──ですね(笑)。秀仁くんと青さんにとっては、奇抜なことではなく、ごくごく自然体であると?何処からそういう感覚って出てくるんです?
石井ん〜。自分だと分からないんだけど、ただ、選択肢が多いんじゃないかな?よく“その服何処で売ってるんですか?”って言われるんだけど、基本的にはそこらへんで買ってるものばっかだし。それが、髪型とか他の部分の衣裳と相俟って、すごく変なものに見えたりしてるんじゃないかなと思いますけどね。本当にそこにはまったく狙いがないんで。前回の『13』のツアーのときの衣裳でも、チャリンコ乗る人が履くスパッツでライヴやってたんで(笑)。そういうものの上に、着物を上着みたいに着てたりするから、なんか変に見えるんだろうけど。
──そことそこを組み合わせてみようかな、っていう発想はどこからくるんですか?
石井今となっては自然なんですけどね。今となっては本当に自然なことになってるから、自分でもどうしてそうなるのかあんまり分からないけど。
桜井結局、石井さんもウチに入って18年じゃないですか。その18年っていうキャリアですよね。バンド始めて1年の人が、スパッツ履いて着物着てたら“なんだろ、このバンド”って思われちゃうと思うけど、18年のキャリアと重み、ましてや25年の重みというのが、今のcali≠gariというか、たいして売れてなくても、そこそこの地位はあるみたいなので、そういう地位みたいなものが、そういうものを正当化させちゃうんでしょうね。でも、そこが説得力になっていってるんだと思う。
──いい話。
村井それにね、cali≠gariって、元ネタが音楽じゃないからカッコイイですよね。映画とか小説とか世の中のこととか、そういうところに洋服とか方向性とかがあるというか。今の若い子ってバンドからバンドのネタを持ってきますよね。
──そうなんですよね。バンドから持ってくるにしても、自分達が好きな音楽やってるバンドから元ネタを持ってくるんじゃなく、そのバンドが憧れていたバンドを探究して、そのバックボーンが匂うものからヒントを持ってくるのであればいいんですけどね。
村井うんうん、分かる分かる。奇抜な格好しても、そういう格好をしたバンドが近くにいるんですよね。その元ネタがどこから持ってきてるかがバレちゃうようなね。
桜井ん〜。それは辛いね〜。
村井そう。まぁ、バンドが好きだからこそバンドをやってるんでしょうけど、持って来るネタが近過ぎる。でも、2人はそこからじゃないですからね。もうちょっとカルチャーな方面というか。文化的な人達ですからね、秀仁くんも青さんも。そこが大きな違いだと思いますね。やっぱりバックボーンだと思いますよ。
──うん。ただの真似事になっちゃうんですよね。
桜井ん〜、残念だよね。でもさ、大したことじゃないと思うんですよ。例えば、一週間にファッション誌を1冊くらい読むとかして。そうそう、『VOGUE JAPAN』とかのアプリでもダウンロードしとけばいいんですよ。それでチェックして、一ヶ月に3冊くらい本を読んで、漫画を一ヶ月に100冊くらい読んでいれば、そんなことくらい自然と滲み出てくると思いますよ。自分なんかはそれが娯楽でもあるからね。無理にやってるわけじゃないし。漫画を読むこと、本を読むこと、音楽聴くこと以外、何も必要ないくらいだから。旅行とかにも興味がないからね。若い人達って、他に興味ないのかな?って思っちゃう。バンドって、音楽だけじゃなくて、ちゃんとそういうのが無いとダメだと思うのよね。打ち上げ花火みたいに、せっかく上がったのに、それだけで終ってしまう。1回あがったらせっかくブレイクしそうだったのに終ってしまうって、すごくもったいないなって。
──そうですね。でも、やはりそこにキャリアとか重みも出てきますからね。『13』のときのインタビューでもおっしゃってましたもんね、“この歳じゃないと弾けないギター” “この歳じゃないと弾けないベース”って。
村井そうですよ、本当にそう。
──歌詞も同じく、cali≠gariとして年数を重ねてきた上での変化は感じますか?
石井そうですね、感じますね。そこまで意識せずに書いてるんですけど、自然と変化してると思います。昔は極めて不自然だったから。
──昔は“cali≠gariの歌詞を書こう”と思っていたから?
石井そう。書こうと思っていたというか、それこそ奇をてらっていたってことですかね。そういうものがあったんじゃないかなと思いますね。普通の言葉を使っちゃいけないとか。“cali≠gariっぽい歌詞”というのは、青さんが書いていたんで。俺が入る前のcali≠gariも、青さんが曲も歌詞もほとんど書いていて、ボーカルの人がちょこちょこと歌詞を書いていた感じのスタイルで出来上がっていたから、俺は破綻したものとかを敢えて作ろうという縛りで作っていたから。でも、そんなのも長くは続かないんで、しんどくなってきたところで、今日から辞めようというところではなく、自然と変わってきたって感じでしたね。
──なるほど。18年築き上げてきた秀仁くんのcali≠gariとしての歴史の中でのキャリアと重みなっていったってことですよね。
石井そうだと思いますね。それが青さんの言うところの説得力っていうやつなんでしょうね。ここ数年はcali≠gariでもそうだし、cali≠gari以外のところでも青さんがやってることと、自分がやってることが、言葉の部分とかチョイスしてくるものとかが、結構被ってることもあって(笑)。まぁ、どっちも被っても特に気にせずそのままという(笑)。まぁいっかみたいな。どっちも引かない、みたいな(笑)。