筋肉少女帯 Debut35th カウントダウン シリーズ 「祝! 筋少結成40周年記念ライブ」
2022年5月12日(木) CLUB CITTA'
2022年の5月から、筋肉少女帯が『Debut 35th カウントダウンシリーズ』というシリーズ・ライブを始めている。
まず、5月12日(木)に川崎のクラブチッタで『祝! 筋少結成40周年記念ライブ』。続いて6月11日(土)にLINE CUBE SHIBUYAで、人間椅子との対バン『地獄のアロハ returns』。その次は6月21日(火)に渋谷クラブクアトロで『祝! 筋少Debut34th記念ライブ』。
って、「×周年」だらけでややこしいので、説明が必要ですね。まず、ナゴムレコードからのインディーズ・リリースを経て、筋肉少女帯がメジャー・デビューしたのは、1988年6月のシングル「釈迦」とアルバム『仏陀L』。なので、そこから35周年を迎えるのは、2023年。
つまり、このシリーズ・ライブは、2023年の6月を目指して、1年前からカウントダウンを行っていこう、という趣旨だと推測します。その一回ずつに意味を持たせて、チッタは1982年に大槻ケンヂ(以下オーケン)と内田雄一郎が「筋肉少年少女隊」を結成してから(後に今の名前に改名)40周年を祝うもの。続く渋谷クアトロは、メジャー・デビューから34年を祝う日。「釈迦」と『仏陀L』が出たのは1988年6月21日なので、34年後のその日に合わせた、ということだ。
で、そのふたつの間の、6月11日LINE CUBE SHIBUYAの人間椅子との対バンは、×周年とは別で、2016年に「筋肉少女帯人間椅子」という合体バンドで『地獄のアロハ』をリリースし、渋谷公会堂でライブを行った、そのコラボをライブでもう一度、という企画である。
以上、説明でした。では、そのシリーズ・ライブの一発目=5月12日クラブチッタを観たので、そのレポをお届けします。
平日の18:30開演にもかかわらず、チッタはソールドアウト。1曲目は1996年のアルバム『キラキラと輝くもの』から「小さな恋のメロディ」、2曲目は『仏陀L』のオープニングを飾る「モーレツ ア太郎」の連打でライブがスタートする。感染予防オペレーションのため、声援を送れないオーディエンスは、代わりに赤青緑ピンク等のケミカルライトを振りまくり、フロアが極彩色に染まる。
で、曲が終わると大拍手。オーケンが、「欽ちゃんが言ってたよ、拍手は小さく小刻みにやると、ソールドアウトの今日なれど、さらに大きくきこえるぜ」と指南、その拍手がボリュームアップする。
40年前に、内田雄一郎とバンドを結成した時の夢を、話し始めるオーケン。イーストウエスト(ヤマハが開催していた関東甲信越エリアのコンテスト。サザンオールスターズやシャネルズ等を輩出している)の関東甲信越大会に出られたら、もしくは渋谷屋根裏に出られたら、バンドとして上がりだと思っていた。でも屋根裏はケラさん(ケラリーノ・サンドロヴィッチ)がブッキングしてくれてすぐ出れたし、イーストウエストは出る前にデビューしてしまった。だから今日は、このクラブチッタ川崎を、イーストウエスト関東甲信越大会と思ってライブをやりたい、やってもよござんすか? よござんすね! 審査員特別賞を狙うぞ! と宣言。
そして、「学歴偏重社会で育ったが落ちこぼれだったオーケンには、未来はなかった。オーケンの命を救った筋肉少女帯!」という言葉から、「I,頭屋」「枕投げ営業」、そして「ベースなんか弾いちゃいられないぜ!」と内田雄一郎が歌う「モコモコボンボン」へ。
その間に衣装を着替えたオーケン、「50を過ぎたらすべてのロックバンドはアイドルになっていかなきゃいけない」としゃべり始め、己の老いについて延々と語った末に、「老いですべてをなくしていくが、この筋少のステージだけはなくしたくない! あと40年はやる! 50年後は、あのラゾーナ川崎を共同墓地にして、一緒に入りましょうよ!」と呼びかけ、笑いと拍手を浴びる。
懐かしくて定番の「労働者M」、2016年のベストアルバムに新曲として入れた「週替わりの奇跡の神話」を経て、2021年11月リリースの最新アルバム『君だけが憶えている映画』からの「楽しいことしかない」を、座って歌うオーケン。歌い終えると「関東甲信越大会、今んとこ通過してるんじゃないかな」と言いながらオーディエンスも座らせ、ひとり弾き語りで「ベティー・ブルーって呼んでよね」を聴かせる。
インストゥルメンタルの「夜歩く」をはさんで、最新アルバムからの「OUTSIDERS」と、1996年の『ステーシーの美術』からの「子犬にしてあげる」を、これも座って歌うオーケン。ブロックごとの曲調の緩急を、大きくつけているライブであることが、このあたりでわかる。
8月12日(金)にZepp DivereCity(TOKYO)で、すかんちと対バンすることを発表してから、後半ブロックへ。「イワンのバカ」で橘高文彦はヘドバンしながらギターを弾きまくり、サポートのエディこと三柴理は鍵盤を離れてステージを徘徊、というおなじみの光景が繰り広げられる。
スラッシュ・メタルな「カーネーション・リインカネーション」で、フロアのケミカルライトが折れんばかりに振られまくったあとは、「イーストウエスト関東甲信越大会、優勝はオーディエンスだあ! なんか変な終わり方だけどまあいいや!」というオーケンの叫びからの「トゥルー・ロマンス」で、楽しく、かつ賑々しく、本編が終了する。
アンコールでは、「40年いろんなことがあったけど、今日もいい感じだった。うれしいわ。よし行くぜ、これからあと40年! そのあとラゾーナ川崎に! そして来世でもまたお会いしましょう! けっこうイイ人だったから!」と、筋少のレパートリーの中でおそらくもっとも数多く演奏されてきた(たぶん「日本印度化計画」よりも多いと思う)「釈迦」へ。
ステージの上も下も、本日最後にして最大のピークを迎えて曲が終わったあと、橘高は、「大槻ケンヂ、内田雄一郎、おめでとう!」と、オリジナル・メンバーふたりに、お祝いの言葉を捧げた。
ケラさんとやっていた空手バカボンのテープを、CBSソニーのオーディションに送った。筋肉少女帯は、イーストウエストに送った。どちらもテープ審査で落ちた。なのに、こうして40周年をソールドアウトで迎えられている。人生わかんないですよね。意外となんとかなる。
中盤のMCで、オーケンはそんなことを言った。無論、結成から現在までの40年の間には、「なんともならなかった」時期や「実質的に筋少がなくなった」時期もあった。ここに集まった人たちも、配信で観ている人たちも、ご存知だろう。そんな時期を経て、50代も後半にさしかかった今、こうして筋肉少女帯として、満員のオーディエンスの前でライブをやれていることへの喜びが、そのオーケンの言葉に、素直に表れていた。
SET LIST
01. 小さな恋のメロディ
02. モーレツ ア太郎
03. I,頭屋
04. 枕投げ営業
05. モコモコボンボン
06. 労働者M
07. 週替わりの奇跡の神話
08. 楽しいことしかない
09. ベティー・ブルーって呼んでよね
10. 夜歩く
11. OUTSIDERS
12. 子犬にしてあげる
13. イワンのバカ
14. カーネーション・リインカネーション
15. トゥルー・ロマンス
ENCORE
01. 釈迦