ギターに気負いがなくなり、もうちょっと歌がうまくなりたいと思うように
──自分が歌う、歌えると思う音楽のタイプも広がってるんじゃないですか。
そのあたりはあまり考えたことがなかったんですけど…、でも歌ということで言えば、昔よりも歌うことが好きなってる気はしますね。昔はギターのほうが好きで、“ついでに歌も歌ってる”くらいの感じだったんですけど、だんだん歌が好きになってきて、ここ10年くらいはもうちょっとうまくなりたいなと思うようになってきました。いまツアーをまわってますけど、そのなかで自分なりに実験みたいなこともいろいろやってて、前は“俺のこのアコギのノリにみんな合わせろ”と思ってやってたのが、“俺の気持ちはちょっとおいといて、俺がみんなに合わせてみよう”と思ってやってみたら、そっちのほうが全然良かったりしたんです(笑)。だから、“俺が”っていうような、変な気負いがギターに関してなくなってきたというか、このツアーでは特にそういう感じがあるんですよね。ギタリストとしてのエゴがなくなってきたというか。それが、俺にとっていいことなのか良くないのかいまはまだわからないですけど、でもとりあえずそうしたほうがいまのバンドは転がっていいなっていう。で、ギターに関してそういうふうになってくると、その分ボーカルに集中できる。昔は“ここのギターが難しいんだよ”と思いながら歌ってたりして、歌よりもギターに気持ちが向いてることがあったんですけど、ここ10年くらいは歌のほうがはっきりと比重が高くなってますね。
──その理由を探ると、何か思い当たることはありますか。
自分の周りなら友達の奥田民生や田島貴男、吉井(和哉)くんもそうだし、先輩でも清志郎さんとか、やっぱりみんな歌がうまいなと思って。それは昔からそうで、ボブ・ディランも歌はうまいし、ジョン・レノンもポール・マッカートニーもそうですよね。当たり前のことなんだけど、ピッチもいいし。わりと長い間、俺はそういう細かいことはいいやと思ってたんですけど、でも40歳を過ぎたあたりから、そういうことももうちょっとちゃんとしたほうがいいなと思うようになってきたんですよ。
──それは、歌の伝わり具合とかその曲の寿命みたいなことに歌のテクニカルな要素が大きく関わっていると思うようになったということでしょうか。
テクニカルな部分というか…、多分ポールにしてもジョンにしても、ディランも清志郎さんも歌の練習を特別しっかりやったなんてことはないだろうし、歌ったらいきなりそういうふうに歌えちゃったという人だと思うんです。だから、元々歌がうまかった人が曲も作れてギターも弾けて、というふうに最初からすべてを兼ね備えていたはずなんですよ。決して、ボーカル・スクールに通って発声練習を重ねてああなった、という人たちではないですよね。俺も、歌ったら歌えちゃったという側ではありますけど、でもあるときにまだまだだなと思っちゃったんですよ。いまだに憧れてるのは、美空ひばりさんとかちあきなおみさん。レコーディングでスタジオに入って1回歌っただけでいい歌がばっちり録れてしまうみたいで、俺はなかなかそういうわけにはいかないですから。それは結局、音程がいいとか歌がうまいということとは別に、一発入魂というか、レコーディングの現場で歌に入り込む力というか、魂ののせ方というか、そういうことも含めたレベルのところに到達したいなと思ってるんですよね。
──現在進行中のツアー“Toys Blood Music”に関しては、ギタリストとしてのエゴがなくなってきた感じが特に強いという話がありましたが、ツアー全体の手応えはいかがですか。
今日の時点でちょうど折り返しくらいなんですけど、バンドはすごくいい感じになってるし、その上で毎回「こうしよう、ああしよう」という実験もやってるし、入り方とかアレンジがけっこう変わった曲もあります。俺が、毎回同じ感じになっちゃうのが嫌なんで、なにかしら、ちょっと角度を変えてこう始まったらどうなんだろう?みたいなことをやったり、曲順をちょっと入れ替えたり。ライブが終わった後、演奏ができるお店に行って即興で何か演って遊んだりもしてるし。そっちのほうが長くやってることもあるくらいで(笑)。とりあえず一度ご覧になった方も、また見たら違う楽しみを感じてもらえるようになってると思います。
今回は幅広く選曲して、それをベースにお祭りを盛り上げようという感じかな
──そのツアーが7月いっぱいで終わると、8月末から25周年ツアー「KAZUYOSHI SAITO 25th Anniversary Live 1993-2018 25<26 ~これからもヨロチクビーチク~」が始まります。アニバーサリー・ツアーならではの特別な演出や企画は?
どうなんですかね?お祭りだとは思うので…。普段はアルバムのお披露目ツアーということが多いですから、こういうタイミングでないと古い曲をやる機会がなかなかみつけられなかったりするし。だから、今回は幅広く選曲して、それをベースにお祭りを盛り上げようという感じかなと思ってます。
──さらに、札幌公演はツアーのアフターパーティーのような位置付けで、ちょっと趣向を変えたステージになるそうですね。
当初北海道が入ってなかったんですけど、全国に行くのに北海道が入ってないのもナンだよなと思い、とは言えメンバーも忙しい人たちなのでスケジュールが合わなかったこともあり、これまでずっとやってもらってたドラムの玉田豊夢くんとベースの隅ちゃん(隅倉弘至)と俺のトリオ編成でやることにしました。『35STONES』とか『青春ブルース』の頃まではわりとトリオでやることが多かったんですけど、トリオ編成というのはスリリングですごく面白いんですよね。セット・リストもトリオならではの選曲になるかもしれないし、俺自身も楽しみにしてます。
──25年に一度のことなので、例えば宙づりになったりはしないですか。
ああ、宙づりは怖いから嫌ですね(笑)。そういうことでいうと、矢沢永吉さんのようにハーレーで登場するとか…、そういうお祭りっぽい要素も何かあってもいいんでしょうけど…。でも、普通にやると思いますよ(笑)。
──(笑)。いまのツアーが終わったら、じっくり考える、ということで。
それだと間に合わないみたいなので…。一応、言われてる締め切りまであと3日しかないんですけど(苦笑)。
──だったら、宙づりで(笑)。
(笑)、それよりはおねえさんのダンサーがいいかな。それは大いにモチベーションが上がりますね。それが決まれば、曲順もすぐ決まると思います(笑)。
PRESENT
【直筆サイン入り】25周年ツアーポスターを3名様に!
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