9月でデビュー7年を迎えたAimerから届いた15作目のニューシングルは、1曲1曲に魂こめて作り上げたトリプルAサイド。映画『累-かさね-』主題歌になった「Black Bird」を筆頭に、「Tiny Dancers」「思い出は奇麗で」と、まるで異なるタイプの楽曲を揃え、Aimerの世界の豊かな広がりを味わえる充実の1作だ。このシングル制作のエピソード、そして10月からはじまるホールツアー「18/19“soleil et pluie”」について、Aimerがメール・インタビューに答えてくれた。
──新曲「Black Bird」は、映画『累-かさね-』主題歌。Aimerさんにとって、タイアップソングを作る時には、まず何を考えますか?そして今回、制作に臨んだ時の気持ちは?
その作品へのリスペクトを込めて、何を描いているのか、そしてそれと絡めて自分が歌いたいことは何かを、シンプルに考えるようにしています。初めての実写映画の主題歌だったので、とてもどきどきしていましたが、いただいた台本と、原作の漫画を読み込んで、今回もいつも通りその作業をおこない、じっくり制作しました。自分が共感できるポイントがたくさんある作品だったので、感情を持って行きやすかったです。
──映画サイドから、何かリクエストはありましたか?どんなふうに、曲作りを進めていきましたか?
映画サイドからいただいたリクエストは主に曲調についてで、爽やかさや甘さは不要、ということ、それでいてメジャー感のある、強いサビがあること、などでした。それに合わせて何曲か用意し、プリプロをしていきました。歌詞においては、ひとつにはこの作品が深く切り込んでいる、他者との比較の中で生まれる「劣等感」に焦点を当てました。そして、いびつな手段ではあるけれど、自分の夢を叶えようとしている累とニナの姿に自分を重ねて、今感じている自分自身の、夢を叶えた先の不安・焦燥感、それでも先に進みたいと思う気持ちも込めました。
──流麗な弦楽器、ピアノ、電子音、陰影の濃いバンドサウンド、コーラス、とてもドラマチックな曲。サウンドで表現したかったこと、歌で表現したかったことは?
「累」の、不穏でミステリアスな雰囲気をまとった、そして、「大人の女性」をも感じさせるような艶感のある、重たくそれでいて野暮ったくない、クールな印象に仕上げました。歌に関しては、言葉数が多い曲なのですが、それでも言葉がしっかり伝わるように意識しました。幼い声で歌っては、極端に言えばただの弱音のように聞こえてしまう歌詞でもあるので、強くエモーショナルに、あまり理屈で考えすぎずに歌いました。
──タイトル、そして歌詞に出てくる“Black Bird”が意味するもの。そこに込めた思いとは?
“Black Bird”は、誰の心にも住む、誰かを羨む気持ち、そして愛されたいと願う気持ちです。「愛されるような誰かになりたかった」--それはきっと誰しもが、人生の中で一度は抱く気持ちだと思います。愛されたくて、誰かを羨んで、必死に生きている黒い鳥。そんな累、あるいはニナのような黒い鳥を、誰もが心に住まわせているはずと思いながら書きました。
──映画についてもひとこと。Aimerさんの思う、この映画の見所は?
見所はやっぱり、主演のお二人です。土屋太鳳さん、芳根京子さん。「口紅で顔が入れ替わる」という唯一無二の設定も相俟って、累はニナになりニナは累になる。一人二役を主演の2人それぞれが熱演する、特異な作品です。その熱演には圧倒されました。
──2曲目「Tiny Dancers」は、キラキラと音がきらめく、明るいダンスチューン。どんな風に作っていった曲ですか。
この曲はもともと、ソニーの作曲コンクールで入賞した一曲です。アップテンポなナンバーを増やそうという思いもあって、プロデューサーとも話し合って、この曲をわたしが歌わせていただくことになりました。元々は、バンドらしいオルタナなアレンジだったのですが、がらっと変えて、エレクトロ色の強い、ダンサブルなアレンジにさせてもらいました。ライブでみなさんと踊れるような曲になったらいいなという思いからです。歌詞も、元々当てられていた歌詞を生かしながら、すこしずつ変えて、自分らしい曲にさせてもらいました。
──「Tiny Dancers」の歌詞のテーマは?気に入っている一行などありますか?
「Tiny Dancers」という言葉は、元の歌詞にはなかったものです。この曲を聴く誰もがいつかはきっと「幼い冒険者たち」であっただろうという思いを込めて、そして、ライブできっと一緒に飛び跳ねてくれるだろうみなさんに向けて「愛しいダンサーたち」という意味も込めて、歌詞に入れ、タイトルにしました。サビの最後は元々、「与えられる困難が変わることはない」という悲しさを帯びた歌詞でした。思い切って、「与えられた困難が笑えるようになるさ」としました。誰かを勇気付けられる曲にしたかったからです。これは、願いでもあります。結果的に、ライブで歌っていていちばん心がこもる箇所になりました。