DRAGONASH 25th ANNIV. TOUR 22/23 ~ ENTERTAIN ~
2022年9月30日(金) Zepp Haneda(TOKYO)
2022年9月10日(土)Zepp Fukuokaから、2023年2月5日(日)長野・ホクト文化ホールまで、ほぼ半年をかけて25本、ホールと大型ライブハウスを回る『DRAGONASH 25th ANNIV. TOUR 22/23 ~ ENTERTAIN ~』の5本目、9月30日(金)東京・Zepp Haneda。
この後、まだまだツアーが続くので、全部終わってから記事をアップ、というわけにはいかない。でも、無尽蔵にネタバレありで書くのも、これから観る方のことを考えると、ちょっとどうかと思う。
という、今回のような場合、「ネタバレ一切なしでしょうか?」「曲名を出すのはNG? この曲は出してOK、というのはありますか?」と、事前に先方に確認する(「この5曲は曲名を書いてもいいです」みたいに、アーティスト側が予め決めているケースもあるのです)。
今回もそう問うたところ、「おまかせします。ライブを観て、曲名を出したいと思われた曲は、出しても大丈夫です」というお返事。え、そうなの? いいの? ほんとに? と思った次の瞬間、「あ、そうか」と納得した。
25周年ツアーなんだから、当然、バンドの歴史を総括するセットリストになる。そうすると、ヒット曲・代表曲がズラッと並ぶのは必至なんだから、ネタバレとか気にしてもしょうがない。25周年ツアーで「百合の咲く場所で」や「Fantasista」や「陽はまたのぼりくりかえす」をやらないわけはないし、かつてはライブであまり披露しない時期もあった「Viva la revolution」も、当然プレイするだろうし、このツアーのタイトルにもなっている、ツアー初日の前日にデジタル・リリースされた新曲「Entertain」や、今年4月期のTBS系のドラマ『インビジブル』の主題歌になった「Tiny World」をやらない、ということは、どう考えてもありえないし。
そうかそうか。よかった、自由に書けるわ、と安心して、Zepp Hanedaに足を運んだのだが。
本編とアンコールを観終わった僕は、頭を抱えていた。
ネタバレしたくないわあ。具体的に書きたくないわあ、これ。という気持ちに、すっかりなってしまって。
当然、先に挙げた曲たちはすべてやるし、それら以外も「やってほしい曲」「やってくれないと困る曲」多数。この時代は多め、この時代は少なめ、という多少のばらつきはあるが、基本的に全時代からセレクトされている。
で。たとえば「Entertain」だって、どのタイミングでやるのか、本編中盤のMC明けなのか、本編ラストなのか、アンコールなのかで、全然意味合いとか、オーディエンスへの届き方とかが、変わってきますよね。
その曲を、セットリストのどこに置くか。その前の曲は何で、その次の曲は何か。で、前の曲からどんなつながり方をして、次の曲がどう始まって、ステージ自体がどう展開して、どう進んでいくのか──。
というのが、とにかく絶妙なのだ。観ていて、「そりゃあこの曲やるよね」「まあ当然これもやるわな」という気持ちになるのとは真逆で、次の曲のイントロが鳴るたびに「うわあっ!」ってなってしまう。その曲を今日どこかでやるであろうことは、わかっていたはずなのに。
つまり、受け手が「うわあっ!」ってなるにはどうすればいいか、どれをどのタイミングでどういうふうに聴かせるのがベストか、そのために前からどうつながって次にどうつなげればいいか、という、最良の形になっていた、ということだ。1曲1曲が。同じ時期の曲が固められたブロックもあったが、そうじゃないブロックもあったのも、そのあたりをつきつめた結果、そうなったのではないか、と思う。
で、代表曲だけじゃなくて、某アルバムの隠しトラックだった曲がスッと始まったりもするし、「あ、この時期を代表する曲として、これを選んだんだ?」という曲もある。
1990年代後半から2000年代前半にかけて──つまり、まだCDが何百万枚も売れる世の中だった頃の曲だらけだったら、観ていてちょっと複雑な気持ちになったかもしれないが、そんなことはなくて、2010年代後半以降、つまり近年の曲も、多数プレイされる。
あ、もちろん、「あの曲やってくんなかったな、聴きたかったのに」というのも、何曲もある。でも、1本のライブの尺にはリミットってものがあるんだから、しょうがない。むしろ、そういう曲も詰め込めるだけ詰め込んで、3時間とか3時間半とかやっちゃいましょう、という方法を選ばず、ギュッと凝縮して25年と現在を見せる、という内容にしたのも、正解だと思う。濃いし、とにかく。
これだけ代表曲を並べたら「フェスの時のセトリを倍にした感じ」みたいになってもおかしくないのに、そうではない。必然があり、物語があり、歴史がある、今伝えるべきことを表現する内容になっている、ということだ。
って、さっきからセットリストのことばかり書いているが、パフォーマンスに関しても、もちろん、何ひとつ文句などない。もともとDragon Ash、ツアーの1本目はまだ危なっかしかったけど、本数を重ねるごとによくなっていった、みたいなバンドではない。最初からバキッと仕上がっているタイプだが、にしても、5本目でもうこれか! という、圧倒的な演奏であり、パフォーマンスだった。
「(感染対策の規制があって)楽しみづらいと思うんだけど、その中でギリギリ、みんなでフロアで遊んでくれて、とてもうれしいし、俺らが今もバンドマンっていう生き方を投げ出さずにいられるのは、みなさんみたいなライブハウスに集まる人がいるからなので、改めてお礼を言わせてください。ありがとうございます」
中盤のMCで、Kjはそんなふうに、オーディエンスに感謝を伝えた。確かに、モッシュやクラウドサーフが一切ない(できない)、大声も出せない、にもかかわらず、満員のフロアには、窮屈さや意気消沈した感じ、一切なかった。Dragon Ashと共に生きてきて、今この場にいられることが本当にうれしい、という、幸福な空気だけがZepp Hanedaを満たしていた。いい歩み方をしてきたバンドなんだな、ということが、オーディエンスを見ているとわかる。
最後に個人的な余談。
曲の後半でKjが、詞を「みんな、ありがとう」と変えて歌った某曲。あれ、確か三回目のROCK IN JAPAN FES.だったから、2002年か。友達の幼い娘が「聴かせると泣き止む」レベルでこの曲を大好きで、ステージを観ながらうれしそうに踊ってたなあ、と、思い出したりもした。
僕の仕事のことを知っているその子は、週末になると、LINEで「今日はどこですか? 私はここです」と、京都磔磔の看板の写真を送って来たりする、どえらくライブ好きな子に育ちました。現在23歳です。
SET LIST
Dragon Ash:ENTERTAIN Zepp Hanedaセトリレポ9/30 | Music Jocee https://t.co/FNZlLT3XRP #DragonAsh #ENTERTAIN #セットリスト
— DA_OFFICIAL (@Dragon_Ash) October 10, 2022