Bialystocks、初の全国ツアーファイナル。満員のリキッドを魅了

ライブレポート | 2023.02.27 18:00

Bialystocks “Quicksand” Tour 2023
2023年2月18日(土)LIQUIDROOM

2月18日、Bialystocksが初の全国ツアー「Bialystocks “Quicksand” Tour 2023」のファイナルとなる東京公演を恵比寿LIQUIDROOMで開催した。昨年11月30日にメジャーデビューアルバム『Quicksand』をリリースし、大きな注目が集まる中で行われたこの日のライブは見事にソールドアウト。ボーカルの甫木元空とキーボードの菊池剛にサポートメンバーが加わり、素晴らしいステージでオーディエンスを魅了した。

ライブは『Quicksand』でも一曲目に収録されている「朝靄」からスタート。薄明かりに照らされたステージで、甫木元の歌と菊池のピアノのみでしっとりと始まった楽曲がジワジワと盛り上がっていくと、明滅する照明とともに「雨宿り」へ。この曲も序盤こそ落ち着いたテンション感だが、途中からドラマーの小山田和正が手数の多いパワフルなドラムで一気に場を掌握し、後半になるとコーラスの2人・オオノリュータローと早川咲が美しいハーモニーを聴かせる組曲的な展開が印象的。

さらに「あくびのカーブ」もプログレのようなナンバーで、ギターの西田修大がアームを使ったトリッキーなソロを披露すれば、菊池もシンセソロを弾いたりと、ライブ序盤にしていきなりクライマックスのような盛り上がりを見せる。「現代ジャズやネオソウルを通過した日本語ポップス」というイメージを引き継ぎつつ、重厚なサイケデリックロックも鳴らした『Quicksand』のモードは非常に強烈だ。

ジャズバラードの「またたき」は甫木元の温かみのある歌声が素晴らしく、ソウル/R&B寄りな「All Too Soon」での菊池によるソロパートも飛び出し、「光のあと」では再び小山田がパワフルなドラムで演奏を引っ張ったように、やはりこのバンドは全員がクロスオーバーなプレイヤーたちで構成されている。現在の日本ではジャズを軸としながらクロスオーバーに活躍するプレイヤーたちがJ-POPのシーンを支えているが、Bialystocksもまさにその要素を持っていると言えよう。

菊池と小山田はジャズ、西田はロック、アンサンブルの土台を支えるベースの越智俊介はファンクと、それぞれの出自は異なれど、全員がひとつのジャンルにはとても括れないプレイヤーだからこそ、Bialystocksの自由な楽曲が成り立つ。「Emptyman」のようなカントリー色の強いナンバーでも全員が違和感なく、むしろ生き生きと演奏している様はこのバンドのポテンシャルの高さを改めて印象付けていた。

フロアを埋め尽くしたオーディエンスを前に「人生でこんなに多くの顔面を目にしたことがないものですから、ちょっとビビってますがお手柔らかに」と笑う甫木元のMCからは、その飾らない人柄が伝わってくるが、彼はボーカリストであると同時に気鋭の映像作家でもあり、ライブ中盤では甫木元が監修、MV「Upon You」のCG・VFXを担当したa.n.制作の映像演出を交えたステージを披露。初期の彼ららしい矢継ぎ早な展開が印象的な「コーラ・バナナ・ミュージック」から、その路線の真骨頂とも言うべき名曲で、イントロのピアノが鳴った途端に拍手が起こった「I Don't Have a Pen」は、レトロフューチャーな映像との相乗効果でより華やかな印象を受ける。

スケールの大きな「Winter」に続いて披露された「灯台」では音数が少なめな前半で各プレイヤーがライブアレンジを聴かせつつ、やはり後半の展開にグッと引き込まれる。転調を繰り返すこの曲の歌メロは相当に難易度が高いが、甫木元がそれに食らいつき、最後のファルセットを響かせた瞬間は間違いなく中盤のハイライト。こちらもイントロで拍手の起こった人気曲「Over Now」では甫木元と西田が向き合って掛け合いをし、こういったライブならではのシーンも楽しい。

7拍子でサイケデリックなジャムを聴かせた「Thank You」でも、各々がプレイヤビリティの高さを発揮したが、それでもBialystocksが「ポップス」に帰結しているのはやはり甫木元の歌の存在感があってこそ。開演前のSEでは菊池が大ファンを公言するフランク・シナトラがかかったりもしていたが、菊池がアコギを持って西田とともにゆったりとコードを鳴らした「日々の手触り」はスタンダード感の強いナンバーで、その次のフォーキーな「夜よ」も含め、こうした「モダン・スタンダード」とも言うべき「歌」の存在が、Bialystocksをより特別な存在たらしめている部分だと思う。

「Nevermore」では自然と手拍子が起こり、〈どうでもいい事ばかりしがみつき〉のブレイクからビートが駆け出す瞬間はこの日のピークタイムに。Bialystocksのライブはオーディエンスに手拍子や合唱を求めるタイプではなく、ひたすらに歌い、演奏し、オーディエンスはそれぞれの楽しみ方でそれを受け止めていたが、この頃になるとフロアには自然と一体感が生まれていて、ラストの「Upon You」ではサビのクラップもばっちり揃い、実にピースフルな空間がそこにはあった。

アンコールで甫木元は、現在一緒に暮らしている90才の祖父と、数年前に癌で亡くなった母親との暮らしから、時間の流れや死との距離感は人それぞれであることを実感し、その経験を基に映画『はだかのゆめ』を撮ったことを話し、その主題歌である「はだかのゆめ」を弾き語りで披露した。Bialystocksの楽曲の多くは「喪失感」が背景に感じられ、この次に歌われた「ごはん」では〈あの世でも この世でも そんな日々がずっと続くように〉と歌われているように、「死」に対する目線が確かに感じられる。しかし、それをただ悲しむのではなく、チャップリンの「近くで見れば悲劇、遠くから見れば喜劇」のように、アングルや距離を変えながら、爽快感すらある人生賛歌として鳴らしているのがとても素晴らしい。

途中のMCでは「流砂」を意味する『Quicksand』というアルバムタイトルについて、「誰しもが大切な人を失ってしまったり、ぬかるみに足を取られることがあると思うけど、砂時計のように何かしら動いてるものがきっとある。それを肯定的に捉えたい」という趣旨のことを話していたが、やはり甫木元はどんな喪失や悲しみがあろうとも、あくまで前向きに「それが人生だ」と楽曲を通じて語りかけてくる。時計が止まってしまったかのようなコロナ禍であっても、やはり時間は進んでいて、その中でバンドとしての大幅なビルドアップを試み、素晴らしいステージを見せてくれたBialystocksの存在は、「どんな時代であろうとも、今を肯定することの大切さ」を体現しているかのようだ。

この日のラストナンバー「差し色」はアウトロでメンバーがそれぞれソロを回す大団円で締め括られ、それはまさにミュージカル映画のラストのような、とても清々しいものであった。なお、Bialystocksは6月からセカンドワンマンツアーの開催を発表。会場は5都市にスケールアップしているので、ぜひより多くの人に彼らの音楽と直接触れ合ってみてほしい。

SET LIST

01. 朝靄
02. 雨宿り
03. あくびのカーブ
04. またたき
05. All Too Soon
06. 花束
07. 光のあと
08. Emptyman
09. ただで太った人生
10. コーラ・バナナ・ミュージック
11. I Don't Have a Pen
12. Winter
13. 灯台
14. Over Now
15. Thank You
16. 日々の手触り
17. 夜よ
18. Nevermore
19. Upon You

ENCORE
01. はだかのゆめ
02. ごはん
03. 差し色

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