──むしろ“なんでわからないんだ”ぐらい?
というよりは、説教くさくなるのが嫌だったし、そこは自分が提示するものを理解してくれればいいと思っていたんですよね。音源であったり、パフォーマンスやリズムのとり方であったり。ライブの曲順もそうですよね。なぜ同じようなテンポの曲を続けてやっているのかとか。そういうことを汲み取ってほしかったんですけど、いやあ、もう全然伝わらない!(笑)
──難しかったと。
そうこうしているうちに僕も歳をとり、音楽シーンを19年見てきた客観視というものが生まれてきて。やっぱり今のジャパニーズロックシーンは跳ねてないだろと。もちろん僕にも好きな日本のアーティストやバンドがいますし、ロックンロールが海外から入ってきたものだとしても、日本人だってこれだけできるんだっていうことを証明している人たちもたくさんいるわけじゃないですか。おこがましいかもしれないけど、自分も音楽をやってきた道のりが19年あるし、こういうことをちゃんと伝えるべきときがきたんじゃないのかなって。“音楽ってもっと楽しいんだぜ”“ロックンロールってもっと踊れるんだぜ”っていうことを、少なからず自分のファンには伝えたいんですよね。
──あと、最近はライブで新曲をいち早く披露されていて、「今宵MOVE ON」と「Baby Crazy Love」という2曲を聴かせていただいたんですが、どちらもそれこそ踊れるものになっていますよね。「今宵MOVE ON」はベースラインがもろにディスコですし、「Baby Crazy Love」は、デジタルサウンドではあるんだけど、ブラックミュージック的な土臭さがある。今年の10月からデビュー20周年という大きなタイミングを迎えるわけですが、今ライブで披露している曲がそこへ目掛けていくうえでの大きな軸になっていくんでしょうか。
ここ数年の流れとして、ダンスビートや16ビートにこだわったもの、かつデジタルチックというか、打ち込みを重視したものにしていたんですよね。
──昨年リリースされた「我が子に捧げるPUNK SONG」は、まさにそういう曲でしたよね。
そうです。そういう流れできてはいるんですが、たとえばこの曲達をアルバムという形でリリースしたとして、そのツアーをやった先にどうなるかはまだちょっとわからないです。デジタルサウンドをもう一段階あげたものにするのか、はたまた全然変えるのかは、そのときのテンションに委ねようかなと。でも、今の自分としては、今回のようなツアーをやるぐらいですから、そういったデジタルチックなものでありながらソウルフルであり、どこかブラックテイストがあって、ダンスチューンであるというものがきているのかなと。
──今やりたいものはまさにこれだと。今日のお話を聞いていて、個人的にものすごく同感といいますか。音楽は自由に楽しむものだとは思いつつも、ライブを観ていて1拍目と3拍目でリズムをとる人が多いことに違和感はあったんですよね。そこは、それこそ土着的な問題だと思っていましたし、そもそも2拍目と4拍目でリズムをとることを知らない人もいるでしょうし。
あとは、リズムが跳ねているのか、いないのかっていうのがわからない人もたぶんいると思いますしね。でも、わかりやすいからという理由で、日本人にあった曲だけをリリースしていくというのは、僕は違うと思うんですよ。やっぱり壊していくことがパンクであり、自分がやりたいと思うことを貫き通すことがロックであり、それを共感していくことでロールしていくと思うんですよね。だから諦めちゃいけないんだけど、ただ、僕は説教をしたいわけではないんです。もっと楽しいことがあるのに、それを味わわないまま死んでいくのはもったいないんじゃない?っていう感じ。たとえばですけど、刺身にわさびをつけるとうまいけど、わさびを知らずに死んでいく人生って僕は最悪だと思うんですよ。
──味気ないですよね。
そうですよね?僕からすると、わさびが16ビートなんですよ。これをつけたら、こんなにも香りが違うんだっていうことを知って、“ああ、刺身っておいしいんだね”っていう。これってもう全然意味が違うじゃないですか。
──知ると知らないとでは大違いっていう。
それぐらい日本人のエイトタッチがやべえなって思ってるんです。このままだと日本の音楽がどうなっていくか……ということを、正直考えない手もあると思うんですよ。でも、今以上にオーディエンスと盛り上がるために、もう一歩先に行きたい。そのための今回のツアーです。それに、グルーヴだったりスウィングだったり、ロックで踊ることやその楽しみ方を知ることで、ジャパニーズロックシーンはまだもうちょっと先があるんじゃないか、可能性があるんじゃないのかなって思ってます。
PRESENT
サイン入りポスター&オリジナルピックを1名様に!
※転載禁止
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