KREVA NEW BEST ALBUM LIVE 成長の記録
2019年6月30日(日) 日本武道館
ソロデビュー15周年プロジェクトの中の大きなヤマであり、代表曲の数々をバンド編成で録り直したベストアルバムのリリースライブである『KREVA NEW BEST ALBUM LIVE 成長の記録』、2019年6月30日(日)日本武道館。
いきなり客電がフルで点灯する→ステージの床がドライアイスで包まれる→天井から白い風船が降ってくる→暗転する→明るくなるとステージ中央に全身白の衣装のKREVAがいる、という演出での「居場所 ~2019 Ver.~」でスタートし、「今20時だから、あと4時間でDLが始まる曲です」と超満員のオーディエンスに知らせた上で歌った、本邦初公開の最新曲「無煙狼煙」で締めくくった全25曲(ベストアルバム収録の17曲すべて含む)、2時間35分。
過去にも現在にも他に類を見ない、規格外の音楽家でありパフォーマー、それがKREVAであることを証明する、圧倒的なライブだった。そんなこと、とうに知っているつもりだったし、ワンマンもフェスも含め、それが立証されるさまを、これまで何度も目の当たりにしてきたつもりだったが、そうであっても驚愕させられた、そんな時間だった。
2012年頃からバンド編成でライブを行うようになった、でもそのバンド・バージョンの音を作品にはしていなかったので残しておきたかった、というのが『成長の記録 ~全曲バンドで録り直し~ 』の制作動機である。で、そのアルバムに沿ったライブで行う、ということは、ここで初めてKREVAを観に来た人や、久しぶりに観に来た人にとっては新鮮だろうけど、いつも観に来ている熱心なファンにとっては、「KREVAがおなじみのKREBandと一緒に、いつもの音でベストアルバム的な選曲で行うライブ」ということになる。つまんなくはないけど、新鮮ではない。
ということを力いっぱいはねのけるライブになっていたことに、まずびっくりしたのだった。毎回必ず観ているファンでもびっくりしただろうし、初めて観た人はまさに度肝を抜かれただろうと思う。
その姿勢がわかりやすく表れていたのが、前半〜中盤、4曲目の「ACE」から17曲目「瞬間speechless」までのブロック。ここ、バンドメンバーひとりずつ順番に、KREVAとふたりだけで1曲やって、その流れでみんなで2曲くらいプレイしてから次のメンバーに移り、またその人とKREVAだけで1曲やって──という構成になっていたのだが、そこ、メンバー紹介のブロックというよりも、そのメンバーが担当している楽器を説明するブロックになっていたのだ。
MPCという機材がいかに重要なのか、自分に何をもたらしたのか、それを操る熊井吾郎という男は何なのか、ということを説明し、実際にふたりだけで音を出してオーディエンスを「そうかあ、なるほどお」と納得させたり感動させたりしてから、次の楽器=ドラムとそれを担当している白根佳尚のコーナーに行く。ギターの説明をする時に、4歳の自分が半年ギターを習った時に弾いていたというクラシック・ギターを持ち出したりするなど、小ネタも豊富。このように、ベース大神田智彦、ギター近田潔人、キーボード柿崎洋一郎と、各パートを紹介していく。
つまり、自分が今バンド編成でライブをやっている理由や、その編成でベストアルバムを作ったことの必然を、懇切丁寧に伝えるという行為がそのまんま、ためになるし、おもしろいし、めちゃ楽しいショーになっている、ということだ。KREVAらしいなあとも思ったし、こんなことKREVAじゃなきゃやろうとしないだろうし、もしやってもKREVAじゃなきゃこんなふうにおもしろくはできないだろうなあ、と思った。
他の曲も然り、他の演出(火炎放射とかレーザーとか銀テープ発射とか、風船が降るとかリリックが画面に出る等の効果映像の使い方とか)も然り。なぜにこの瞬間にこの曲なのか、なぜにここでこの演出なのか、そこでKREVAはどう動きどう語りどう歌うのか、というのがもういちいち、そのたびに「おお!そうかあ!」と言いたくなるというか、その瞬間にこっちが食らうカタルシスがバカでかい、というか。
衝動や本能はマックスにでかく、爆発をさまたげるものは極力排除して己から最大限のパフォーマンスを引き出す。しかし細部は神が宿るくらい緻密に、綿密に詰めて作り上げるおそるべきパフォーマー。それがKREVAだ、ということを思い知った時間だった。
