ゴスペルやエスニックのテイストも感じとれる。KAWAGUCHIのカッティングはモータウン風味もあり、ギターソロはロック風味もあり。さまざまなジャンルの音楽の良質なエッセンスが絶妙にブレンドされている。<生まれてきただけで 祝祭>というフレーズに象徴されるように、歌にもバンドの演奏にも、会場内のすべての人を祝福するパワーが宿っていた。

アンコールでは初期の曲「くちびるだより」が演奏された。EMILYが歌い始めると、レア度が高い曲であるため、驚きと喜びの歓声が起こった。この曲はHONEBONEがバンド編成だった2014年にリリースされたアルバム『Too Many Kisses』のタイトルナンバーである。バンド時代の曲をバンド編成で演奏するのが逆に新鮮だった。跳ねるリズムが入ってきたり、ブレイクする瞬間があったりと、メンバーも楽しそうに演奏している。バンドの女子比率が高いこともあり、HONEBONEのキュートな魅力も伝わってきた。この日の編成ならではの歌と演奏は貴重だ。

アンコールの2曲目は「静かにしろ」。EMILYの毒づくようなMCに笑いが起こった。EMILYが最初のワンフレーズ<静かにしろ>を歌って、「行け!」と観客をあおった瞬間に、客席にさらにスイッチが入ったようだった。KAWAGUCHIも「静かにしろ」と歌い、て客席をあおっている。雄叫びをあげるような熱いコール&レスポンスが感動的だ。バンドも気迫あふれる演奏を展開。くやしさを感じたことのあるすべての人に、エネルギーをもたらす闘志あふれる歌と演奏によって、会場内が熱気に包まれた。

「どんなイベントに出ても、HONEBONEを観にきた人でいっぱいになるように、みなさんの誇れるバンドになれるようにがんばります」というEMILYの言葉に続いて、ダブルアンコールでアルバム『祝祭』のラストに収録されている「前言撤回」が演奏された。EMILYとKAWAGUCHIの2人だけでの歌と演奏だ。初心の再確認、そして前を見て進んでいく決意表明と言いたくなるような、強い思いの詰まった歌とコーラスとギターだ。客席からの温かな拍手がしばらく続いていた。

彼らはデュオという揺るぎない核を持ちながら、バンドという新たな表現の可能性を切り拓いたところだろう。11月には彼らにとって最大規模となる恵比寿・LIQUIDROOMでのワンマンライブも控えている。だが、これは始まりにすぎない。彼らはさまざまなネガティブな感情を音楽エネルギーへと変換して歩み続けている。喜ぶべきか悲しむべきか、この世界ではエネルギーの源は尽きることはなさそうだ。彼らは何度でもリスタートして、夜をこえて進み続けていくに違いない。スタートはたくさんあっても、ゴールはどこにも存在しない。空に果てがないように、彼らの目の前には広大な景色が広がっている。

SET LIST

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公演情報

DISK GARAGE公演

HONEBONE NEXT STAGE 2023

2023年11月4日(土)LIQUIDROOM
※当日はアコースティックセットに加え、バンド編成での演奏も予定
チケット一般発売 :  2023年7月2日(日)10:00

RELEASE

『祝祭』

New Album

『祝祭』

(Linda Records)
2023年4月26日 各サブスクリプションサービスにて配信
2023年6月7日 各CDショップ、Amazon、HONEBONE通販ショップにてCD発売

≫詳細はこちら

  • 長谷川 誠

    取材・文

    長谷川 誠

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  • 撮影

    浅香郁絵

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