Blueglue
1番手は「ロマンチックに、等身大の言葉で、真摯な音を」「素直にあなたに寄り添いたい」をポリシーとした4ピースバンドBlueglue。1曲目「リボン」からタイトなビートとポップス的な歌心を響かせる。軽やかで甘さも持ちながらもそこはかとなくスパイスを効かせるところは、彼らがコンセプトとしても掲げる「粋」にも通ずるのだろうか。「ウェルテル」「ミッドナイトタクシードライブ」と洗練されたアンサンブルと各々の卓越した技量でグルーヴを作り出し、「ロマンチック」では美しいコーラスで清涼感を描く。スタイリッシュと泥くささのせめぎ合いからこぼれる混じり気のないエモーションは包容力にあふれていた。「気の滅入ることがあったとき、僕は音楽に救われてきました。みんなにとってもそういう音楽であってほしい」と渡邊直也(Vo/Gt)が告げると、ラストは今年7月10日にリリース予定の初の全国流通盤となる1stフルアルバム『信じ続けることで失うものなんて何もないよ』から、繊細なタッチが光るミディアムナンバー「宇宙の風に乗って」を演奏。4人の意識が集中した猛烈なアウトロは圧巻だった。
SET LIST
01. リボン
02. ウェルテル
03. ミッドナイトタクシードライブ
04. ロマンチック
05. 宇宙の風に乗って
オレンジスパイニクラブ
続いて登場したのは今年1月に改名したばかりの4人組、オレンジスパイニクラブ。緩急で引き込む「みょーじ」からアンニュイかつ切なさを感じさせる「タルパ」と、淡々としつつも衝動的な「まいでぃあ」と間髪入れずにどんどん演奏を畳みかけていく。それは若者特有の気だるさや焦燥性、純朴さ、もどかしさ、切迫感、明るくもなく暗くもない絶妙な均衡をそのままコンパイルしているよう。裸のまま体当たりするような無垢な音像と歌は、まだまだ稚拙なところはあるが、聴き手の胸を熱くさせるには充分すぎるほどだった。スズキユウスケ(Vo/Gt)が「あまり一緒に対バンする機会がないジャンルの人たちと対バンできるのを楽しみにしてました。“俺らなんて無理だろ”と思って、似ているジャンルのバンドとしか対バンしてこなくって――でも今日誘ってもらえて良かった。うれしいっす、ほんとに」と率直な気持ちを吐露する。ラストの「キンモクセイ」まで終始自然体でフラットでありながら鋭さを放っていた。
SET LIST
01. みょーじ
02. タルパ
03. まいでぃあ
04. 急ショック死寸前
05. 敏感少女
06. 18
07. キンモクセイ
Drive Boy
3アクト目は昨年3月にMAN WITH A MISSIONのZepp DiverCity公演のオープニングアクトを務めた2017年6月結成の5人組、Drive Boy。バンドの生音にシンセ、ドラムのトリガーシステムを用い、1曲目「Wachowski」からたちまちスケール感のある人力エレクトロならではのダンスナンバーで場内を彩った。「J.J.」は生のグルーヴ強めのチル・ナンバー、「Shining」はギタリストもシンセを奏でた煌びやかなサウンド、「Night Crawler」はノスタルジックな空気感で満たしていくなど、楽曲を最大限生かせる音色選びをしていることが窺える。ラストは透明感のあるギターとシンセの音色が、冬の澄んだ空気を彷彿とさせる「Winter Is Coming」。一定のリズムを刻んでいたドラムが感情的になるなど、ドラマチックな起伏で魅せた。「(観客が)気持ち良くなってるのを見るのが気持ちいい」と言っていたとおり、彼らの音楽に乗り込んで、様々な場所へ旅に出かけたような心地になった。バンド名の由来はもしかしたらそれだったりして?
SET LIST
01. Wachowski
02. J.J.
03. Shining
04. Night Crawler
05. Winter Is Coming
Laura day romance
トリを務めたのは2018年の「出れんの!?サマソニ!?」を勝ち抜き、SUMMER SONIC 2018に出演を果たした男女ツインボーカルバンド、Laura day romance。USインディーロック感のあるサウンドの「girl's bicycle」は、洋楽ライクなだけでなく日本の歌ものとしてのポップネスも兼ね揃える。井上花月(Vo)の可憐な歌声は蝶が羽ばたくように気ままで軽やかで、掴みどころのない佇まいもミステリアスだ。ダイナミックなバンドサウンドが光る「lovers」は井上と川島健太朗(Gt/Vo)のツインボーカルも小気味よい。バラード「大停電」は楽器陣4人が覇気に満ちた渾身の演奏を繰り広げ、甘酸っぱいポップナンバー「夜のジェットコースター」も一音一音に力強さが滲む。丁寧なプレイでロックバンドとしての心意気を貫いていた。アンコールで披露したのはロマンチックなムードが漂う「夜ふかし」。ナチュラルでハッピー感のあるエンドロールで『MUNETAKA Vol.7』は締めくくられた。
SET LIST
01. girl’s bicycle
02. sad number
03. hot coffee
04. lovers
05. 大停電
06. 夜のジェットコースター
07. 夜ふかし
4組それぞれが異なる「粋」を見せた「ODORU NIGHT」。それはダンスロックで踊る夜というよりは、音楽で心躍る、内に秘めた本心が疼くような感覚に近かった。『MUNETAKA』は今後も都内とその近郊の様々なライブハウスで、個性的でカラフルなラインナップが決定している。それぞれでまったく異なる胸の高鳴りを感じられることうけあいだ。