音楽やバンドへの興味と興奮が途切れたことがないまま、いままで生きてきている
──制作するうえでライブのことを考えることはありますか?
前作『LOVE』までは「こういう曲を作ったら、お客さんが楽しんでくれるかな……」とか考えながら作ってたんですけど、今回の『BI』はまったく考えませんでした。ギターロックやメロコアのバンドのアルバムは、アップテンポで言葉が詰まっていて、ライブでやったら絶対に盛り上がるだろうなと思う曲が1曲目に入っていることが多いと思うんです。でも……もうFINLANDSはそういうことをする必要はないかなって。どんなにお客さんが棒立ちで観てようが、ぽかんとしてようが、自分たちが「いい曲だな」と思う曲を入れたかった。それは自分の納得にもつながるし、作品の説得力にもつながると思うんですよね。『LOVE』を作ったときに「そんなにギチギチに考えなくてもいいのかもな」と思ったし、FINLANDSのポジションがある程度定まってきたから、とりあえずいろんなことをやってみようと思った。ライブのことを考えて作っているアルバムではないけれど、強い想い、深い想いのもと作っている曲が多いので、ライブでないと見せられないものが確実にあると思います。
──そうですね。ちなみに塩入さんがライブで気持ち良さを感じるのはどういう瞬間でしょうか。
音を出した瞬間ですね。わたしたちはSEや入場という行為がないので、暗くなった会場で一発目の音をバン!と出した瞬間に、FINLANDSが始まった!と思うんです。その感覚はどんなライブでも毎回楽しい。初めてエレキギターを部室のアンプで鳴らした時のような、「わっ、こんなにでっかい音出るんだ!」みたいな気持ちになるんです。ライブのたびにそういう気持ちが沸き上がっています。
──いまも10代のときの衝動が塩入さんのなかに色あせずに生きていると。
本当にそうです。小学校と中学校が規則がすごく厳しくて、いじめも多かったんです。わたしはいじめられてもいじめてもいなかったけど、友達もいないわけじゃないけどいるわけでもなくて。学校の先生のことも好きじゃなかったからとにかく学校が好きじゃなくて、母親にも毎日文句を言っていたんです。そしたら母親に「自分の好きなことを見つけてみれば?学校の休みの日だけでもそういうことを頑張ってみればいいじゃない。そのためにも自分のやりたいこと、好きなことを見つけたほうがいいと思うよ」と言われて――そんなときに出会ったのがバンドだったんです。
──バンドに出会うまでに、そんな背景があったんですね。
その時の感覚が忘れられないまま、音楽やバンドへの興味と興奮が途切れたことがないまま、いままで生きてきているんです。だから初期衝動を忘れることなく、そのままいまも持っていられるのかなと思っていますね。
真面目にやる、真剣にやることがいちばん大事
──『BI』の楽曲はライブで披露してみてどんな手ごたえがありますか?
毎年夏にリリースをしているので、ああ、今年が始まったな!という感覚です(笑)。やっぱり新しい楽曲を放出すると「わたしはこう思っているけれど、聴いた人はどう思うんだろう?」とわくわくする。バンドをやっていて良かったなと思う瞬間のひとつですね。でもなによりいちばん大事にしているのは一切合切すべてを真剣にやることで。慣れてくると6~7割の力でできちゃったりするじゃないですか。
──そうですね。
でもそれほどやる意味がないことってないなと思っていて。わたしは一つひとつの事柄を120%くらいの真剣さでやる人たちがかっこいいと思うし、大切だと思う。日々の生活でおざなりにしてしまったことはあるけれど、バンドくらいは一つひとつを真剣にやりたいし、真剣じゃないことをすることはあってはならない。だから真面目にやる、真剣にやることがいちばん大事だと思っています。
──『BI』のリリースツアーが9月の頭から始まります。約1ヶ月半で対バン6公演、ワンマン5公演の計11公演を回ります。
ツアーに出るときは夜中に機材車で出発することがあるんですけど、夜中に好きな音楽を聴いたり喋ったりしながら高速道路を走ることや、パーキングエリアに寄ることとか――きっとこの生活は一生続かないと思う。だからこそ移動中の車内がすごく楽しいです。対バンは全部自分たちで誘っていて、わたしが普段の生活で好きで聴いているバンドばかりなんです。対バンではジャンルが違ってもかっこいいと思うバンドに出てもらって、ワンマンは自分たちのやりたい放題にできるので、それぞれで素晴らしい日が作れると思っています。たくさんお客さんに来てもらえたらなと思います。ここが最終目標ではないので。
──最終目標というと?
わたしはFINLANDSでもソロでも音楽を作ることで自分の人生を動かしていきたいし、ずっと音楽をやって生きていたい。惰性ではなく、その時のベストを出せる人間であるためにも、体力や気力、知識を蓄えておくこと、停止すること、判断力などが必要だと思っています。バンドとしても人としてもきちんとした年齢の重ね方をしたいんですよね。
──そうやって未来のことを考えられるのは、いまの活動環境がすごくいいからでしょうね。
サポートメンバーも自分が尊敬している人にお願いしているのもあって、彼らから出てくる意見はすごく納得ができるし、彼らもFINLANDSがいい方向に進むために力を尽くしてくれているんです。4人で話し合って曲のコンセプトが決まっていく――好きな音楽家の人たちとものづくりができるいまの体制はものすごく楽しいし、この曲をこの4人でライブで鳴らせることは、わたしにとってひとつ“完成した”と思えることでもあるんです。これは音楽を続けていくうえでの大きなモチベーションになっていますね。
PRESENT
サイン入り「BI」ポスターを3名様に!
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