企画が来た時、なんだ! これは? って、驚きましたね。セリフがひと言もない。よくドラマにしましたよね。あれは普通はドラマにする話じゃない。でもああいうおかしな作品を作ろうと思う人がいてくれて、良かったなと思いました(笑)。喉を休めようと思っていた時期だったので、ぴったりと言えば、ぴったりの役どころでしたし。ただし、セリフはないんだけど、小笠原流礼法(※室町時代に小笠原長秀によって完成された武家の立ち振る舞いなどの礼法で、江戸時代に全国に広まった)を学ぶ必要があったんですが、これが大変で、流鏑馬と小笠原流礼法を2か月で成立させるにはどうしたらいいだろうってことばかり考える日々でした。普段は木馬に乗って練習するんですが、流鏑馬はどこにも座ってなくて、かかとが馬の腹の横にさわるだけで浮いている状態を維持しなければならない。相撲で言う四股を踏んだ状態を何分も継続しないと成り立たない。毎日スクワットを数百回するところから始まる。これはえらい世界に足を踏み入れてしまったなって(笑)。
やりすぎないように気を付けなきゃいけなかったですね。撮影の合間に小笠原流礼法の稽古があるんじゃなくて、稽古の合間に撮影があるという捉え方ですよね。だから余計な欲がでなかったんじゃないですかね。すり足だけで何十時間やったことか(笑)。浅田次郎さんの原作もいいんですよ。ご本人もおっしゃってましたけど、戦わずして、伝えようとするわけですから、反戦小説ですよね。今の時代にこういう作品を作る意義があると思います。
史実に基づいた作品で、学校の社会の授業の教材に出来るようないいお話なんですよ。こういう作品に参加出来るのは意義深いな、ありがたいなと思いました。映画で僕が演じさせていいただく役のもとになった方(日立鉱山の創業者がモデル)は本当に民のことを思っていて、「理想なくて、なんの事業か」「汚れた手で稼ぐようなことをしない」という誇り高き人なんですよ。こんなことをやっていた人たちがいたんだ、こういうことがあったんだということを伝えていく意味でも意義がありますよね。
まだ撮影に入っていないので、どうなるかわからないんですが、あの現場に行って、あのスーツを着た時に、何か蘇るものがあるんじゃないですか。
いや、あるみたいですよ。出た!って感じ(笑)。
楽曲制作やライブの準備はドラマと映画の撮影が終わってからですね。ただ、役者としての活動は音楽活動にも確実にプラスになるんですよ。『黒書院の六兵衛』をやることで、小笠原流礼法という考えもしない角度から追求していかなければならないものに出会えたのもいい経験でしたし。
知らないものに出会うのは単純におもしろいですし、必死になりますからね。結果的に実になることも多くなるんじゃないかと思います。
喉を休ませるために、しばらく歌っていない日々が続いてますが、その分だけで、武道館では声の艶も出るだろうし、メンバーも新たなエネルギーを出してくれるだろうし、おもしろいステージになると思いますよ。35周年となる来年は音楽の年ですね。
PRESENT
ティッシュケースを3名様に!
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