アンコールではKREVA、闘病の末5月10日に亡くなった、KREBandのバンマス=ベーシスト岡雄三の愛器を携えて、ステージに出て来る。彼が亡くなったこと、『成長の記録』では全曲弾いてくれたことなどを話し、彼のベースが入った自分の曲を使ってDJをする、と告げ、久保田利伸との「M☆A☆G☆I☆C」で始まり、KICK THE CAN CREWの「Keep It Up」で終わる7曲をプレイし、追悼の意を示した。
次は、「これからどうするかって?もちろん新曲ばんばんできてますよ。かけちゃおうかな。今から武道館を使って先行試聴会!岡さんと最後にレコーディングした曲です」と、NulbarichのJQと作った8月5日配信スタートの新曲「One」を聴かせてくれるというサプライズ。
そして──最初にも書いたが──このライブが終わった4時間後、日付が7月1日になった瞬間に配信リリースされる新曲「無煙狼煙」を「新たな成長の記録を見せて終わろうと思います」と、生で初公開して終了した。何この終わり方。と、またショックを受ける。
さらに。KREVAが去ったあと、画面で「無煙狼煙」と「One」に加え、ライブ映像作品『完全1人ツアー2018 at Zepp Tokyo』と、正真正銘のニューアルバム『AFTERMIXTAPE』をそれぞれ9月4日・18日にリリースすることと、『908 FESTIVAL 2019』を9月26日に横浜アリーナで開催することが発表になった。
なお、この日、武道館の外では「『勝手に』KREVA NEW BEST ALBUM LIVE 成長の記録 展」という、KREVAのすべてのツアーのスタッフTシャツとスタッフパスの展示が行われていた。開演前も終演後も、お客さんみんな撮影しまくって楽しんでいた。なんせ数がすごいので、写真じゃなくてムービーで、端から端まで撮っている人が多かったです。
それから。この日のライブの模様は9月にCSテレビ朝日チャンネルで再放送予定です、というチラシが配られていたのには驚かなかったが、家に帰ってPCを立ち上げてSpotifyを見たら、今日のセトリがプレイリストで聴けるようになっていたのには、「こういうとこまでほんと漏れがないよなあ」と、つくづく思いました。
SET LIST
01. 居場所 ~2019 Ver.~
02. 王者の休日 ~2019 Ver.~
03. アグレッシ部 ~2019 Ver.~
04. ACE (MPC/DJ & KREVA)
05. パーティーはIZUKO? ~2019 Ver.~
06. トランキライザー ~2019 Ver.~
07. 中盤戦 (Dr & KREVA)
08. 基準 ~2019 Ver.~
09. ストロングスタイル ~2019 Ver.~
10. 存在感 ~2019 Ver.~
11. Under The Moon (Ba & KREVA)
12. I Wanna Know You ~2019 Ver.~
13. 成功 ~2019 Ver.~
14. 希望の炎 (Gt & KREVA)
15. KILA KILA ~2019 Ver.~
16. スタート ~2019 Ver.~
17. 瞬間speechless (鍵盤 & KREVA)
18. かも ~2019 Ver.~
19. C'mon, Let's go ~2019 Ver.~
20. イッサイガッサイ ~2019 Ver.~
21. 音色 ~2019 Ver.~
22. Na Na Na ~2019 Ver.~
EN
01. DJ:M☆A☆G☆I☆C [久保田利伸 with KREVA]〜愛してたの [増田有華]〜Sanzan [KREVA feat. 増田有華]〜あえてそこ(攻め込む)〜Glory [絢香 & KREVA]〜千% [KICK THE CAN CREW]〜Keep It Up [KICK THE CAN CREW] 〜One feat. JQ from Nulbarich[新曲]
02. 無煙狼煙[新曲]
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≫https://jvcmusic.lnk.to/KREVA20190630